ハートの造形と多様な愛

ALAÏA、Versace、Vivienne Westwoodが、
かけがえのない思いを肯定する

    なぜハートは愛の象徴となったのか。その由来は、キリスト教の心臓、古代ローマで使われた愛情表現、僧侶を表すトランプのハートなど諸説ある。知れば知るほど、愛は単なる恋愛感情を超えた奥深い思いなのだという気持ちになる。バレンタインデーが近づく今、大切な恋人や家族、憧れの人に思いを寄せる人は多いだろう。それだけでなく、ものづくり、カルチャー、自然にも私たちの愛情は向けられる。愛する対象があり、そのことを実感させるブランドが、デザインの世界にはある。

    画像のアイテム:バッグ(Alaïa)

    カーフスキンのブラックレザーは力強く、くぼみから中心に向かってまっすぐに伸びるダーツが、硬質な立体感を形作る。愛を伝えるには決意が必要だ。アライアはハートに潜む逞しさを、メゾンのDNAである造形力で表現する。

    画像のアイテム:ブレスレット(Hatton Labs)

    リサイクル貴金属を素材に製作するサステナブルな姿勢。繊細さも漂うジェンダーレスなシルエット。Hatton Labsには、現代の価値観に根差したジュエリーデザインへの愛があふれている。ものづくりへの深い思いは、細部にこそ宿る。一つひとつのパーツがハート型に成型された Heart Mariner ブレスレットに、職人的実直さを感じずにはいられない。

    画像のアイテム:キーリング(Vivienne Westwood)

    キーホルダーという小さなアイテムにも、ヴィヴィアン ウェストウッドは誇りを刻む。英国王室の王冠などに使用される権威的天体に、土星の衛星である環を組み合わせることで、未来に伝統をもたらしたいという思いを表現したのが、オーブロゴだ。ブランドのシンボルを見せる場所として、愛を形どるハートはもっともふさわしい。ロンドンファッションの女王が、歴史に捧げた愛情は永遠だ。

    画像のアイテム:照明(Seletti)

    キッチュでポップなインテリアをデザインするセレッティは、奇怪にも神聖にも感じられるライトを製作した。生々しいフォルムには、鼓動が聞こえてきそうなリアリティが宿っている。心臓は、生命の灯火とも言える臓器だ。その存在に尊さを感じないわけがない。無垢な白に染まった磁器が、愛する家族が帰ってくるわが家を明るく照らす。

    モデル着用アイテム:Tシャツ(Online Ceramics)

    木の幹を彫って形作ったハートと、メッセージプリントがさまざまな解釈を促す。環境を破壊する人間を揶揄しているのか、それとも自然への態度が、その人間の本質を表すと訴えているのか。オンライン セラミックスは実験的グラフィックを幾度も発表してきたが、ここではブランドの試みに乗ってみないか。左胸に手を添え、自分の心を探ってみよう。

    ギリシア神話の怪物メドゥーサを黄金に輝かせ、滑らかな光沢のエナメルレザーを淡いパープルで染めたショルダーバッグは、ゴージャスであると同時に気品も香る。その存在感は、まさにヴェルサーチェそのもの。紫のハートが、憧れの貴婦人のように佇む。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: January 31, 2023