日常に浸り、
日常を超える

Ottolinger、The Elder Statesman、Ksubiが普遍を更新する

    普段の生活では、慣れ親しんだ感覚を超えた新しさに躊躇することがある。「このままでいい」と思うことは不思議ではない。だがファッションは、ただ身につけるというシンプルな行動で、人間に新しい世界と感覚を教えてくれる。ここに登場する6つのアイテムは、挑戦心に富み、しかしその挑戦心をベーシックな形で表現するという創造性を見せてくれる。アヴァンギャルドだけが創造性の専売特許ではない。ベーシックであっても、高揚するアイテムは生み出される。日常に浸りながら、日常を超えていくことは可能なのだ。

    モデル着用アイテム:フーディ(Ottolinger)

    普段着のフーディを、Ottolingerは色の表現で特別なものにする。染めにムラのあるブラウンと均一なイエローのカラー コンビネーションは、土中に埋められていた衣服の経年変化を観察してきたような実験精神にあふれている。デイリーに着られるシンプルなデザインでスペシャルな存在感を。そんなアイテムを望むなら、この1着に覆われよう。

    モデル着用アイテム:シャツ(Noon Goons)

    両胸のダブル フラップポケットと、掠れた黒と白のラインが交差するチェック生地で仕立てられたフランネル シャツは、王道のカジュアル シャツに見える。だが、このシャツが身体の上で形作るボクシー シルエットは、過剰な表現を削ぎ落とした端正さで、知性さえ匂わせている。エレガンスとは、抑制された主張に現れるムードなのだとNoon Goonsは教えてくれる。

    モデル着用アイテム:ブーツ(Bottega Veneta)

    トゥから滑らかなラインを描き、甲から踝、足首を包みながら上へと立ち上がっていくフォルム。その漆黒の美しさにさらなる深みを加える艶やかなカーフ スキン。厚く高いラバー ソールはこのブーツを履く者の視線を高くする。Bottega Venetaは足元を硬質に美しく装うことで、一番低い場所からあなたの世界を高く広く見せていく。

    モデル着用アイテム:セーター(The Elder Statesman)

    The Elder StatesmanとSSENSEは共犯者だ。何が共犯者かって? 服の美しさを問いかける関係性においてだ。セーターの中心から鈍く燻み澱みながら上半身に広がっていく色彩の回転は、美が怪しさの中にもあることを教える。そしてカシミアのタッチは、怪しい美をソフトに肌へと伝える。回転の向こう側に待っているもの、それは新感覚の美意識である。

    モデル着用アイテム:ジーンズ(Ksubi)

    褪せたブルー デニム、垂れ下がる白い糸、肌が覗く水平のカット。このボトムがジーンズであることは疑いようがない。しかし、腰回りにフィットして足元へと流れるストレート シルエットは淀みなく美しく、まるでクラシカルなパンツである。Ksubiは惑わす。このボトムはカジュアルなのか、ドレッシーなのか。だが、迷う必要はない。穿きたいと思った瞬間、その時に穿くことがこのジーンズを最も輝かせる。

    モデル着用アイテム:ネックレス(Santangelo)

    黒のビーズとパールのペンダントで首元をコンパクトに飾るSantangeloのネックレスにはロックな精神と空気が迫る一方で、細かく繋がれたビーズや整っていない形状のパールは、子供のころに手作りで作ったアクセサリーの記憶と時間も呼び起こす。首にかける、ただそれだけでファッションは人間の感情と記憶を目覚めさせることもできるのだ。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: August 4, 2021