プレッピーのエッセンスを纏って固定観念を脱ぎさる

Thom Browne、AURALEE、Polo Ralph Laurenの美学で、腕時計の針を進める

  • 写真: Nik Mirus
  • 写真アシスタント: Mitchell Wright
  • デジタル技術/リタッチング: Marc-André Dumas
  • アート ディレクション: Jasmine Lebel

プレッピースタイルとは、アイビーリーグなどの著名大学に入学するために学ぶ名門私立学校、プレパラトリースクールに通う学生たちのようなファッションを指す。その装いは、カラフルな色彩展開が新鮮で、ボタンダウンシャツもジャケットも軽快に着こなす姿には、上品さも漂う。愛するアメリカ伝統の服装を、何歳になっても、どこにいても着続けたい。そのためには、時代や環境に応じたアップデートが必要不可欠。伝統は洗練を惜しまないからこそ、受け継がれていくのだ。

画像のアイテム: Thom Browne ネクタイ

挑戦的スタイルというと、派手な色彩や大胆な造形などインパクトを想像しがちだが、シンプルな形、シックな色であっても実験精神にあふれたアイテムはある。そのデザインが形になるのは、既成概念に挑んだ時だ。溌剌としたカレッジファッションの象徴であるレジメンタルタイを、プレッピー特有のカラフルな色彩ではなく、クールな質感のグレーで染めたネクタイは、まさにアメリカ伝統のウェアを革新するトム ブラウンそのものだ。

画像のアイテム: HEREU ローファー

彩り豊かなプレッピーには、黒いローファーが映える。しかし、伝統に即しただけのシューズでは物足りない。カタルーニャ語で「後を継ぐ者」を意味する言葉から名付けられたヘリューは、オーソドックスな靴に仕掛けを施す。側面から見ればベーシックな一足は、正面から見た時に印象を変える。レザーが交差するアッパーは、さながら拡大されたテキスタイル組織。受け継ぐだけでなく新しさを加える。それこそ真の後継者だろう。

モデル着用アイテム: AURALEE スカート

デザイナーみずから世界の産地に赴き、最高級の生地を追求するオーラリー。ブランド設立時から貫くコンセプト「原料から厳選する素材作り」は、プリーツスカートでも健在。スーパー120ウール x モヘア混ドビークロスが、スクールテイストのボトムに上質な品格を纏わせる。10代に着ていた服を、20代になっても30代になっても着たい。プレッピーは大人になっても愛すべきファッション。オーラリーは、滑らかなタッチの生地で、成長したあなたに寄り添う。

モデル着用アイテム: Burberry キャップ

ブルー&ホワイトのチェックキャップを観察すると、違和感に気づく。帽子のクラウンを構成する布地パーツの柄向きが、それぞれバラバラなのだ。縦と横に規則正しく交わる直線模様は、接ぎ目を境に柄の方向がズレていき、不調和の美が頭を覆う。トラディショナルなスタイルを崩して着ることも厭わないプレッピーの精神は、160年以上の歴史を持つバーバリーによって体現される。

モデル着用アイテム: Stella McCartney シャツ

清涼感のあるブルーシャツは、フレッシュでスポーティだが、服の背後にまわって見た時、ステラ マッカートニーの実験が露わになる。ベーシックな前身頃とは違い、後ろ身頃を覆うのは、大胆なサイズでプリントされた植物柄テキスタイル。シンプルでありながらアヴァンギャルドな1着だ。進路もファッションも選択に迷ったら、二者択一ではなく同時に叶える手段を探すことも、誇り高いプレッピーの美学だ。

クラシックであるはずのドリス ヴァン ノッテンが、厳格なダブルジャケットをカジュアルなテーラードに変える。コットンポプリン製ボディは、体を丸く柔らかに包み込み、ショルダーラインをなだらかに仕上げる。ネイビーもライトな色味で、リラックスシルエットとの相乗効果で、シャツのように軽やかだ。勉学だけでなく、スポーツも芸術も幅広く学ぶプレッピー。イメージを変える発想は、豊かな体験から生まれる。

画像のアイテム: Polo Ralph Lauren 腕時計

シックなジャケットもカジュアルなジーンズも軽快に着こなすプレッピーは、境界を設けない。好きなものはカテゴリーを越えて、手に収めればいい。ポロ ラルフ ローレンは、スイス製自動ムーブメントの腕時計に、愛くるしさを同居させた。時間を確認するたびに、ジーンズを穿いた君が愛おしくなる。シックとキュートは両立するものなのだ。

モデル着用アイテム: Sunspel ニットポロシャツ

1860年に設立されたサンスペルは、ベーシックウェアの原理原則を貫く。コットン100%のリブニットは、スタンダードな輪郭を形作り、杢調のカーキは渋く控えめに生地を染める。襟、袖口、裾、いずれのディテールも驚きとは無縁のシンプルさ。このポロシャツに遊びは一切なく、王道に忠実。それゆえトラディショナルの真髄が迫り、その姿は美しい。基本を熟知してこそ、伝統をベースにしたプレッピーの完成度が高まる。

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新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

  • 写真: Nik Mirus
  • 写真アシスタント: Mitchell Wright
  • デジタル技術/リタッチング: Marc-André Dumas
  • アート ディレクション: Jasmine Lebel
  • 文: Arai Shigeaki
  • Date: February 22, 2024