バイブレーターが
ファッションを更新する
Dr. Barbara Sturm、LELO、Byredoが
タブーを壊して新たな価値を創る

従来、ファッションとは服を意味していたが、現在、その領域は拡大している。以前からファッションの延長で提案されることも多かった香水とインテリアに加え、スキンケアやセクシャルウェルネスなど、取り扱いカテゴリーは広範囲に及ぶ。また、ジェンダーレス、サステナビリティなど、ファッション ブランドが発端となって社会課題も顕在化された。日常のクオリティを高めるためにコートやジーンズをデザインし、ヨガマットやバスローブも手がける。そして、多様な社会問題を明らかにし、解決に向けて取り組む。服を作ることではなく、人間の暮らしに応えること。それこそが現代のファッションではないだろうか。

モデル着用アイテム:バスローブ(Tekla)
バスローブを着る時間は限られている。このリラックスウェアを着て外出し、1日を過ごす人は稀だろう。だが、そのわずかな時間さえデザインできるのがファッションだ。テリークロスで仕立てられたテクラのバスローブは、バスタイムを終えた体をシックに和ませる。スピードが重視される現代人に必要な安らぎを、ファッションなら届けられる。

画像のアイテム:セラム(Dr. Barbara Sturm)
メンズウェアだったパンツが、ウィメンズウェアの必須アイテムとなり、人前に晒すものではなかった下着が、表着としてデザインされる。タブーを犯し、新たな価値をもたらすことは、ファッションの歴史で繰り返されてきた。頬や手と同様に、局部を潤わせたいという気持ちも、公然と求めていいのだ。ドクター バーバラ シュトゥルムのセラムは、皮膚と心を瑞々しくする。

画像のアイテム:バイブレータ―(LELO)
ジェンダーレスデザインの浸透が示すように、ファッションには境界を溶かす力がある。レロのバイブレーターが挑むのは、快感の境界だ。スポーツで得る爽快さと、性的行為で得られる恍惚、双方の喜びに良いも悪いもないはず。開けっ広げに求めることがはばかられる快感があったとしても、いずれファッションの力によって解き放たれていくだろう。

画像のアイテム:チンキ(Rainbo)
菌類で人類をアップグレードするという目標を持つRaiboは、厳選された11種類のキノコで日々の活力を増進する。素材の成分を抽出するチンキは、万能薬としても親しまれてきた。健やかな心身は重要だが、もし現在のファッションが健康診断を受診したら、結果は芳しくないかもしれない。サステナビリティ、文化の盗用、発表サイクルの短さ、様々な課題が明らかになったファッションにとって、チンキの役割を果たすものは何だろうか。

画像のアイテム:香水(Byredo)
バイレードは、記憶や感情という目に映らないものを、香水を通して描き出す。インターネットの誕生で、消費行動は変わった。素材がオーガニックか、どんなテーマで開発されたのか、これまで見ることができず、知ることのできなかったバックグラウンドが、消費者にとって関心の対象となった時代に言葉は欠かせない。今、ファッションは言語化が求められている。

画像のアイテム:ヨガマット(NO KA 'OI)
サンスクリット語で「つながり」を意味するヨガは、心、体、魂の調和が心に安定を生む。細分化され、想像もしなかったニーズが生まれる今なら、ファッションにおける調和の概念をアップデートする時ではないか。クラシック、ガーリー、スポーツ、まったく異なるスタイルを、ひとりの人間が着る。そこに、「ノカオイ(ハワイ語で最高を意味する)」となる、2020年代の新ハーモニーがあるかもしれない。
新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している
- 文: Shigeaki Arai
- Date: February 14, 2023

