ショッピングモールという名の神殿
ジーンズとキュートなトップス、それだけで始まる物語。
- 文: Dora Boras
- 写真: Nik Mirus

2025年の夏、ショッピングモールが帰ってきた。あらゆるトレンドに「〇〇コア」と接尾語をつけずにはいられない自分をいったんリセットしよう。ただそこにいるだけで満たされる、そんな単純で豊かな感覚を取り戻すのだ。通知に邪魔されることなく、たまに鳴るMotorola Razrの折りたたみ式ケータイ電子音が、唯一の外界との接点。モールに満ちるのは、ふわりと漂うプレッツェルの香ばしさ、Cucumber Melon(キュウリとメロン)の甘いボディスプレー、そしてスマホケース売り場のどこかメカニカルな匂い。グラフィックTシャツの中でも最高の一枚を身にまとい、視線の先には密かに恋心を寄せるあの人を。神が味方すれば、きっとすれ違えるはずだ。

画像の着用アイテム:ERL ポロ、Vaquera タンクトップ、Ashley Williams ポロ、Balenciaga ピアス、Balenciaga チョーカー、Acne Studios サングラス、ABRA トート、Vans スリッポン、Lanvin スニーカー。
ショッピングモールという、感覚の闘技場では時間が止まる。そこに存在するのは、自分と「いま」だけ。空調に守られた永遠のなかで、人は商業と一体となり、フードコートのB級グルメを味わい、新しい服に託された「よりクールで垢抜けた自分」の幻影を追う。モールとは、自分が求めるものになれる場所なのである。
ERLのポロを着て、南カリフォルニアのスローテンポをまといながら、洞窟のようなAbercrombie & Fitchの前をゆっくりと通り過ぎる。そうすれば、筋肉質な店員からスカウトされる日も遠くない。
主役たる存在感を放つには、血のように濃いオレンジのLanvinスニーカーを。分厚いシュータンが約束するのは、地元のスケートレジェンドとしてプロの舞台に立つ未来かもしれない。

画像の着用アイテム:032c Tシャツ、ABRA レギンス、Vaquera キーチェーン、Coperni サンダル、Balenciaga フーディ、Vetements ブーツ、Balenciaga バッグ、Vaquera サングラス。
「ねえ、ひと暴れしにモールへ行く?」これはアヴリル・ラヴィーンが「Complicated」のMVで、バンド兼スケート仲間たちに投げかけたひと言。ロックガールの女王に倣って、地元のショッピングモールで一波乱起こす時が来た。
「他の子とは違う」ようでいて、安心感をもって「他の子とまったく同じ」でもある自分。Abraのブルーカプリにサーファーの気怠さを託し、Coperniのブラック×ピンクのウェッジサンダルでモールの床をパーカッシブに叩きながら歩いてみよう。
ホットドッグの着ぐるみでクーポンを配る、バイト中の友人をいじり倒すには、032cのグレーのオーバーサイズTシャツが最適だ。Vetementsのタワーブーツを履いて、転落上等でエスカレーターに挑む。結局、「モール・ゴス」とは、反抗文化の幻影にすぎないのではないか?
- 文: Dora Boras
- 写真: Nik Mirus
- セットデザイン: Vanessa Lee Jackson
- Date: June 17, 2025

