バックルブーツで踝を見せる

Abra、TOM FORD、Chloéのアイデアが足首に絡みつく

    良いデザインは、優れた機能と優れた意匠を兼ねそなえているものだ。靴ならば、確かなフィット感と歩きやすさを実現した上で、装飾性が表現されるべきだろう。とはいえ、時には機能性を傍に置き、ディテールすべてに実用性を求めないのが、ファッションの面白みではないだろうか。ただ美しいだけのストラップやリングのついたシューズがあってもいい。そこで、パンツの裾でアンクルデザインを隠してしまうにはあまりに惜しいバックルブーツを紹介したい。バックルの意味など問うだけ野暮だ。ただ足元を飾り、エレガンスの頂を目指そう。

    ベーシックな素材や色が多い靴にあって、グッチ伝統のモノグラムプリントを用いたアンクルハイブーツは、パワフルな存在感を放つ。筆で面を塗りつぶすように、アッパーを横断するレザートリムとGリングが、シックな柄のフォルムにノイズを起こす。装飾性と装飾性のぶつかり合いから、目を逸らせない。

    画像のアイテム:ロングブーツ(Abra)

    ヒールから履き口のトップラインに向かって、ふくらはぎに沿って描かれるなだらかなカーブ。アブラのロングブーツには、肉体を主張する生々しさが漂う。そこにアイレットを2列に並べたブラックベルトがハードな趣を添える。高さ7.5cmの細いスティレットヒールとは対照的に、力強く、SM的な香りも匂わせる黒い革の帯によって、グレインレザーのシューズは艶をいっそう増す。

    画像のアイテム:バックルブーツ(AMIRI)

    アンクルハイブーツに、ストラップを3本も取り付ければ、デザインのアクセントとして申し分ない。だが、LAスタイルをモードに昇華させるアミリは、それだけでは満足しなかった。ペイズリー柄のバックルストラップ、チェーンストラップを使い、スエード素材のシューズを飾りつけていく。デコラティブな要素を重ねて合わせてこそ、靴は華やぐ。そう主張するように、2本のバンダナプリントは、足首の上でクロスする。

    画像のアイテム:ブーツ(TOM FORD)

    トム フォードのスエードシューズを側面に見る、つま先から甲、甲から足首に向かうフォルムの滑らかさ。デザイナーの崇高な美意識は、ディテールにも徹底されている。フロントで交差するベルトはスリムな幅で作られ、ベルト端は、シングルステッチではなく、ダブルステッチが施されている。Rochester ブーツを履くなら、パンツはアンクル丈を選ぶのがベストだ。

    画像のアイテム:ショートブーツ(1017 ALYX 9SM)

    現代ストリートを先導するデザイナーは、伝統の靴にエッジな表情を添える。サイドゴアブーツを基盤にしたオーソドックスな形は、1017 ALYX 9SMの象徴、ローラコースター バックルと組み合わせたドローストリングによって、インダストリアルにもクラシックにも見える多面性を獲得している。黒いコードを巻きつけるシンプルなアイデア一つで、独自性を高めるマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)の感性と手法には、感嘆するしかない。

    画像のアイテム:アンクルブーツ(Chloé)

    煌びやかなゴールドトーンのスタッドが目を惹く、グラフィカルな靴は、まるでナスカの地上絵のように神秘的だ。ハードなゴールドバックルはロック的でもある。ディテールすべてに機能性を求める必要はない。美しさの表現に特化したデザインが、あってもいいはず。クロエは緻密なテクニックで、足元にファッションの醍醐味を表す。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: June 5、2023