1XBLUE的
マインドセット

テニスコートからクラブへ、
ロンドン デザイナーの描く
将来は大きく広がる

  • インタビュー: Erika Houle
  • 写真: Nancy Rose

2匹のネコと一緒に自宅のソファからビデオ通話に応じたロイス・ソーンダーズ(Lois Saunders)は、最近ハマっている趣味を教えてくれた。撮影場所の下見、俗にいう「ロケハン」だ。数か月前から、地元の生地店を見てまわったり大好きな90年代の映画からプリントを考え出したりする合間に、現在25歳の1XBLUEのデザイナーはイースト ロンドンを自転車で走り、絵になる場所をメモしている。先日の撮影場所に選んだのは、石ころだらけの廃道と人けのないテニスクラブだ。許可という制度があったことを思い出したのは、真っ青なコートで撮影していたとき。今やシグネチャとなった大胆なグラフィックのセットでポーズをとっていると、憤慨した守衛がゴルフカートでやって来て、ぶっきらぼうに即刻撮影の中止を命じた。許可を求めるより許しを請うほうが得策なケースだ。どうせ、もう何枚かは撮影済みなんだし。「人って、親切になれることを忘れるときがあるんだよね」とソーンダーズは言う。

ソーンダーズのデザインは、彼女自身が持っている寛容、遊び心、他のクリエイターとの協同作業に向ける情熱が活力の源だ。特に注目を集めるアイテムは、フットボールのゴールキーパー用手袋の転用。『ロミオ&ジュリエット』や『バスケットボール ダイアリーズ』など、子供心に胸を焦がした若きレオ様に捧げる賛美。そして、体を走るおもしろい「通り道」とソーンダーズが表現する、アシンメトリーなカットアウトやシルエット。最初はアップサイクルした1点物をDepopで売っているだけだったが、瞬く間に人気が出て、1XGOLDや1XREWORKなど、別ラインも派生した。マンチェスター スクール オブ アートに在学中、パンデミック後は在宅授業、同時にブランド立ち上げ、と二足の草鞋で奮闘し、2020年に無事修了。その後は、ファッション業界で引っ張りだこの人材とコラボレーションしている。写真家コナー・カニンガム(Conor Cunningham)と一緒にキャンペーンから誕生させた「Mescondi」セットは、最新コレクションの人気商品だ。同じく写真家ヒューゴ・コンテ(Hugo Comte)とはDear Nikitaカプセル コレクションを作った。スタイリストのヴェネダ・カーター(Veneda Carter)からは、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)に着せる全身カモフラージュ ルックを特注された。

「生地を注文するときは、まだ使い道がはっきりしてないの」とソーンダーズは言う。「マネキンに掛けてみてから、配置を決める」。自分の体を真っ赤に塗ってキャンバスに押し付けた プリントについて尋ねると、カメラを回転させ、色々なバリエーションをぶら下げた壁を見せてくれる。「服に仕立てると、なんだかベーコンみたいに見えそうだから、あのアイデアは取り止め(笑)」。続けて、実験することが大好きで、美術館やアート ギャラリーでアイデアを探すことなどを、率直に語った。

Lois 着用アイテムはすべて1XBLUE

エリカ・フウル(Erika Houle)

ロイス・ソーンダーズ(Lois Saunders)

エリカ・フウル:両親がふたりともクリエイティブな業界の人で、あなたもお母さんと一緒にファッション ショーへ行きながら大きくなったそうね。その頃好きだったデザイナーやトレンド、覚えてる?

ロイス・ソーンダーズ:母さんはヘア スタイリスト。父さんはとっても才能があるすばらしいアーティストで、宮殿の壁画やすごくきれいな天井を手掛けてる。歴史上のアートの美しさを教えてくれたり、ファッションの歴史や過去のデザイナーを勉強するように勧めたのも父さんよ。私もすごく大切なことだと思った。当時はそれほど良さを理解できてなかったかもしれないけど、 今の私を作ってることは間違いないね。

母さんは、毎年欠かさず、グラデュエイト ファッション ウィークへ連れていってくれた。母さん自身も私と同じくらい楽しみにしてたけど、住んでたのはロンドンじゃないから、ロンドンまで出かけてありとあらゆる創作を体験してくるのはビッグイベントよ。私は小さい頃からずっと服を作りたかったような気がする。母さんが言うには、7歳頃からだって。我ながら可愛いよね。デザイナーでは、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)のファンが多いでしょ。私の母さんも彼に関する本を、本当、山のようにくれたわ。ヴィクトリア&アルバート博物館でやった『Savage Beauty』展も見に行って、感動したな。マックイーンについてはかなり詳しかったし、彼のデザインにも惚れ惚れした。どれもきれいで、かつ、それまでのどんなデザインとも違ってたもの。そのマックイーンを教えてくれたのが母さん。

時と共に好みは変化した?

大きくなったのはカンタベリーという街で、着たいものを着て自分を表現するのはちょっと怖かった。そういう感じの街じゃなかったから。クリエイティブ系のカレッジに行ってからは、新しい友達もできて、自分のスタイルを出すことに少しオープンになったわ。私のスタイルを変えたのは、絶対、アートの影響だな。大胆なプリントやカラフルなものが好き。今着てるこれは彼氏のフーディよ。すごくカラフルなのが気に入ってる。あとはジーンズばっかり。

1XBLUEというブランド名を選んだ理由は?

1XBLUEを始める2年前から、兄のジャック(Jack)と何か一緒にやりたいねって話してたの。私が名前を決めることになったんだけど、1XBLUEにしたのは、それまでに私が作ったものを箇条書きにしたノートがあって、その中に、Tシャツだったか鉛筆だったか忘れたけど、何かブルーのものが1つっていう「1 x blue」の書き込みがあったから(笑)。そこから色々と考えたけど、結局最後は1XBLUEに落ち着いたわけ。で、少し前に一緒に1XBLUEをやり始めて、ジャックもスタッフとして働いてる。一緒に仕事をするようになって、すごく近い存在になったわ。

ブランドを展開するうえで、他にはどんな人を念頭に置いてる? 友達とか、お客様とか、夢のコラボ パートナーとか?

最初は、ロンドンに来たばかりでほとんど知り合いもいなかったけど、同じように自分のブランドを持ってる子と知り合いになって、スタジオをシェアすることになったの。彼女のブランドのほうがもう少し形になってたし、内容も全く違ってた。当時の私はアップサイクルだけで、自分のデザインはやってなかったから、すごく参考になったわ。その後はふたりともブランドが成長して、別々のスタジオへ移ったけど、彼女からは色んなことを勉強させてもらった。

この前のコレクションはどこからアイデアが生まれたの?

私、美術館へ行ったり、アーカイブから素敵なイメージを探すのが大好きなのよ。前回はたくさんリサーチして、首にロザリオをかけた彫像の画像を見つけたから、それを色々に編集して、完成したイメージを生地にしたの。

「Mescondi」セットのデザインは、ブランドを作った後の早い段階で思いついてた。フットボールのマフラーやゴールキーパーの手袋に関連したデザインを沢山やってた頃。そうやって頑張った結果をキャンペーンだけに使うのは、スクリーン上の画像として残るだけで、ちょっともったいない気がするのよ。だから生地にプリントして、それで何かを作りたかったの。そこでイメージを考えてコラージュしたら、すごく可愛いセットができあがった。コナーにも1セット送ったけど、気に入ってくれてて嬉しいわ。

あのコレクションにあったブルーのストライプのワンピースは、今住んでるハックニーの近所のお店で生地を見つけたの。一度入荷したらお終い、売り切れたら二度と手に入らないっていう大きな倉庫みたいな店で、数えきれないくらい反物があるのよ。中へ入るとものすごくワクワクして、通路の両側にある生地を片っ端から触って、何に使えそうか想像するわ。あのブルーの生地はシースルーになってる部分があって、すごく目についた。とても伸縮性があるから、ワンピースに最適だと思ったし。私ならビーチへ着て行くな。クラブへ行くにもいいよね。形はさくっとベーシックにしたけど、すごく満足できる仕上がりになった。

古い映画も私のデザインにものすごく影響してる。今も『ショーガール』のことを考え中。何通りかポスターがあるけど、その中の、女優さんの顔があって、その下に体があって、その下に足が1本だけっていうバージョン。

服は、キャラクターを演じるための手段だと思う?

1XBLUEのほとんどは、私と同じような人たちが選ぶ服じゃないかなと思ってる。だけど他のシリーズもあって、例えば1XGOLDにはフェアリー スーツがある。色んな私を想像するの。パワフルで強く感じたい日は、スーツとか、かっちりしたものを選ぶし、クラブへ行くんだったら、気分もスタイルもクールがいいよね。

ハロウィーンには凝るほう? 毎年仮装する?

ハロウィーン、大好き。あなたは今年何になるか、決めた?

まだ決めてない。大抵、ぎりぎり最後になって、間に合わせで済ませるから。

私、去年どうするつもりだったか忘れたけど、何だったにせよ、当日になって急遽取り止め。ゾンビに仮装する友達が準備してた体に巻き付けるテープを見て、「ねぇねぇ、余ってない?」って。2人組のゾンビはちょっとした見ものだったよ。今年は「『ベイウォッチ』のパメラ・アンダーソン(Pamela Anderson)にしたら?」ってメッセージが来てたから、それで決まりかな。

あなたの仕事に対して、ソーシャルメディアはどういう役割を果たしてる?

クリエイティブな画像を掲載したいし、その良し悪しをソーシャルメディアが決めるべきじゃないと思う。現実にはそうだと心の中で感じてるくせに、そう感じたくないって思うのは、めちゃくちゃ鬱陶しいわ。リサイクルをやってた頃は今よりはるかにソーシャルメディアを楽しんでたけど、自分のデザインをやってる今は自分のブランドのほうが大事よ。もっと私個人に繋がってるからね。去年キム・カーダシアンからデザインを依頼されたのは、ヴェネダが私のInstagramを目にしたからだし、ヒューゴ・コンテとDear Nikitaでコラボしたのも、彼がInstagramで私を見つけたからだから、クリエイターを結びつけるというソーシャルメディアの働きはすごくいいと思うけど。

「best tits on Instagram(Instagramで最高のおっぱい)」Tシャツについて話してくれる?

みんなが私にそう言うから(笑)! ある人に「Tシャツにしたらいいんじゃない?」って言われたの。

キラキラにして。

やるっきゃない、って感じ。「best ass on Instagram(Instagramで最高のお尻)」のホットパンツも、もうすぐサンプルが来るはずよ。すごく面白いと思う。ああいうセクシャリティは、人によって受け取り方がすごく違うじゃない? 個人的には、おっぱいを性的なものとは思ってないの。「これが私の体です」ってだけ。体の外見で性の対象にされたくないわ。

じゃあ、「セクシー」って言われる服を作るのはどういうこと?

自分が感じたいように感じればいいんじゃない? さっき、キャラクターを演じるって話が出たでしょ。その日その時の気分次第よ。

どんなルックでも全体を仕上げてくれるアクセサリーって、ある?

素敵なイヤリング。イサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)が最近デザインしたブル フープを手に入れたけど、どんな服にでも間違いなく似合う。

彼女と仕事をしたこと、ある?

一度もないのよ。ぜひやってみたいわ。彼女のメイクも大好きだし、いつか一緒にやれる日が来ると思ってる。

他のデザイナーから受けた、これまでで最高のアドバイスは?

クリエイティブな人たちは、創作ばかりに夢中になって、ビジネスとしてやっていくにはビジネスマインドが必要なのを忘れてると思う。以前スタジオをシェアしてた親友が繰り返し教えてくれたことだけど、まず何よりもやらなきゃいけないのは税金の申告。長い間ほっぽらかしてると、滞納額がすごいことになって、経済的に立ち行かなくなる恐れもある。

色々と体験してみて、学校がもっと教えてくれれば良かったのにと思うことはある?

大学は楽しくて大好きだったけど、誰かのために働く準備をさせるだけで、自分の道を切り拓く指導をされないのが、とっても変だと思った。私の場合、学校生活の最初からいくつか研修をやってみて、自分でビジネスをやりたいってことがすぐにわかったの。だからコロナのロックダウンの直前に自分のブランドをスタートしたんだけど、学校は最終年度が始まったばっかりで、最後の単位を貰うためにやらなきゃいけないことがまだまだたくさんあったわ。でもロックダウンでみんな自宅へ戻っちゃったし、私、全然やる気がなくなったの。とにかく出来たてのブランドが大切で、そっちにばっかり全力集中。先生とは週に1回面談があったから、自分の気持ちやブランドがすごくうまくいってることを話したわ。結局、学校のプロジェクトより、ブランドで点数を貰えたんじゃないかな。学校のプロジェクトもきちんと仕上げたけど、良い評価を貰えて感謝したわ。私のやってることを本当に理解して、そういう具合に応援してくれる先生だったのは、すごくラッキーだった。

今後成長していく上で、何をいちばん中心に考えてる?

みんなが自由に私に会いに来られて、ブランドのことをもう少し知ってもらったり、直接コミュニケーションできるようになったら、いろんなことをやりたい。現実に体験するって、とても大切だと思うから。それからファッション ショーもやりたい。Masha Popovaのショーを観て、すごく刺激されたの。他の人たちもみんな大興奮。資金繰りは兄さんの担当だから、すぐ電話して、「来年の今頃ショーをやりたい」って言っといたわ。

1XBLUEで、今いちばん誇りに思ってることは?

自分のブランドがSSENSEに掲載されるなんて、すごいことよ。大きな目標だったんだから。大学時代、SSENSEに出てるブランドは尊敬の的で、私も仲間入りしたいと切実に願ってたけど、これほど早く実現するとは思ってもみなかった。

SSENSEのバイイング チームに問い合わせたの?

向こうから連絡を貰った。

(歓声)

リテールの仕組みがわかってなかったから、ちょっと慌てて、見てもらうデザインをまとめるのに何か月かかかったわ。とにかく上手く話がまとまってサイトに最初のコレクションが掲載されたときは、もう最高。ローンチされた時刻には外出中だったけど、その夜はずっとSSENSEのサイトのことばっかり喋ってた。

Erika Houleは_SSENSE_のシニア エディター。ロサンゼルス在住

  • インタビュー: Erika Houle
  • 写真: Nancy Rose
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: November 4, 2022