ファッション愛好家を
もてなすペッパーミル

Maison Louis Marie、Valerie-Objects、
Audio-Technicaで
大切な友人を自宅に迎える

    フローリングから壁紙までこだわった自慢の新居は、いつしか慣れ、新鮮さは薄れ、ただの住居になってしまった。自分の暮らしに馴染んだという意味では、快適で心地よい我が家だ。だが、数年ぶりに友人を自宅に招く今日は、ささやかな驚きを演出したい。料理やお酒を楽しんでもらうだけでなく、音楽を聴くこと、顔を洗うことにも喜びを。それが、このターンテーブルやフェイスタオルなら実現できる。

    まずは、友人を迎える心の準備から始めよう。

    画像のアイテム:ターンテーブル(AUDIO-TECHNICA)

    オーディオテクニカの原点は、レコードサウンドの要となるカードリッジ。創業の精神を受け継ぐAT-VM95Eは、その接合楕円針でラヴェルの『ボレロ』を奏でる。友人がいちばん好きなブランドがショーで使った曲だ。友人の「いいね」が聞きたくて、ウッド仕上げのターンテーブルにレコードをセットする。

    画像のアイテム:ペッパーミル(Valerie-Objects)

    アントワープと言えばモード。だが、ファッションの歴史を動かしたベルギーは、インテリアでも革新的ブランドを有する。ヴァレリー オブジェクトのペッパーミルは抽象的な形で、「胡椒を挽く」という本来の用途を想像させない。優れたデザインを愛する友人は、テーブル上の小さなオブジェに「これは何?」と訊ねるだろう。すると、私は微笑んで皿の上のパスタにミルをかざすのだ。

    モデル着用アイテム:ベスト(AGR)

    ファッションを愛する私たちにとって、モードな服を愛でながら会話することは至高の時間。今日の題材はこのニットベストだ。グラデーションの入ったマルチボーダーは、子どもがクレヨンで書いた無邪気な抽象画のようで、AGRは、クルーネックベストというオーソドックスなアイテムを、不可思議な服に変える。この幻想的な1着を、ソファの目立つ場所に置こう。友人が見つける瞬間を想像し、私はひとりほくそ笑む。

    エディションズ ミラノは最高級の素材を用いて、ダイナミックな美を具現化する。ブラック&ホワイトのケーキスタンドは、規則正しいボーダーと、不規則な表情を見せる最高品質の大理石が、荒々しくも美しい。規則性と不規則性の並ぶ姿が、こんなにも味わい深いとは。ガトーショコラのホールケーキには、これくらい力強いエレガンスを見せる皿が必要だ。

    画像のアイテム:タオル(FRAMA)

    オーガニックコットン x ヘンプ混のフェイスタオルは、バスルームからキッチンまで、鮮烈のオレンジで彩り、テリークロスの感触が優しく肌を撫でる。酔いを覚ますために顔を洗う友人に、フラマのビビッドなタオルを渡せば、友人の朧げな意識もすっきりと覚ましてくれるだろう。

    メゾン ルイ マリーは、ブランド創設の歴史をフランス革命の時代にまで遡る。マリー家が受け継いできた植物学の叡智は、21世紀では香りとなって人々を癒す。トップノートのカシスやベルガモットで凛々しさが目覚め、ミドルノートに使用されたフローラルなホワイトローズが、落ち着きをもたらす。清廉とした穏やかな気分に包まれ、私は友人の到着を静かに待つ。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: November 17, 2022