グラフィックTシャツと
コートの多元主義

Online Ceramics、Bloke、
Luna Del Pinalが表現する
カテゴライズ不能のデザイン

    コートを見て「クラシック」と1語で表現するのは、ファッションではとても自然な習慣だ。だが近年、ジェンダーレスやサステナビリティなど、新たな価値観が次々にファッション界から発信されるなか、一つの形容詞でカテゴライズできないデザインが現れ始めた。今回紹介するアイテムもそうだ。革新的なのか、保守的なのか、どちらにも感じられ、どちらにも定まらない感覚が、脳に植え付けられていく。今、最先端に浮上する多元的な6つのアイテムについて語ろう。

    モデル着用アイテム:Tシャツ(Online Ceramics)

    オンライン セラミックスのアイテムを見ていると、不思議な感覚に襲われる。環境問題へのメッセージを込めた社会性を感じる一方で、青い地球が怪しげな笑みを浮かべ、ドクロを持ち上げている姿がコミカルで面白く感じられる。実験精神にあふれたブランドは、シリアスな社会の一面を、不敵な笑いと共に表現する。

    モデル着用アイテム:パンツ(Bloke)

    深みのあるグリーンと、クロシェ編みのインパクトがあるが、シルエットはシンプルで実にスマート。極端な表現はなく、腰回りから太ももを滑らかに包み込み、裾に向かってなだらかに落ちて、ほんのりフレアを描く。植物が自発的に脚を覆い、パンツと化したかのような美しい形だ。アフリカ文化と現代ファッションをつなぐブロークが見せるのは、ダイナミックな視覚の中にある、静かなエレガンスなのだ。

    リネン混テキスタイルのパッチワークが、アンティークな味わいを醸し、一見、祖母の制作したハンドメイド作品を思い出させる。だが、このクッションカバーが感じさせる時間は、そこからさらに時代を遡る。生地に施された模様が、古代遺跡に刻まれた象形文字のように見え始め、数千年前へと想像が膨らむ。ルナ デル ピナルは、過去と未来ではなく、近い過去と遥か遠い過去というアプローチで、時間をデザインする。

    モデル着用アイテム:スカート(CFCL)

    在学中にコンピュータニットの制作に魅せられた高橋悠介は、CFCLでニットの可能性に挑む。一続きに繋がった異なる編地とペプラムシルエットは、陶器のように渋く美しい。この渋さをより魅力的に見せるのは、膝を隠すレングスだろう。伝説のクチュリエは膝を醜いとし、隠すべきものと主張した。コンサバティブなエレガンスが、最新技術と高橋の感性によってモダンに輝く。

    モデル着用アイテム:コート(Rave Review)

    端正なグリーンのチェックは、格式高い英国が香り、掠れたブラックとオレンジのチェックは、1970年代ロンドンのパンクが香る。フロントを大胆に貫くファスナーはインダストリアルで、手首を覆うフェイクファーのトリムは、ワイルドでもありフェミニンでもある。いったい1着のコートに、どれだけのスタイルが混ざっているのか。レイブ レビューは、底知れないエネルギーで、ハイエンドなアップサイクルウェアを生み出す。

    モデル着用アイテム:バケットハット(Nicholas Daley)

    ベーシックなフォルムは、伝統を重んじる職人が作ったかのよう。しかし、このバケットハットを手がけたのは、多様なルーツを持ち、ジャズやレゲエなど様々な音楽を愛するニコラス・デイリー。グリーン系の色で統一を図るように見せながら、クラウンとブリムの端にはブルーの糸を編み込み、ささやかに優しくノイズを加える。素朴な風合いと色の移ろいを見せる帽子は、冒険心にあふれるデザイナーが生んだハイブリッドハットだ。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: November 10, 2022