無垢なドレスで
私の街を旅行する

D.S. & Durga、The Row、Eytysで訪れる
日常のなかのリゾート

    旅行は日々の喧騒を忘れさせ、充実の休息をもたらす。早くまたあの体験を。そう思う人はきっと多いに違いない。想像もしなかった激変を経て、世界は、かつての日常へ徐々に回帰しているとはいえ、飛行機に乗って海を超えて楽しむのは、まだ憚られてしまう。それなら、物理的距離を超えるのではなくて、心の距離を超え、自分が住む街をリゾートにしよう。そのために、今こそファッションの力を使う時だ。

    出発の時間までもうすぐ。最後の準備は香りを纏うこと。日常の非日常化を、ディー. エス. & ダーガはスパイシーでフローラルな香りで後押しする。シックなボトルを眺め、出発の気分はいっそう高まる。さあ、今晩の食材を探しにスーパーへ行こう。

    モデル着用アイテム:ドレス(The Row)

    平日は毎日着ていたジャケットやシャツから離れる。それだけで解放される自分がいた。ピュアな白が眩しいロング&リーンシルエットは、心に積もった塵を綺麗に洗い流し、ザ・ロウなら自宅の近隣を歩く散歩も、きっと贅沢な寛ぎの時間にしてくれる。

    普段なら見ているだけのアクセサリーも、旅行では身につけたくなる。胸元をグリーンとホワイトのビーズでダイナミックに彩るネックレスは、私が望む特別な美しさを現実にした。カフェで待つ友人と会う道のりが、ドリス・ヴァン・ノッテンのおかげで、観光地のホテルへ向かうように待ち遠しい。これから笑い合える時間が始まるんだ。

    モデル着用アイテム:ジャケット(Kiko Kostadinov)

    仕事から離れているのだから、ジャケットは着たくない。だけど、これは違う。大胆にも白いレースで身頃を仕立て、ブラウンのサテンをアクセントにしたテーラードは、ドレスを着るように胸を高鳴らせる。着なれているジャケットがロンドンが生んだ奇才の力で、現実からトリップするチケットになった。キコ・コスタディノフを着て本屋に向かい、小説を買って物語の世界にも飛ぼう。

    画像のアイテム:スニーカー(Eytys)

    旅路は心躍るもの。映画をタブレットで観るのは好きだけど、今夜は久しぶりにスクリーンで鑑賞。レイトショーに向かう道すがら、次第にテンションが上がっていく。シルバーの光沢と蛍光イエローのソールが近未来世界を思わせるエイティーズで、軽やかに足を前へと進めていく。楽しみな未来がもうすぐ幕を開ける。

    画像のアイテム:ヘッドフォン(Bang & Olufsen)

    旅行は移動の時間も愛しい。ヘッドフォンから流れる音楽をBGMに、目的地に思いを馳せ、流れゆく景色を眺めながら、到着までの時間を楽しむ。そんなシチュエーションに合うのは、淡く優しいトープのレザーを使ったヘッドフォンだ。デンマーク生まれのバング アンド オルフセンは、北欧家具に通じるクリーンなデザインで音楽を目でも楽しませる。いつもの始発電車に乗り、想像の旅路が現実になることを願いながら、私は今日もこの街から出勤する。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している

    • 文: Shegeaki Arai
    • Date: July 20, 2022