ステンレススチールの
錆びることのない美学

Alessi、Sabre、Commissionと
一緒に暮らす銀色の毎日

    ステンレススチールの錆びにくい性質は、主成分の鉄に、クロムを配合させて表面に酸化皮膜を作ることで生まれる。鉄とクロムを配合させるのが銀色のマテリアルなら、素材と美学を融合させるのがプロダクト。シルバーカラーのアルミニムやレザーを、シェルフやバッグに生まれ変わらせるのは、時間をかけて育まれた精神と手法だ。ブランドの歴史が100年でも5年でも、デザインを巡る思考の深さは変わらない。

    画像のアイテム:ケトル(Alessi)

    1921の年創業時より、ステンレス製品の美しさをイタリアから世界に広めてきたアレッシィ。1990年代には論文を発表し、若いデザイナーとの協業を実現させる研究センターも設立するなど、デザインの研究に飽くなき情熱を注いできたブランドだ。その探求のなかで生まれた9093 ケトルという名品は、注ぎ口に小鳥を佇ませ、お湯が沸く音を鳴き声に見立てている。シンプルながら驚く発想で私たちの想像を超える。それがアレッシィである。

    1958年に設立されたスノーピークの歴史は、山井幸雄の「本当にほしいものは自分でつくる」から始まった。創業の精神は、市場調査をしないという方針にも表れている。新製品のためには、自らキャンパーとして山の楽しさも厳しさも体験する。その姿勢が Tobachi 3 ランチボックスを開発する。キャンプで作るからこそ味わえる特別な料理を、3つの磁器の器と真空断熱構造で家に持ち帰り、ダイニングでも温かく食べよう。

    画像のアイテム:トートバッグ(Commission)

    コミッションにとって、1980年代から90年代のアジア人女性や、母親のファッションは重要なテーマだ。ノスタルジックなアーバンウェアは、過去を発想の源にしたからこそ生まれたものだ。Stella トートバッグにも、コミッションのスタイルが反映されている。慣れ親しんだスーパーのビニール袋のような形状と、表面に打ち込まれたメタリックなスタッドが、往年のSF映画を観ているように、懐かしさと近未来感を訴えてくる。

    画像のアイテム:シェルフ(Frama)

    フラマにインスピレーションをもたらすのは、現在ブランドが拠点とするスタジオ兼ショップである、1878年に建てられた元薬局の歴史的建物だ。長い歳月を経た柱や薬棚、空間そのものが持つ渋い質感と色味の飾り立てない美しさ。そんなフラマのデザイン美学が、このシェルフにも反映されている。最小限の面と直線による外観は凛々しく、アルミニウムに極力手を加えず、素材のありままを力強く見せる。

    画像のアイテム:カトラリーセット(Sabre)

    サーブルの創業者、Francis Gelbは金細工を家業とする家に育ち、理想のカトラリーを夢見た。その思いは、テーブルに品格をもたらすナイフやフォークとなって実現する。シルバー&ブラックのカトラリーセットは、黒い柄に浮かぶ3つの円形ディテールと先端のラウンドが、フォルムの洗練された趣をやわらげ、食卓を朗らかにする。サーブルは、食事とは明るく楽しい時間であることを、形にして伝え続ける。

    モデル着用アイテム:バッグ(Paco Rabanne)

    1966年創業のパコ ラバンヌは、布地を針と糸で縫うことが当たり前だった衣服を、金属や紙で仕立て、世界の注目を浴びた。時代は宇宙開発が注目されていた1960年代、未来から取り寄せたようなドレスに人々は驚嘆した。今ではバッグも、あらゆる素材で製作することが普遍の手法となり、かつて未来を見せたメゾンは、現代ファッションの始祖となった。Iconic 1969 バッグは、クラシカルに輝く。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • Date: January 25, 2023
    • 文: Shigeaki Arai