笑わない人たち

私は嫌われているのか?
笑いだけが答える疑問の数々

  • 文: Leah Beckmann
  • アートワーク: Aaron Lowell Denton

誰かを笑わせるのは、すごく簡単か絶対無理かのどちらかだ。私の場合、絶対成功する方法があると思っている。まず、パートナーがいる部屋へ行く。彼は皿洗いの最中かもしれないし、ひとりで静かに座り、混沌とした世界の中でひと時の平穏と静寂を味わっているかもしれない。一人っ子あるある。ともかく彼のいるところへ行って「うわぁ、あのお月さま見た?」と言う。彼が顔を上げたら、私はくるりと後ろを向いて、夜空を指し、スカートをまくり上げる。パンツを下ろした私のお尻がお月さまだ。

これなら、誰にでもできる絶対確実な方法のはず。

だけど、ある日、銃を持った男が家に押し入って「オレを笑わせろ。さもないと、あの部屋で静かに座ってるお前のパートナーを殺すぞ」と言ったとする。男じゃなくて、銃を持った女かもしれない。そのうえ、その女がお医者さんだったら? どうすればいい? 笑いに「ねばならない」がベトベトまとわりつくと、事は不吉な様相を呈し始める。

誰かが誰かを笑わせ「ねばならない」理由は何だろう? 多分、その場の緊張をほぐすため。あるいは、コメディの仕事を貰うため。実はこの記事を書くにあたり、私は最初、我こそはと思うコメディアンたちが競い合う『Up And Coming Comedians』の出演者に質問を送り、回答を貰おうと躍起だった。「あなたが絶対に笑わせることができない人は誰ですか?」というのは、コメディアンにとって恐怖の質問だったかもしれない。「あなたにとっていちばん恐ろしい人は誰ですか?」と尋ねたのと、同じことだ。

世界は「楽しく笑う人」と「笑わない人」に分けられる。「笑わない人」グループは、メッセージのスレッドで決して和まず、笑いの発作を抑える大切な薬でもあるかのように笑い顔の絵文字やLOLを貯め込む、悪魔のような存在だ。いつだったか友達と公園にいたとき、ひとりの男性が転んで、見事にズボンの後ろが裂けたのを目撃した。みんなが大笑いした。まるで漫画を実演したような当の本人も笑っていた。私たちから少し離れたところでヨチヨチ歩きの子供の誕生日を祝っていた大家族は、涙まで流していた。誰もがヒステリーみたいに笑い続ける中に、ひとりの女性がいた。ただじっと座って、まったくの無表情で、全然乱れていない。あれには背筋がゾッとした。私の今際の際には彼女の顔が浮かぶだろう。

「笑わない人」は、神が造りたもうた地球上で、もっとも不可解かつ脅威的な創造物だ。笑うことを拒絶されればされるほど、私たちは必死になる。突如、残酷で強力な力関係に嵌り込んでしまうのだ。笑いを出し惜しみしているのが、特別に才能のある人や威圧感のある人であればなおさらのこと、私たちは気に入られたいと願う。そこで靴紐をキリリと結び、タップダンスを踊り始める。可哀想そうな脚を出来る限り速く動かして踊り続ける。ほんのちょっとの薄ら笑いだって構わない。とにかく自分を認めてもらいたくて、死に物狂いだ。汗が滴り落ちる。絶望感ほど臭いものはないから、私たちは悪臭を放つ。

「Up And Coming Comedians」たち、もっと正確には彼らの広報担当者たちの受信トレイで、私は何週間もタップダンスを踊り続けたが、彼らはいちばん笑わない人種であることが判明した。理由は何であれ、コメディアンたちは私の質問に回答できなかったのだ。まったく返信がなかったり、忙しいと断られたりした。私のエネルギーが煩わしくて、関わりたくないコメディアンもいたかもしれない。

誰かをどうしても笑わせる必要があるときは、どうすればいいか? 私にもよくはわからない。ジョークの言い方を勉強することもできるし、Twitterや好きな映画から拝借してもいいかもしれない。この質問はとりもなおさず「あなたが笑わせることができない人は誰ですか?」ということだけど、私の答えは「銃を持った男または女」ではない。では、この記事の当初の構想であったにもかかわらず、残酷非常に私を拒絶した「Up And Coming Comedians」だろうか? いや違う。これ以上はないほど滑稽な出来事にも笑わなかった公園の女性は有力な候補だけど、彼女は人間じゃないと確信してるから、失格。できることなら、そんな答えはどうでもいいと言いたい。スレッドで笑いをケチる人たちはどうせ嫌な奴らなんだから、そもそもメッセージする価値がないと言いたい。あなたの煌めきを受けとるに値する人たちは、愛も、そして笑いも、絶対に出し惜しむことはないと言いたい。誰かを笑わせられないのは、単に、気持ちの問題だと言いたい。人生には、自分のために手に入れる笑いとは別に、自分以外の人のための笑いがあると言いたい。

もしそのとおりなら本当にいいんだけど、お互いよくわかっているように、現実はそう上手くいかない。ああ、そうだ! 「あなたが笑わせることができない人は誰ですか?」という質問への私の答えは、「最高級にヒップなレストランのセクシーなボーイ」だ。結局私に言えるのは、どうしても必要ならいつだって、パンツを下げてお尻を見せる奥の手があるってこと。でもどうかな? 私はコメディアンじゃないから、保証はできない。

Leah Beckmannはロサンゼルス在住のライター

  • 文: Leah Beckmann
  • アートワーク: Aaron Lowell Denton
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: October 18, 2021