Bodeの
センチメンタル ジャーニー

エミリー・アダムス・ボーディ・アウジュラが
思慮深くて意思を持つ賢い女性のために
ウィメンズウェアをローンチ

  • 文: Steff Yotka
  • 写真: Christina Fragkou

ファッション界を騒がせるには幾多の方法がある。セレブにランウェイを歩かせる、モデルをふわふわの縫いぐるみに変身させる、エキサイティングなダンスミュージックを大音量で流す。だが、パリで開催された2023秋冬メンズ ファッションウィークでのBodeは、そんな喧騒よりはるかに繊細だった。1月21日土曜日の夜、会場となったシャトレ座には象牙色の小石が敷き詰められ、眠ったような海辺の町を思わせた。小ぶりのスリッパやほっそりしたローファーを履いたモデルたちが歩くと、カチカチ音がする。目を瞑り、音を聞いているだけでも、かつて家族と過ごしたニューイングランドの休日が脳裏に蘇る。すぐ近くではロブスターがグリルされ、道路の先ではソフトボールの試合が始まっている。

エミリー・アダムス・ボーディ・アウジュラ(Emily Adams Bode Aujla)がクリエイティブ ディレクターとして発揮する最高の手腕は、私たちを「今」から引っ張り出して、そっと「あの頃」へ連れ戻せることだ。ウィメンズウェアの公式デビューとなった今回のコレクションは、彼女の母と母の3人の姉妹へ捧げる、私的な情緒溢れるオマージュだ。ボーディ・アウジュラの夫であるアーロン・アウジュラ(Aaron Aujla)とGreen River Projectのパートナーであるベン・ブルームスティーン(Ben Bloomstein)がデザインしたセットは、1970年代にボーディ・アウジュラの母ジャネット・ライス(Janet Rice)が働いていたマサチューセッツの大邸宅を忠実に再現したものだ。ショーに際してライス3姉妹は揃ってパリを訪れ、閉幕後の舞台裏でボーディ・アウジュラに感謝とねぎらいの言葉をかけていた。もうひとりの叔母ナンシーは10月に亡くなったが、叔父のフランクが来場してボーディ・アウジュラを驚かせ、開幕前に家族と愛について胸を打つスピーチを行なった。何人かの観客は、ショーの最初の場面で涙を流したことを隠さなかった。

生気を失ったファッション界の内でも外でもBodeの魔法が強力に作用するのは、そんな人としての温もりがあるからだ。手刺繍をほどこしたシャツ、フリンジのあるトラウザーズ、昔懐かしいTシャツなど、Bodeのコレクションは視覚の歓びのみならず、心からの歓びも作り出す。ステージの階下にはムードボードがあり、ボーディ・アウジュラの母の写真が何百枚も貼り付けてあった。どのデザインも、母の衣裳戸棚や母の人生に存在したものが根底にある。「そっくり昔のままに再現したものもあるわ」。ショーの後でボーディ・アウジュラは語った。「だけど、例えば母さんのタンクトップみたいに、ディテールをシャツに移し替えたのもある」。コレクションの縫い目のひとつひとつに、家族の歴史が込められている。

ビーズをほどこした精緻なダンス ドレスは1920年代のスタイルから着想し、ボーディ・アウジュラ自身も着る、といった知識には意味があるかもしれないが、たとえそんなことを知らなくても、Bodeコレクションはそれだけで自立できる。可愛らしさの下には、昼から夜にかけての—そして特に夜の—女性の装いに対する現実主義がある。「ウィメンズウェアを始めるのに、夜にふさわしいドレスを作れないなんて変だもの」とボーディ・アウジュラは言う。「別にそれがウィメンズウェアを始めた動機ってわけじゃないけど、夜もスーツしかないっていうのはね。それとも、フリンジのついた長いシャツとか? そういうのも素敵かもしれないけど、いつもいつもそれだけなのは嫌だわ」。そういうわけで、シークインを使った若草色のコラム ドレスもあれば、風格のあるミリタリー調のコートドレスもある。モデルたちの頭を飾る大きなリボンは、ボーディ・アウジュラ自身の6時以後のヘアスタイルを思わせる。

「アーロンがコレクションのルックの写真を撮ってたんだけど、カレッジ時代の私を見てるようだったって」と、ボーディ・アウジュラは笑う。「もちろん、私が好きだったものや、欲しいけど持ってなかったものや、出会いたいと思ってたものを表現したデザインもあるけどね」。それ以外は、今年の初めに試着済みだ。「クリスマスツリー ドレスは、今年、ホリデー中のパーティーに着て行ったの。コスプレぎりぎりのアイデアだけど、作り方のせいでラグジュアリーなドレスに仕上がってるわ」

Bodeの魔法がかかるのに時間はかからなかった。ショーが終わると、招待客は絶対に手に入れたいニットやトラウザーズの注文を考えるのに忙しく、アッシャー(Usher)はボーディ・アウジュラに挨拶した。Bodeのショー、コレクション、そしてBode流のやり方が呼び起こした興奮の渦は、今回のパリ ファッションウィークで繰り返されたテーマの最後を華々しく飾るものだった。独立系デザイナーたちに老舗ブランドのお墨付きは必要ない、というテーマだ。グレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)の両ジェンダー コレクションで幕を開けたパリ ファッションウィークは、情熱を注ぎながらひと目ずつ歴史を縫い込むBodeで終幕に近づいた。自分が受け継いできたヘリテージで最高のものを創造できるとき、誰が他者のヘリテージを必要とするだろうか?

  • 文: Steff Yotka
  • 写真: Christina Fragkou
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: January 24, 2023