いま、白と黒を着る
Saint Laurent、AMI Alexandre Mattiussi、
RED Valentinoが、無彩色で個性を彩る

モノトーンカラー、アメリカントラッド、白いソックス。これらファッションの歴史を紡いできたファクターには敬意を抱かずにいられない。だが、モードに毒された私は欲してしまう。ファッションの正道を外れず、それでいて、正道とは趣を異にするものを。最先端に懐古的なスタイルが現れる。そんな現象に快感を覚え、笑みがこぼれる。長い歳月、変化がほとんどないのに今を映し出すデザインと、そこにある微細な変化を味わうことで得られる恍惚。そんな心を捉えた6つの「白と黒」を、ここに紹介したい。

画像のアイテム:スニーカー(adidas Originals)
ファッションとは流行であり、変わることだ。だが、スーパースターの白いアッパーと黒いスリーラインが織りなすコントラストは、1969年の誕生以来、ほとんど変わっていない。ファッションの中で、50年以上の時を経てなお、人々に愛されつづける。変化を拒むほどのデザインとしての強度と、熟成の味わいで、時代の変化を生き延びるもの。それがクラシックだ。

画像のアイテム:フラワーベース(Sheyn)
ドーナツ状のリングを重ねたような不思議なフォルム。花々を飾るにはいささか地味な白と黒の2色構成。人々の目を堪能させる色彩の喜びは、花がもたらしてくれる。主役は花だ。自分が殊更に主張する必要があるだろうかと、この花瓶は静かに主張する。ブランド名のシェインは、イディッシュ語で「美しい」という意味を持つ。シンプルなモノトーンカラーが、リビングに彩を添える。

画像のアイテム:ジャケット(Saint Laurent)
アメリカントラッドを代表するアワードジャケットは、大文字のアルファベットワッペンを左胸に取り付け、身頃と袖を鮮やかな色で切り替えるのが特徴だ。サンローランは、この王道アイテムから特徴を抜き取り、メタ化を図る。オフホワイトとブラックを色に据えてビビッドカラーを断ち切り、象徴的な左胸のワッペンも排除した。こうして、定番のジャケットは自身の個性を捨て、アメリカントラッドのイデアを露わにするアイテムへと昇華した。

画像のアイテム:ネックレス(AMI Alexandre Mattiussi)
白と黒のリングが繋がるだけの、あまりにシンプルな形と色のネックレスに物足りなさを感じるかもしれない。とりわけ、大胆な醜さが新たなエレガンスとなった今ならば。だが、一度アミ アレクサンドル マテュッシのネックレスを首にかけ、鏡を見ればあなたは知るだろう。首元は凛々しく引き締められ、大ぶりで無骨な鎖が逞しさを生み、白と黒の連続が逞しさを誇らしくすることを。簡素簡潔な造形と色が、人間を力強く美しくする。

画像のアイテム:ソックス(VETEMENTS)
ストリートで世界のファッションを瞬く間に更新した異端者と、靴底に釘を打ちつけたシューズで、スパイクの概念を確立した先端者が、白いソックスに付き纏う幼さの残像を拭い去る。白地に黒いフォントだけを用いて、シンプルにシンプルを重ねたデザインは、硬質なグラフィックを見せる紙面のようだ。ソックスは、白でいいのだ。

画像のアイテム:ドレス(RED Valentino)
ジェンダーレスが浸透した今、ダンディズムやフェミニンを強調することは時代遅れだろうか。レッド ヴァレンティノのショートドレスは、お嬢様がシックに装うエレガンスの幻想を蘇らせた。襟先が丸みを帯びたラウンドカラー、結ばれたリボンが可憐なボウタイ、スリムシルエットとショートレングスは若さを、黒と白の2色は成熟を表す。この時代だからこそ過激に見えるスタイルがある。
新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している
- 文: Shigeaki Arai
- Date: February 2, 2022

