ジェマイマ・カークの生き方

アートする女優が、悪癖、姉妹関係、我慢できないことを明かす

  • インタビュー: Thora Siemsen
  • 写真: Jody Rogac

今年の冬、ニューヨークのロウワー イースト サイドにあるギャラリーSargent’s Daughtersで、ジェマイマ・カーク(Jemima Kirke)の個展が開かれた。そのとき、彼女は肖像画のモデルになってくれた子供たちとサンタをどう思うかについて話したのだが、子供たちが一人前の大人のように話してくれるのがカークは好きだ。大人のカークが安心感を感じさせるのは、ひとつには、彼女が自分自身の声に忠実に生きている印象を受けるからだ。肖像画を描くときは、視線が合うことでモデルを緊張させないように、私の耳を見てねとアドバイスする。今回のインタビューで彼女自身がフォトグラファーのジョディ・ロガク(Jody Rogac)に撮影されているときは、耳の内側にできているニキビは痛むのか、ロガクのアシスタントに尋ねていた。「私は、タカみたいに視力がいいの」

タカの例えが出たので、カークのこれまでの人生を俯瞰してみよう。生まれはロンドン。父はハードロック バンド、バッド・カンパニー(Bad Company)のドラマーだったサイモン・カーク(Simon Kirke)、母はインテリア デザイナーのロレイン・カーク(Lorraine Kirke)。出産のアドバイスやサポートを行う「ドゥーラ」兼歌手の姉ドミノ(Domino)、女優で歌手の妹ローラにはさまれた次女だ。弟のグレッグ(Greg)はフォトグラファー。マンハッタンで成長し、富裕なブルックリン ハイツ地区にある私立のアート系スクールSaint Ann'sに通った。新進の独創的なクリエイティブを多く育てることで有名な学校だ。クラスメイトだったレナ・ダナム(Lena Dunham)の処女作『タイニー ファニチャー』(2010年)でシャルロット役を演じたときは、すでにロードアイランド スクール オブ デザイン、略称RISDで美術学士を取得していた。スクリーンの外でも古くからの親友であるふたりのコラボレーションは、一筋縄ではいかない女同士の友情を炙り出した。HBO局のドラマ シリーズ『ガールズ』では、自由奔放なジェッサ役で、全6シーズンに出演した。現在は監督を手掛け、ロサンゼルスで撮影した妹ローラ・カークの「Mama」やボーイフレンドのミュージシャン、アレックス・キャメロン(Alex Cameron)のミュージックビデオで、辛辣なユーモアのセンスを発揮している。キャメロンのために制作した「Marlon Brando」最新ビデオは、たっぷり17分で、映画学校出の監督を揶揄したパロディだ。

2月にジェマイマ・カークを訪ね、個展『Scamp』や家族について話を聞いた。

着用アイテム:ブラウス(Fendi)

ソーラ・シームセン(Thora Siemsen)

ジェマイマ・カーク(Jemima Kirke)

ソーラ・シームセン:絵を描き続けてるのは、どうして?

ジェマイマ・カーク:絵に関するアイデアは、無限に湧いてくるから。普通は、とにかく先ず、得意なことを仕事にするでしょ。それが本当にやりたいことかどうか、考えない。スタート地点としてはそれでいいけど、女優を始めてから、絵を続けたいかどうか自分でもよくわからなくなった時期があるの。それからしばらくは女優業に打ち込んで、結局私に向いてないことがわかった。自分ひとりになって、絵を描ける場所がなくなってしまう。

どうしても絵を描く必要がある?

人によっては、絵を描いてないときの私は本当の私じゃない、って言うんじゃないかな。私が絵を描く必要を感じるのは、美しいと思うものがとてもたくさんあるからなの。色々と収集するのが好きなのも、同じ理由。

どんなモノを集めてるの?

子供用のハロウィーンのコスチュームを集めたときもあったな。今は、レンタルのトランクルームに詰め込んである。おもしろい服もたくさん持ってる。フリーマーケットでも絵や家具を買ってくるし、要するに、私はお金のある「捨てられない人」なのよ。

近々個展を開く予定は?

ないわ。一月に、ハロウィーンのコスチュームを着た子供たちの絵の個展が終わったばかり。私、子供の絵を描くのが大好きだから、夢だったのよ。みんなが子供の写真を撮りたがるのも、同じ理由だと思う。子供って、気分も居心地の悪さも、感じてることを何ひとつ隠したりごまかしたりしない。あれこれ指図しなくていい。実は、自己啓発書の『The Artist’s Way』を読んでから、それまで先延ばしにしてたことを全部やろうと本気で決心したの。クリエイティブなプロジェクトも含めて、全部。子供たちの絵の個展もそのひとつ。

あなたは、自分の出演作を観る人?

観るわよ。格別好きで観るわけじゃないけど、スクリーンの上で自分がやりたいこととやりたくないことを学べる方法だから。自分の演技を見直すのは確かにやりにくいことだから、絶対観ないと固く決めてる人もいる。でもそれは、ちょっとナルシシズムだと思う。だって、どうやって向上するわけ? それに、自分が出たものを観ないということは、制作に関わった他の人たち全員の仕事も観ないわけでしょ。自分ひとりが出ているわけじゃないんだから。他の人たちがいる。他の演技陣、セット デザイナー、ディレクター。スクリーンの自分を観るのは嫌だからプレミアへは行かない、映画も観ない、って人たちも知ってるけど、すごく自己中だと思う。

音楽に関しては、ほとんどの場合、アレックス・キャメロンと気が合うの?

全然。彼、音楽に関しては気難しいの。大抵は一緒に車に乗ってるときだけど、私が何かをかけると、すごく嫌がってるときがある。はっきりわかる。私が好きな歌について何か言うと喧嘩になるし。喧嘩の理由は、大抵、趣味かアート。

あなたが譲れないのは?

マナーと礼儀。私、礼儀はすごく大切だと思ってる。だから、失礼な仕打ちを受けた人の話を聞くと、ものすごく腹が立つ。

Jemima Kirke「Girl in a Hotel Room」、41 x 28.5 inches、キャンバスに油彩、2019年 / 着用アイテム:タンク トップ(R13)

お姉さんや妹さんとはどんな関係?

一体、どう言えばいいのかな。今は姉のドミノ(Domino)とものすごく仲良しだけど、妹のローラ(Lola)とはここしばらく大した話はしてない。でもそのうち変わるわ。私がローラにムカついたり、何週間かローラから音信がないと、ドミノに接近するの。だけど、弟だけは別、不動の存在。状況次第で関係が変わったりしない。男ってこともあるかもしれないし、女同士の関係とは違うのかもしれない。女同士だと、お互いの行動にもっと傷つきやすいのよ。

お互いにライバル意識を感じたりする?

話したり、認めたりすることはないけどね。

自分にとって良くない癖や習慣はある?

ちっとも体を労わらなかったりする。お酒を飲んだり、十分な睡眠をとらなかったり、体に良くないものを食べたり、エクササイズをしなかったり。もう30代半ばでこういうのは無責任としか言いようがないわよね。それから、物事に不必要に過剰反応するところもある。でも結局、ちゃんとバランスはとってるの。例えばあんまり忙しくなり過ぎると、何かを捨てなきゃいけなくなる。それはいいことでもあるし、計画中のプロジェクトが駄目になることもある。「こんなこと、もうできない。大変すぎる」ってどっかり座り込んで、あ、座り込むっていうのは比喩だけど、あれもこれも「ノー」の拒絶状態になる。話したくないときや落ち込んでるときは、メッセージも無視。様子を尋ねるメッセージが来ても、「ああ、もうウンザリ。私は大丈夫だってば」ってなる。

まだスモーカー?

ええ、タバコはまだ吸うけど、止める努力中。今、アレン・カー(Allen Carr)の『Easy Way to Stop Smoking (簡単にタバコを止める方法)』を読んでるの。書いてあるように上手くいけばいいんだけど、もしダメなら禁煙の見込みはないかもね。私はずっと喫煙擁護派だったし、タバコは好きだし、それでいいと思ってる。でも子供たちはすごく禁欲的な年齢だから、私がタバコを吸うのをとても嫌がるの。それが禁煙の助けになるわ。「タバコを吸うのは悪いことなんだよ。死んじゃうからね」って言われるから、「そうね、死ぬかもしれないし、死なないかもしれない」って答えてるけど、確かに罪悪感は感じるわよ。

それ以外に、罪悪感を感じることは?

このインタビューに罪悪感を感じてる。あらゆることに罪悪感を感じる。ユダヤ人の母親に育てられたせいじゃないかな。ほとんどのことは自分のせいみたいに考える傾向があるの。子供対してすることも全部。学校へ迎えに行けないとか、その日や週末に子供たちがやりたがることを全部できないとか。子供がいると、毎日の罪悪感は天井知らずだわ。

ジェマイマ・カーク作「Uma」、50 x 24 inches、キャンバスに油彩、2019年

ジェマイマ・カーク作「Three Sisters」、42.5 x 36 inches、キャンバスに油彩、2019年

お子さんたちはどんな性格?

娘は本物の本の虫。私が想像したより、はるかにオタク。すごく論理派でコードが大好きなの。息子のほうは、世界についていろんなことを尋ねてくる。娘と比べると、ずっと知性的。

ベビーシッターはいるの?

ええ。息子が生まれたときから、ひとり。

あなたにもベビーシッターがいた?

山ほどいたわよ。ベビーシッターに育てられたようなもんだわ。

いまでもお付き合いしてる人はいる?

住み込みで、いちばん中心だった人とは、クリスマスに会う機会があるし、お誕生日には電話してる。

ちゃんと、みんなのお誕生にお祝いの電話をするほう?

ダメね。だけど、知り合いのお誕生日リストがあるから、なるべくそれを見るようにしてる。「今月は何月だっけ? 誰のお誕生日?」って具合。

ニューヨーク以外では、どこで暮らしてるの?

ニューヨーク以外の場所に住んだことは一度もないわよ。他の場所で暮らすなんて、想像したこともないし。もしどこかに住むとしたら、唯一考えられるのはマイアミね。身を隠して、世捨て人みたいに暮らすには最高の場所だもの。金持ちのヨーロッパ人がクラブなんかに出入りすると評判が悪いけど、ああいう場所を避けるのは簡単だから。そもそも、マイアミに大した社交の場はないのよ。歴史がきちんと保存されてるし、建物は美しいし、こうしなきゃいけないっていう断固とした意図や予定を持ってる人はひとりもいない。移り変わっていく雰囲気がすごくある。みんなが自分は何者かを模索してる感じ。

ペットは飼ってる?

友達から貰った、ミスター・チップスという名前のネコがいるわ。その友達が知り合いだったドラッグ ディーラーが死んじゃって、何週間も地下室に置き去りになってたのを見つけて、私にくれたの。だから年齢も見当がつかないし、うちに来たときは毛も抜けてて、すごく臆病だったのよ。今は放し飼い。ルームメイトみたいなもんね。私もネコ可愛がりしない代わりに、ミスター・チップスも私の邪魔しないという暗黙の了解がある。私、膝に乗ってくるようなペットは嫌なの。べたべた、くっつかないでほしい。ミスター・チップスは好きなように出入りしてる。

あなたがどうしても我慢できないことは何?

受動的攻撃とくだらないこと。心にもないことを口にすること。女優をやってると、これは結構厄介な性格なのよ。映画業界は、そういう綺麗ごとを聞かされることがすごく多いから。プロデューサーやディレクターは俳優を煽てる話し方をするの。エージェントもいつもそう。「連中は、ぜひ君にこの役をやって欲しがってるんだよ。ただ一応、オーディションは受けなくちゃいけないけど。とにかく君に入れ込んでるんだ。だけど…」。御託はいいからはっきり言って、って感じ。言っとくけど、私は見かけより手強いから。

Thora Siemsenは、インタビュアーおよびライターとして、ニューヨーク シティで活動している

  • インタビュー: Thora Siemsen
  • 写真: Jody Rogac
  • スタイリング: Eugenie Dalland
  • ヘア: Fernando Torrent / L’Atelier NYC
  • メイクアップ: Allie Smith / Bridge Artists
  • 写真アシスタント: Justin Leveritt、Josh Mathews
  • スタイリング アシスタント: Carlo Prado
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: March 20, 2020