ようこそ、新たなる「金ぴか時代」へ

幻想でもいい、煌めいていたい

  • 文: Dora Boras
  • 撮影: Nik Mirus

不穏な時代、人類の心が最後にすがる心理的防衛線は、ノスタルジアの次に「幻想」である。先の見えないなか、スタイルは逆説という名の仮面を被る。市場が揺らごうとも、グラマーは揺るがない。

あなたは、高層ビルの奥で世界を動かす、企業帝国の交渉人。成功の果実を味わい尽くす者。まとう空気さえ、漆塗りのカウンターが艶めくソーシャルクラブのごとく煌めいている。ROIC(投下資本利益率)は、曇ったマティーニグラスに浮かぶ水滴ほどにはっきりと見える。

洗練された髪型、仕立ての良い服、目的を隠さないラグジュアリー。若さを盾にした無秩序は、成功という名の演出に取って代わられた。取引成立へと向かうあなたに寄り添うのは、MARGESHERWOODの「ブラック Bessette ショルダーバッグ」。ニューヨークが世界の覇権を握っていた、あの黄金期へのオマージュ。漆黒の艶が、あなたの生き様そのものを物語る。耳元には、Valentino Garavaniのドロップイヤリングを。シャンデリアのごとくきらめく光を添えて。そして、『ウォール街(Wall Street)』のマイケル・ダグラスよろしく、Balenciagaの「ベージュ クロップド トレンチコート」を羽織るのだ。

相場とは、じわじわと階段を昇るように値上がりし、エレベーターで急降下するように暴落する。あなたは、どこにでも運転手付きの高級車で移動し、専用エレベーターで優雅に降りる。80年代アメリカンポップに身を委ねる夜も、ビジネス仲間と高級料理を楽しむ夕餉も、 細部まで完璧に仕立てられた装いが、あなたの美学を静かに主張する。Ernest W. Bakerの「ブラウン フェイクファー コート」は、あなたの豪奢な嗜好を包み隠さない。足元は、Bottega Venetaの「ブラック Astaire ローファー」。しなやかなカーフスキンの艶やかさが、歩みさえも上質に変える。そして、TOM FORDの「ブラウン Bronson サングラス」が顔の輪郭を引き締める。タイムレスなアビエーターに、大胆な存在感とトータスシェルの艶、まさに権力と美学の結晶である。

  • 文: Dora Boras
  • 撮影: Nik Mirus
  • 撮影アシスタント: William Daviau
  • リタッチング: Marc-André Dumas
  • 小道具スタイリング: Vanessa Lee Jackson
  • Date: May 6, 2025