日常を彩るサングラス

夏の光を味方に個性を解き放つ、今季注目のサングラスを紹介

  • 文: Dora Boras

サングラスとは、陽射しを遮るもの。そして時に、他人の攻撃的な視線さえも遮るもの。2025年夏、表情豊かなレンズとフォルムが揃い踏むサングラス旋風が到来。個性を語る一本を探すもよし、コレクションを更新するもよし。顔まわりに新たな表情を宿す、今季の注目モデルを紹介しよう。

憧れの面影

“あの人みたいになりたい”という憧れは、時を経ても色褪せない。たとえば、友人の兄のさりげない色気。あるいは、街の伝説となった高校時代の先輩。その記憶の中で彼らがかけていたような、ヒーローの風格を備えた一本が、いま、目の前にある。Cutler and Grossの「Soaring Eagle」は、シルバーダガーと鷲の装飾が神話的な存在感を放ち、静かに威厳を主張する。Port Tangerの「Sayf」は、滑らかなティアドロップシェイプに深いグリーンを湛え、都会の冷静さと詩的な陰影を宿す。そして、"クラブ上がりの流れ者"というキャラをまといたいのなら、Akilaの「Ascent」は、1960年代のクールネスを現代に再構築した、洒脱なる選択肢となる。

ニュー プレイボーイ

滑らかで、狡猾で、どこか映画のような日常。BMWで夜の都会を涼しくすり抜けるような日々──ホテルのプールで顔を利かせ、脚本を売り込みながら、名前入りのステーキが出てくるレストランで恋人とディナーを楽しむ。そんな“新世代ハリウッド”のムードを漂わせたいなら、アイウェアこそこだわり抜きたい。Akilaの「IO(SSENSE限定モデル)」は、90年代のスポーツカルチャーを彷彿とさせるパープルレンズが光の角度で表情を変える。一方、CHIMIのオレンジコードは、夕陽に染まる街の色を映しながら、ひときわ鮮やかな輪郭を描く。焼けた空気に溶け込みながらも、確かな個性を刻む一本だ。

ハリウッドに乾杯

あの時代のシネマでは、光と影の狭間に反逆が宿っていた。マーティン・スコセッシ、ロバート・アルトマン、デニス・ホッパー、ハンター・S・トンプソン──名を挙げずとも感じ取れる、映像に染みついたカウンターカルチャーの香り。艶やかな鼈甲(べっこう)のフレームが放つ、沈黙の重み。それはスタイルというよりも、ひとつの態度だった。LOEWEの「アヴィエーター スリム」は、誰もが知るパイロット型を、半透明のスモーキーグリーンで洗練し直した現代的なアプローチ。一方、RETROSUPERFUTUREの「アイジポ」は、クリーム、オレンジ、イエロー、そしてグラファイトグレーの濃淡が織りなすマーブル模様が、知的な遊び心と存在感を同時に映し出す。

マリブ ミニマリスト

長細くスリムなシルエットを好むあなたは、型にはまらない感性の持ち主かもしれない。海沿いの静かな場所で、身体表現やエネルギーの流れについて思いを巡らす日々──そんな、感性と知性のあいだを揺れながら生きる人には、意志の強さと繊細さをあわせ持つシェードが似合う。Bottega Venetaの「カーヴィー マスク サングラス」は、キャンディやタロットカードを詰め込んだバーキンに放り込んでもビクともしない頑丈さ。THISTLESの「The Atlas」は、自然との対話を重ねながら、手を動かしていたあの頃の静けさを思わせる、骨のようにマットで神聖な白が印象的だ。

アンチ トレンドの気品

世の中が派手な話題や目新しさに浮かされているときでも、自分の美意識を静かに貫く。そんなアンチトレンド的な佇まいは、声高に語らずとも、身につけるものににじみ出る。Our Legacyの「Tad」は、バーガンディ色のCarl Zeiss製レンズが精緻な美意識を物語る。また、Le Specsの「The Whisperer」は、Ecozen®素材の軽やかなキャットアイ。サルトルの言葉をビキニ越しに浴びる、そんな読書家にぴったりの一本である。

  • 文: Dora Boras
  • 写真: Nik Mirus
  • 撮影アシスタント: Mitchell Wright
  • セットデザイン: Vanessa Jackson
  • Date: August 1, 2025