ハード ポップ!
スンジュン・ヤンの弾けない風船椅子
- 文: Elaine YJ Lee
- 画像/写真提供: Seungjin Yang

韓国アーティストのスンジュン・ヤン(Seungjin Yang)が風船で作ったものを、子供の誕生パーティで見られると期待してはいけない。ヤンの手に掛かると、浮いたり跳ねたりする風船が、硬くて絶対に弾けない椅子や照明、ソファやスツールに変わる。風船の表面に、手で慎重にエポキシ樹脂を塗布してあるのだ。ぶら下げて乾かしてコーティングを8回繰り返すと、風船はとても硬く固まる。「時には、繰り返しだけの作業で、考えるのを止める必要があるんだ。気晴らしだよ」。ぷくぷくと膨らんだ陽気な作品に囲まれて、ヤンは言う。
2019年の春、ニューヨークのギャラリーThe Future Perfectがヤンの一連の作品をロサンゼルスで展示すると、熱烈なファンが生まれた。以来、彼の風船家具は『Architectural Digest』誌の写真に数えきれないほど登場し、世界でもっとも美しい建築に鮮やかな色と遊びの感覚を付加している。今春ロサンゼルスのフェアファックス アベニューにオープンしたMarc Jacobsのブティック「Heaven」では、ポップなインテリアとヤンの椅子が良く似合う。今がアートなチェアの時代なら、ヤンはその旗手だ。
ヤンは、韓国の洪川郡、ソウルの西にある小さな地方都市で育った。「普通の子供で、自分の手を動かして物を作るのが好きだったな。プラモデルを組み立てたり、紙飛行機を作ったり。ただ紙を折るだけの簡単な飛行機じゃなくて、ものすごく凝ったやつね」。長じて歴史を誇る名門校のひとつ、弘益大学校を卒業した後は、アーティストのアシスタントからインテリア デザイン、肉屋の看板作りまで、雑多な仕事をやり、2013年に樹脂を使った作品に行き着いた。

きっかけは、あるアーティストのアシスタントをしていたとき、アーティストが使っていた樹脂を使って実験をしてみたことだ。「何の気なしに始まったんだ。ある日風船にエポキシを塗ってみたら、すごくいい感じでさ」。最初は照明器具だけを作ったが、そのうち、風船には思いがけず耐久力があることを理解し始めた。「平べったいエポキシは割れやすいけど、丸い形にするとかなり耐久性がある」のだそうだ。
「今やってることはオモチャを組み立てるよりは難しいかもしれないけど、子供の頃にやってたことと重なる部分がたくさんあると思う」。そう語るヤンの静かな低い声は、虹の七色が溢れるスタジオの賑やかさとは、著しく対照的だ。「風船を膨らませてると、遊んでる子供みたいな気がすることがあるよ」
気ままな創作に見える作品は、だが実のところ、綿密な計算、構造の設計、ミニマリズムな美意識の結晶だ。「構造を支えるのに不要な風船はひとつも使ってない」と、ヤンは説明する。「単に装飾だけが目的のものは好きじゃないから」。現在35歳のアーティストは、子供時代の手遊びからは程遠く、フルタイムで風船家具を作っている。注文は世界中の大人たちから舞い込む。

Elaine YJ Leeはニューヨークとソウルを拠点とするライター、クリエイティブ プロデューサー。『i-D』、『VICE』、『Highsnobiety』、『Apartamento』、『Office Magazine』、『Document Journal』、その他多数に記事を執筆している
- 文: Elaine YJ Lee
- 画像/写真提供: Seungjin Yang
- アートワーク: Sierra Datri
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: August 2, 2021

