主役に躍り出るアウターたち
FRAME、Lemaire、LVIRが、
光り輝く一着へと変える

モードという同じステージに立っても、ヘッドライナーはいつも同じ顔ぶれだった。同じ服だというのに、どうして注目度が違うのか。奥歯を噛み締めてきた日々。しかし、時代が変わり、価値観が変わり、スポットライトを浴びる時が来た。ワークジャケットは文字通りの労働着からスタイルを作る一着となり、高まるサスティナビリティへの意識はフェイク レザーの魅力を発見し、カントリーなニットジャケットは父親の服みたいだという揶揄から、クールだけがファッションではないという美意識を築く。今日のヘッドライナーは、このアウターたちだ。

モデル着用アイテム:ジャケット(Frame)
かつて、ワークウェアは文字通り労働者の服だったが、今や日常を彩るアイテムだ。FRAMEはワークウェアが持つ泥臭さを消失させず、美しく更新する。いったいどのような手法で? 鍵はバランスだった。浅いVゾーンとコンパクトな衿、力強いステッチと無骨なパッチポケット、束縛しないボリューム、ワークウェア生来のディテールとフォルムは、モダンウェアのバランスに着地し、働く現代人の定番へ生まれ変わる。

モデル着用アイテム:ジャケット(LVIR)
急激な腰のシェイプと、花開く蕾のように広がる裾が描くコントラストは、1940年代に新時代を開拓したバー ジャケットを思わす。だが、この服には歴史の逸品と異なる点がある。それは袖と襟の幅だ。ワイドな衿と左右の袖は、ボディラインを想像させるカーブと対をなし、一着の中にフェミニンとマニッシュを交差させる。そして、フェイク ファーがサステナブルを訴える。価値観が拡張される2020年代を、LVIRがジャケットに現す。

モデル着用アイテム:ジャケット(Junya Watanabe)
「父が大切にしていた服。自分が父親となった今、その服を着て冬の街を娘と歩く」。未知の挿話を想像させるジャケットを構成するのは、カントリー柄、キルティング、ノーカラーという普遍の要素だ。ところが、Junya Watanabeがニットを身頃と一体化し、ポケットを浮かび上がらせた瞬間、ジャケットは架空の記憶を呼び起こすほどのダイナミズムを得る。ダッドなメンズウェアの真骨頂である。

モデル着用アイテム:コート(Lemaire)
オーソドックスなステンカラー コートに、Lemaireはささやかな仕掛けを施し、新たな息吹を吹き込む。まず、通常のステンカラー コートに比べポケット位置が高く、それがウエストラインを上げる効果を発揮する。そして、グレー ステッチがコットン ギャバジンに生む黒の濃淡との相乗で、シルエット全体がスマートに映る。仕上げは衿だ。やや幅広な衿が首元に存在感を添え、コートは新たなエッセンスを獲得する。

モデル着用アイテム:ジャケット(Y/Project)
袖と身頃のブラック&ブラウン、リブのブラック&イエローの色の組み合わせは、一見アメリカン トラッドを思わせる。とはいえ、このボンバージャケットをトラディショナルと呼ぶには違和感がある。インナーに見えた同色同素材の右身頃は、左身頃とジッパーと連結し、3つの身頃がひとつになっている。ツイストなフォルムを得意とするY/Projectは、服の常識を捻り、メンズウェアの伝統をモードへと書き換える。

モデル着用アイテム:コート(Opening Ceremony)
動物の柄に見える素材は、バージンウール混合のフリースである。以前のモードならば、リアルファーこそが本物であり、価値があった。しかし、時代は変わる。時代が変われば、本物は変わり、価値も変わる。野性味あふれるグラフィックを、ストリートなビッグシルエットに乗せ、カジュアルを代表する素材でクラシックなコートに仕立てる。Opening Ceremonyが、現代の本物を問う。
新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している
- 文: Shigeaki Arai
- Date: September 28, 2021

