編むも飾るも染めるもシアトップス
Helmut Lang、Givenchy、Versaceが引き出す、肌を透かすウェアの可能性

透け感のある薄手テキスタイルを使ったトップスの概念を、8つのブランドが様々なテクニックを用いて、あらゆる角度から捻り倒す。ブランドロゴで埋め尽くされたシルクシフォンのシャツ、チェック柄が塗りつぶされていくメッシュトップス、肌よりも体の輪郭に意識を向けさせるジャージのTシャツ。デザイナーの仕事に、これまでのシアトップスとは一味違う可能性のファッションが透けて見える。

モデル着用アイテム:タートルネック(Helmut Lang)
ヘルムート ラングはミニマリズムと称されるが、ブランドの本質はアヴァンギャルドな感性を、シンプルなデザインで表現する点にある。その特徴は、この黒いタートルネックを見れば一目瞭然。非常にオーソドックスな服のシルエットに対して、肌を透かすリブ編みの凹凸が、筋肉の上を流れるようになぞり、異様なまでに肉体美を強調する。前衛の姿勢をミニマルに表現するDNAは、やはり隠しきれないようだ。

モデル着用アイテム:シャツ(Bode)
ゆったりと優しく包み込むストレートシルエットの向こうに見えるボディライン。柔らかな見た目とは裏腹に、ベージュに染まったコットンの透かし織りが、着る者に引き締まった肉体を要求してくる。現実から目を逸らしてはいけない。夏休みで緩んだ体を鍛え直して、ボーディのスプレッドカラーシャツに袖を通そう。

モデル着用アイテム:タンクトップ(Givenchy)
シャープなVネック、ノースリーブで体を束縛しないフォルム、チーム名と背番号が連想されてくるロゴデザインが、バスケットボールのユニフォームを思わせる。本来ならカジュアルなタックトップも、色をブラックにし、素肌を透過する素材を使用することで、活動的なスポーツとは対極の、ラグジュアリーでグラマラスに変貌。ジバンシィは、スポーツとモードの融合には、まだまだ可能性があることを示唆する。

モデル着用アイテム:シャツ(Dries Van Noten)
ドリス ヴァン ノッテンの名を耳にするだけで、色彩豊かなフラワープリントへの期待が高まるが、アントワープシックスの一人に数えられるデザイナーは、別の一面をブラックシャツで披露する。襟元からフロントをカラフルに飾るビーズとラインストーンを引き立てるのは、無彩色で無装飾のテキスタイル。プリントを多用した平面性だけでなく、アクセサリーのような立体感を取り入れ、ファッションを華やかに表現する才能は見事。

モデル着用アイテム:シャツ(Versace)
プリントされたブランドロゴが、シルクシフォンで仕立てたドレッシーなシャツを、ポップな表情も覗くアイテムへと変える。今、話題のクワイエットラグジュアリーは、シンプルさを信条とするプレミアムな服だが、ヴェルサーチェは、優美な布地をアルファベットでこれでもかと埋め尽くし、アグレッシブなデザインで時代へのアンチテーゼを示す。

モデル着用アイテム:Tシャツ(Rick Owens)
近年はSF的世界観の破天荒なフォルムで、人々を驚かせてきたリック オウエンス。リブ編みTシャツでは、特殊なカッティングは使わずに、素材が持つ特性を生かして、人間の体に備わっている造形美を引き出す。ストレッチ性があり、柔らかで薄手のコットンジャージが、バスト、ウエスト、左右の腕をなだらかになぞる。流麗で澱みのないシルエットの誕生だ。

モデル着用アイテム:トップス(Chopova Lowena)
ノスタルジックなチェック柄にフロック加工で表現した動物モチーフのグラフィック、トランプのスペード型の胸元のカッティングなど、細部まで遊び心に富む。細い袖口から波打つラッフルカフスからは、フェミニンテイストが滲み出している。メッシュ素材のセミシアトップスであっても、チョポヴァ ロウェナはガーリーでアヴァンギャルドな美学を形にする。

モデル着用アイテム:トップス(Ottolinger)
ヴィンテージ風な色味のチェック柄と、短い袖丈と着丈のコンパクトな形のミックスから、シックでスポーティな雰囲気が生まれて新鮮だ。この掛け合わせだけでも、十分に魅惑的なトップスだが、前衛を基本姿勢とするオットリンガーは満足しない。ヘムラインから滲み出すイエローが、チェックプリントを侵食し、生地の下に透ける体を染めていく。服の常識を捻り倒すデザインは、パンキッシュと呼ぶにふさわしい。
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新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している
- 文: Shigeaki Arai
- Date: August 9, 2023

