新井茂晃の
ポケットへのアフェクトゥス
Lemaire、Maison Margiela、Dries Van Notenが
ジップとフラップで隠すもの
- 文: Shigeaki Arai

ポケットは悩ましいディテールだ。絶対に必要な場合もあれば、ポケットがなくても困らないこともある。トートバッグの内側に内ポケットがなければ、デザインが気に入っても私の購入意欲は衰えるし、コートのフロントポケットが縫い目利用のポケットだとがっかりして、箱ポケットが斜めに取り付けられたコートを探してしまう。AFFECTUSとはラテン語で「感情」を意味する。6つのブランドのポケットを、私ならどう使い、何を思うか。ポケットへのアフェクトゥスをありのままに書こう。

モデル着用アイテム:ジャケット(Lemaire)
シルエットの美しさを保つため、何も入れたくない。そう思わせるポケットがある。このデニムジャケットがまさにそうだ。私が着るなら、胸ポケットのジップは一度も開けずに、ルメールのエレガンスを堪能するだろう。

画像のアイテム:ウォレット (Jil Sander)
キーホルダーは持たず、鍵は硬貨と一緒にウォレットの中に入れて持ち歩くのが私の習慣だ。大切なものを無造作に扱うというより、大事なものは離れ離れにせず、一箇所に保管したい。そんな思いを、ジップで完璧に密閉するジル・サンダーのカーフスキン製財布が満たす。

モデル着用アイテム:ジーンズ(Maison Margiela)
通常のジーンズではスクープポケットに覆われているはずのコインポケットが、形のすべてを晒している。メゾン マルジェラは、このジーンズの主役は小さなポケットだと訴えている。ならばどんなトップスを着ても、裾はタックインしたい。主演を張るディテールを隠してはならない。

画像のアイテム:ポケットノート(Smythson)
高貴な美術品のような佇まいが印象的なスマイソンのブルーノート。アイデアを綴るノートのポケットに、私なら食料品のレシートを入れるだろう。無縁と思えるものを見たとき、発想の芽は咲く。捨てられる紙切れには上質の美しさと同等の価値がある。

モデル着用アイテム:ラウンジ パンツ(Pushbutton)
iMacの前で書くことが思いつかなくなったら、パンツのポケットに手を入れて休む癖がある。こうすることで脳に隙間を作り、アイデアを呼び込む。プッシュボタンのラウンジパンツは、左右の手に完璧な休息をもたらしてくれそうだ。

モデル着用アイテム:シャツ(Dries Van Noten)
常にクラシックな美しさを披露してきたドリス・ヴァン・ノッテンによる、バッグとシャツが一体のプロダクト的デザインという意外性。私がデザイナーにインタビューしたくなるのは、「なぜ?」が心の底から沸き起こるときだ。モードの深淵は、暗ければ暗いほど味わい深い。
新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している
- 文: Shigeaki Arai
- Date: April 25, 2022

