シースルーで透視する未来のヒール

Bode、Thom Browne、Amina Muaddiが
透明な美しさを形にする

    18世紀のヨーロッパで、女性たちにモスリンドレスが愛されたように、シフォン、オーガンジー、チュールなど人間の肌を透かす生地は、服装史を語る上で欠かせない。長い歴史を持つシースルー素材だが、実生活のウェアに溶け込みながら、現代人の心を今なお高揚させてくれることを、6つのブランドが教えてくれる。時に軽やかに、時に上品に、覆うものすべてを露わにする素材から、新時代の装いを透かして見てみよう。

    画像のアイテム:カーディガン(Simone Rocha)

    素材は、時にその服の世界観を連想させるに十分な力を持っている。デザインに悪魔のような黒さと、妖精のような繊細さが共存させるシモーネ・ロシャは、モヘア x ウール混の透かしケーブル編みで、甘い綿菓子のようなカーディガンを仕立た。淡いピンク、短いレングス、ややボートネック気味のクルーネックが、甘味をより強くする。ひとたびロシャのロマンティックな世界に引き摺り込まれると、その世界から抜け出すのは困難だ。

    画像のアイテム:Tシャツ(Miaou)

    サステナビリティが重要な現代において、リサイクル素材の使用は選択肢のひとつ。ヴィンテージのリメイクから始まったミアオウは、オーソドックスなクルーネックTシャツに、リサイクルポリステルのメッシュを用いる。生地に施されたプリントに目を凝らせば、草花の青い影が見えてくる。廃棄されるものにも、美しさの芽は潜んでいる。

    画像のアイテム:シャツ(Bode)

    次々に注目の才能が誕生するニューヨークで、クラフト感のある服で独自の存在感を放つボーディ。コンパクトなシルエットのオフホワイトシャツは、オーバーサイズ全盛の今、スマートかつクリーンで新鮮だ。コットンメッシュを素材として選び、着用者はシャツの下の肌を、肌の露出を着用者に強制する。一見、素朴なデザインのようで、シースルー素材に未来のファッションが息を潜めている。

    画像のアイテム:スニーカー(GCDS)

    2010年代後半から巻き起こったスニーカーブームでは、ダッドスニーカーと呼ばれるデザインが新たに人気を集め、厚いソール、鈍重なフォルム、野暮ったいカラーに注目が集まった。そして今、GCDSは、ダッドスニーカーを亡き者にするかのごとく更新する透明のラバー素材を大胆に用い、トレンドを席巻したスニーカーの特徴すべてを透明化する。

    画像のアイテム:ショートパンツ(Thom Browne)

    チュールはレースに多用されてきた歴史があるように、ドレッシーなイメージを持つ素材でもある。だが、アメリカントラッドのアヴァンギャルド化に成功したトム ブラウンの手にかかれば、素材の歴史などデザインの素材でしかない。ショートパンツにチュールを使い、太く逞しい男の大腿部を露わにする。チュールが持つ従来の美しさとは対極のエレガンスが、ここに誕生する。

    童話に登場するガラスの靴のように、流麗で美しいフォルムとグラマラスなヒールから目が離せない。この美しさを磨き上げているのがPVC素材だ。プラスチックの中で最も古い歴史を持つPVCは優れた着色性に特徴があり、このシューズでも清らかな水のような透明感のあるブルーを演出している。Amina Muaddiは、女性の足に、女性の肌に、幻想と近未来のエレガンスを宿らせる。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: August 10, 2022