イヴ・バビッツの過去と現在

ハリウッドの元祖イット ガール作家が21の質問に答える

  • 文: Natasha Stagg

Instagramが現れる前、セレブたちが高級オーガニック食材を求めて高級スーパーマーケットへ通い始める前、夥しい数の視聴者が『カーダシアン家のお騒がせセレブ ライフ』に釘付けになる前、ハリウッドはイヴ・バビッツ(Eve Babitz)のものだった。長いあいだミューズとしてもてはやされた元祖イットガールのバビッツは、「誰がどこで何を」が絶え間なくオンラインで報告されるはるか昔に、ロサンゼルスの街とそこで暮らす有名人について書いた。どんな状況へも難なく入っていけたバビッツの才能は、神業に等しい。チェスの名手としても有名だった美術家マルセル・デュシャン(Marcel DuChamp)に全裸で向かい合って、駒を動かしたこともある。それからほぼ50年が流れ、バビッツの生きたハリウッドは想像すべくもないが、バビッツの書いたハリウッドは、現在なお胸が痛むほどにリアルだ。カウンター カルチャーと反抗精神に溢れたセレブたちを自由奔放に書き記した著作は、文学にひとつの基盤を築いた。そんなバビッツにナターシャ・スタッグ(Natasha Stagg)が序文を捧げ、21の質問を投げかける。

バビッツの著作には、いつも彼女自身の人生、つまり実話が入り込む。発表当初の後、2度目の追い風が吹いたのは2010年代の末期、自伝と虚構が混じり合う「オートフィクション」の価値が議論されたときだ。『Eve’s Hollywood』(1974年)と『Slow Days, Fast Company』(1977年)が一役買ったことは間違いないが、敢えて偽名にして細部をぼかした語りは、バビッツが信頼を損なわないように慎重に配慮したためと見なされることが多い。だが2010年代ではなく、ブロガーたちが新たなイット ガールになった2000年代にバビッツの著作が息を吹き返したとしても、不思議ではなかったと思う。はるか前の時代に、バビッツはパーティ ライフに君臨し、それを記録する最高の書き手になっていたのだから。とはいえ、当時のニュー ジャーナリズムやゴンゾー ムーブメントも同じスタイルを目指したが、魅力の点でバビッツには敵わなかったが。人々が故郷へ回帰し始めた2020年あたりからバビッツの人気が再燃したのも、不思議ではない。ロサンゼルス生まれのバビッツが書いたことは、ある意味で、何もかもがロサンゼルスと関係していた。何よりも、故郷の物語なのだ。

実際のところ、バビッツが偶然にリバイバルした印象を受けるのは、おそらくそれが事実だからだ。Counterpoint Pressが『Black Swans: Stories, and Sex and Rage: A Novel』を、New York Review of Books Classicsが2015年に『Eve’s Hollywood』、2016年に『Slow Days, Fast Company』、2019年に『I Used to be Charming: The Rest of Eve Babitz』をそれぞれ再版したのは、ライターのリリ・アノリク(Lili Anolik)がバビッツを再発見したのがきっかけだった。2010年、アノリクはどこかの本でバビッツからの引用を目にし、グーグル検索してすっかり心を奪われたが、活字として残っている資料があまりに少ないことに愕然とした。そこでバビッツ本人の居所を突き止めた。バビッツは1997年に誤って火のついたマッチを落とし、パンティストッキングが溶けて肌に貼りつくという瀕死の大火傷を負って以来、ひっそりと暮らしていた。ふたりの出会いから「All About Eve—And Then Some」と題された記事が『Vanity Fair』に掲載され、それによってバビッツは誰もが知りたがるセレブのひとりに返り咲いた。

バビッツは、ロック スターたちと付き合い、映画スターたちに天才と呼ばれ、一流アーティストたちとヌードでポーズをとったりしたから、実像より評判が先走ったのは確かだ。だが、彼女の過去を知らずに著作を読んでも、確かにわかることがある。それは、当時と現在の文学界を含めて、バビッツは「楽しむこと」を誰よりもよく知っていることだ。残念ながら、鈴から発した高い波動が凛と染み渡るようなバビッツのスタイルは、模倣することができない。彼女の物語は、すっかり夢中になって引き込まれる対話といっしょだ。エキサイティングだけど冷静で、時には虜にされるほどあけっぴろげで、時には胸を打つほど用心深い。例えば『Slow Days』のひとつの物語は、こんな文で始まる。「アラーの園が打ち壊され、立派な貯蓄貸付機関に取って代わられて以来、激しい怒りと亡霊はサンセット大通りを渡ってシャトー マーモントへ向かった」

素晴らしい作家だけど人間としては最低、あるいは素晴らしい人だけど作家としては三流、という例には事欠かない。だが、バビッツにこの方式はあてはまらないようだ。特に腕の冴えが光る作品からは、常に自然体で自分自身の人生を書き綴るおおらかな人柄が見える。作家としても人としても素晴らしい例は稀だが、あり得ないわけではないのだ。

亡霊を信じますか?

誰でも信じてるんじゃない?

反体制文化の中心だったローレル キャニオンにも亡霊はいますか?

もちろんいるわよ…。

亡霊につきまとわれたことは?

多分、毎日。

秘密を守れる人ですか?

みんなと同じように、守れるときも守れないときもある。

70年代は最高でしたか?

私にとっては、多分そう。

サンセット ストリップは故郷ですか?

故郷に近い。

「美しさ」は定義できますか?

人それぞれよ。

誉め言葉に抵抗はないですか?

どうかしら。

同じ本を何度も読み返しますか?

いつも。

どんな夢を見たか、覚えていますか?

時々はね。

特に好きな服はありますか?

今はもうない。

早起きですか?

早起きだったことは一度もないわ。

夢遊病だったことはありますか?

ないと思う。

電話好きですか?

いいえ。

よく手紙を書きますか?

以前は書いてた。

名声にはもう興味はありませんか?

今はもうセレブの意味がわからない。

ゴシップは好きですか?

昔は好きだった。

あなたにとって、書くのは簡単なことですか?

いいえ。

複数のソウルメイトを持てますか?

もちろん。

関係には欲望が存在できますか?

もちろん。

ひとりは好きですか?

ええ。

  • 文: Natasha Stagg
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: May 25, 2021