A-COLD-WALL*の
饒舌なグラフィックス

創設者でデザイナーの
サミュエル・ロスが
A-COLD-WALL*2021年
秋冬ルックを解説する

  • アートワーク: Gyimah Gariba

アンビアンスとは、場に備わった性格と雰囲気のこと。だが、衣服にもアンビアンスがある。その好例がA-COLD-WALL* 2021年秋冬コレクションだ。クリームやホワイトの色使いで、ゆったりしたプリーツや暖かいウィンタージャケットの多様なルックを展開するコレクションは、楽観のアンビアンスを放散している。マスタードのニットやガンメタルグレーのスニーカーは、いかにも使いやすく快適そうだ。ハンドペイントや抽象のデジタル模様は、レッドやオレンジやブルーで目を引く。どれも、受け身ではなく、鋭敏に環境を意識した衣服だ。A-COLD-WALL*を創設したデザイナーのサミュエル・ロス(Samuel Ross)は、親しみがあると同時に新しい何かが待ち受ける扉へ、私たちを誘う。変化を受け容れるために。人としての成長を促す、開かれた場を見出すために。壮大な提案ではあるが、ロスほど泰然自若として自信に溢れたデザイナーは滅多にいない。そんなロスが2021年秋冬コレクションの特色を示す5点を挙げ、とみに有名な社内での研究開発の一端を明かした。腰を据えて、十分に理解してほしい。

「これまでのシーズンは、キメの細かいキャンバス地に、漆喰コーティング、石灰仕上げ、水彩の質感を表現したが、このデザインは軽量のコンクリート ブロックや粗塗り仕上げのコンセプトだ。ハンドペイントをデジタル化した」

画像のアイテム:T シャツ(A-COLD-WALL*)

「社内のデザイン スタジオではハイパーグラフィックと呼んでいるけど、要するに、密度と彩度と速度を兼ね備えた視覚イメージ。さまざまなアイデアやプロセスを重ねた末に内側から突き破ってきたシグネチャは、直感とエモーションのデザインだ」

「通気性と耐久性は同じくらい重要だが、基本は素材—どのようにして素材にコーティングやメンブレンをほどこすか。通気性に関しては、レーザーカットのアイレットやシャープなカッティングを利用する手法が好きだ。工業生産技術を利用すれば、繊細なディテールが可能になる。ミニマルに見えるスタイルの織物開発と染色に、実際は大変な時間を費やしていることが少なくない。染色の過程で、織物の組成を調整しながら満足のいく鮮明度を実現するのは、とても達成感がある」

「このニットは、静かな動きの霞がかった不透明感を表現している。水彩画に見られる透明感だ。日没時あるいは漠然とした嵐の前に漂う、束の間の静寂…。幾分かは、ロックダウンのパラドックスを反映している。見る人がそれぞれの連想を引き出せるのが、このニットの素晴らしいところだ」

「新たなるもの、浄化、白紙の状態は楽天的だ。式服、神聖、禁欲、平穏に与えられた聖なる座に侵入し、色調とシルエットと素材が美徳になる。快適と礼節の両方を尊ぶ。形式から離れたエレガンスは、工業社会における創造人の日常によく調和する。A-COLD-WALL*を立ち上げてから過去6年間、僕はずっとクリームとホワイトだけを着ている。工業化された世界、工業化されたあらゆる風景の表面のあちこちに、クリームとミッドグレーが見え隠れする。僕たちは、現代の式服あるいはインフォーマルな作業着を多様に表現する。そのためには、色とシルエットと素材が同程度の重要性を持っている」

  • アートワーク: Gyimah Gariba
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: October 20, 2021