デフトーンズの進化と実験

ホワイト ポニーからStray Rats x Heaven by Marc Jacobsまで、非凡なメタル グループは世代を超える

  • 文: Rebecca Storm

ハーリー・ウィアー(Harley Weir)の写真でモデル デビューしたM3GAN ミーガンは、デフトーンズ フーディを着ていた

Heaven by Marc Jacobs x Stray Rats x Deftonesのプロモーションに起用された愛すべき殺人サイボーグのポートレート写真は、異なる世界の不調和を体現している。不気味なイメージで、2023年の時代精神をいとも楽々と炙り出す。一方では時の限界からも空間の限界からも解放され、もう一方で「ノスタルジーを体験できるのに、ノスタルジーを感じる必要がある?」と反問する。何枚ものプラチナ ディスクとグラミー受賞歴のあるオルタナ メタルバンド、デフトーンズはそんなエネルギーの中核に在る。

1980年代にカリフォルニア州サクラメントで結成されたデフトーンズは、1990年代後半になって商業的な認知度と成功が育ち始めた。『Around the Fur』は1997年、『White Pony』は2000年にリリースされたスタジオ アルバムだ。ヘヴィーにひずんだギターの演奏、喉から絞り出すようなボーカルが主体のサウンドは間違いなくメタルの範疇に入るが、実験的なアプローチを好み、ステレオタイプなニューメタルからは距離を置いてきた。そうして生まれるサウンドは、メタルであると同程度にメロディーが際立つ。メタルやハードコアのジャンルでは男らしさと白人であることが顕著なテーマだが、デフトーンズのサウンドは激しく体に響くにもかかわらず、概してマッチョな観念が表れていない。時としてソフトなボーカルと歌詞を聴かせるリードシンガー、チノ・モレノ(Chino Moreno)の功績だ。モレノはシャーデー(Sade)に対する尊敬の念を明言しており、コンピレーション アルバムでは「No Ordinary Love」をカバーしているほど。傷つきやすさや優しささえも厭わないメタルであり、おそらくそんなソフトなエッジが幅広い聴衆を魅了する要因だろう。

画像提供:Patrick Ford/Redferns via Getty Images。冒頭の画像:画像提供 Heaven by Marc Jacobs。写真 Harley Weir

デフトーンズが、時代を背負う新世代との関わりを持ち続けているのも納得できる。商業的に最大の成功を収めた『White Pony』は、もっともソフトな印象からY2Kと結びつける人も多いが、以後も曲作りと実験とレコーディングはとどまることがない。世代を超える魅力は、Heaven by Marc Jacobsの精神と共通だ。アイリーン・カーター(Eileen Cartter)が『GQ』に書いているように、Heaven by Marc Jacobsは「X世代、ミレニアル世代、Z世代の溝を埋める型破りなユートピア的橋渡し」であり、「世代間に共通のノスタルジーを喚起する強力なシンボル」であるからだ。

Heaven by Marc Jacobsは、2月下旬のInstagramで、果てしなく続くソファに多数のインフルエンサーやモデルが居並ぶカルーセル投稿を行なっている。水原希子イアン・イザイア(Ian Isaiah)サンディー・リアン(Sandy Liang)アレイリ・メイ(Aleali May)アナ・スイ(Anna Sui)メル・オッテンバーグ(Mel Ottenberg)のほか、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)自身の姿もあり、よく見ればデフトーンズのグッズらしきものを着ている。キャプションは3月3日のHeaven新シーズンを予告し、翌日にはHeaven x Stray Rats x Deftonesのコラボが発表されて、Shove ItチョーカーとAround the Furメッシュ ジャージが紹介された。

「アヴァ・ニルイ(Ava Nirui)も私も大好きなバンドと一緒に仕事ができるチャンスは、もうそれだけでインスピレーションよ」と語るのはStray Rats創設者のジュリアン・コンスエグラ(Julian Consuegra)だ。「私たちの役割は、従来の枠をあまり壊しすぎない範囲で、バンドグッズをグレードアップすること」。ロサンゼルスのHeavenストアで発表されたカプセルコレクションには、デフトーンズ関連のレアアイテムや身の回り品も展示された。また、ブルックリンのミュージック ホール オブ ウィリアムズバーグで無料のデフトーンズ コンサートが開催され、長年のファンにとっては、身近な会場でバンドを見ることができる夢のような機会だった。

だが過剰な飽和、著しく短縮された集中力の持続、TikTokの時代には、何であれ若者世代を古いものに引き寄せる影響力に対して、必ずと言っていいほど懐疑的な意見が出される。デフトーンズも例外ではない。もはや時代は2023年。誰でも「好きなものが好き」でいいはずだが、実体験よりアルゴリズムによって嗜好がいとも簡単に決定される状況では、批判にも正しい部分がある。おそらく、Z世代の心を虜にしたのがデフトーンズのグラミー受賞曲「Elite」でないことは確かだろう。その代わり、「Cherry Waves」「Change (in the House of Flies)」「Be Quiet and Drive」などのナイトコア リミックスは、なんとか自分の人生に意味を与えようと躍起のユーザーたちがTikTokへ投稿した、夥しい数の#準備動画や#ビフォーアフター動画のサウンドトラックに使われている。ミレニアル世代がヘアブラシをマイクに見立てて口パクしたり、鏡の前で踊ったりしたのと同じ行為だ。ただミレニアル世代の場合は自分だけの行為であったのに対し、TikTokを得たZ世代には視聴者がいる。自分や自分のコンテンツに関心を持ち、転載したり、彼らの動画に埋め込んだりしてくれるかもしれない。テンポやピッチを上げてヘヴィーなメタルの要素を抑えたサウンドは、もっとラウドな曲を聴き始めるきっかけになり、パワフルな魅力溢れる原曲に行き着くこともある。

この説はある程度正しいとコンスエグラは同意するが、「それはZ世代とソーシャルメディアだけじゃない」と言う。デフトーンズは「サウンドと歌詞の両方で聴かせる。チルとサクラメントとスケートとパンクとロッカーを混ぜ合わせたスタイルで、ビジュアルも盛り上がるライブ パフォーマンスをする。一貫して優れた曲を活動的にリリースしていて、絶対に変な罠にはまらない。そういう全部から時の試練に負けない何か」を作り出し、ミレニアル世代の精神と美学も明確に表現している。小手先のからくりに屈することなく、メタルのステレオタイプな定義に固執して疲弊することがない。「デフトーンズは時代を形作ることに貢献したのよ。若い世代にはそれが理解できるんだと思う」。アメリカ同時多発テロ後の集団心理がをポップパンクを求めたように、パンデミック後の今、音楽であれファッションであれ、若干ヘヴィーなもので不安を和らげようとする傾向は自然の成り行きだろう。

今年の3月2日、デフトーンズはミュージック ホール オブ ウィリアムズバーグで「Mascara」 を演奏した。前回の2015年から実に8年ぶりだ。フィードに登場するホワイト ポニーのタトゥーが急増してうんざりした人もいるだろうが、あらゆるファンに喜ばれるのがノスタルジー マーケティングの長所だ。

「コンサートに来てる特定の年齢層や特定の個人だけじゃない。大勢のロッカーや音楽界の現象が、それぞれ、デフトーンズのサウンドをすごく直接的に体験してるのよ」とコンスエグラは語る。デフトーンズで変わらないことがあるとすれば、それは進化と実験を通じた聴き手との繋がりだ。いちばん有名なシングル「Change (in the House of Flies)」は2000年のリリースなのに、23年後の今もヒットする。曲名だけを見ても、ウェルネスのすすめ、非永続性にまつわるディスクール、執着を断ち切る方法を説く自己啓発本と並んで、現代文化用語の最先端を行く。日和見ファンは来ては去る。だがデフトーンズは、永久に、循環するトレンドを超越し続けるだろう。

画像提供:Mick Hutson/Redferns via Getty Images

  • 文: Rebecca Storm
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: April 10, 2023