2022年秋冬
トレンド レポート

次シーズンと未来の
スタイル ガイド

  • 文: SSENSE Editors
  • アートワーク: Tobin Reid

瞬く間に生まれた流行があっという間に消えて行くスピードを指して、以前は、トレンド サイクルが、台風のようなトレンド サイクロンになったと言われたが、2022年はトレンド旋風に突入したと言って差し支えないだろう。過去2年というもの、オンラインで過ごす絶望的な時間が増大した結果、誤った情報で紹介される過去のファッション写真、怪しい出所から引き合いにされるヴィンテージが復活。混乱して予想できない将来を前に、何であれ変化しない古いものへのノスタルジーの報復が始まることになった。この場合、「古いもの」には「それほど古くない近過去のもの」も含まれる。いずれにせよ、何が流行で何が廃れたか、何が最初で誰の着こなしが良かったか、などを考えても意味はない。おそらく、意味を持つほど長くは続かないはずだ。私たちの手持ちの服ひいては外の世界へ着て行く衣裳には、非常に複雑にさまざまな関連性が絡み合って、もはや「スタイル」を判別することすら難しい。でも多分、それこそが2022年トレンドの基調なのだろう。要は、自分の気分がいいものを着ること。では、2022年秋冬のトレンドを予想してみよう。

花嫁カラーのホワイト

穢れなく清らか? 何かをこぼしたら惨事? それでもなお白で装う魅力とは何なのか、本当のところはわからない。黄色の温かい羊水から出てきた後、最初に体を包まれた色が白だったからかもしれない。始まりと祝い事に結びついて、白が特別な日のための色になったのかもしれない。物事の「最初」を白で祝う健全なる慣習が永続している背景には、西欧世界の花嫁のほとんどが白を選ぶ事実が非常に大きな役割を果たしている。だが白が儀式の色、目立つための色だとしても、Jacquemusに始まってThe RowAREA、果てはペチコートにかけては史上無敵のSimone Rochaに至るまで、デザイナーたちがこぞって2022年秋冬シーズンに続々と婚礼ルックを送り出しているのは、どうしたことだろう? それは、伝統的な妻のコスプレであり、禁欲ではないにせよ純潔を表示する行為だ。周囲に溶け込むこと、平凡であることへの嫌悪だ。その反面、花嫁になることへの反感でもある。北米での結婚率が着実に低下し続けるにつれ、独身者はデート アプリから離れて自分自身に向き合い、自立と独身主義、そして従来とは違う目的で着る白を歓迎している。かくして、結婚が万人向きではなくても、2022年秋冬シーズンのクローゼットは花嫁カラーになる。一方で、例えばスタイリストのレイチェル・ロジャース(Rachel Rodgers)のような花嫁もいる。彼女の婚礼衣裳は晴れの日にふさわしく完璧であったと同時に、花嫁が着たいものと着たくないものの区別が鉄壁ではないことを教えてくれた。9月以降はしばらく、白のトレンドが続くと予想するにとどめておこう。

スクエア トゥ

SSENSEのエディトリアルは、不格好な靴を取りあげたことがある。Triple S、New Balance、UGGの波が押し寄せた過去もあるのだ。その上、この3年間には多くの出来事が生じて、誰もが少しばかりくたびれた気分になっている。今でもファッションにおける「挑戦」の役割は残っているものの、最近では、何かしらもっと真面目な雰囲気が漂う。その点、嵩張ったスクエア トゥの靴は「大人」だから、大ぶりなスニーカーがロックダウン後に遂げる進化形として、大いに頷ける。Martine Roseはスクエア トゥの女王だ。モルドバ発ブランドFidan Novruzovaは、まさに今シーズンにふさわしいスクエア トゥのブーツをデザインしている。押しつぶしたFryeブーツ、ひねりを加えた乗馬靴、繰り返し馬に踏みつけられたように誇張された爪先、と形容すればいいだろうか。そのシルエットには真似のできない力強さがあり、他人の意見など気にもかけない自信が漲っている。もう少し控え目なスクエア トゥをお求めなら、Lemaireのバレエシューズはどうだろう。ヒールのあるスクエア トゥのローファーをご希望なら、Miistaが正解。この秋は、スクエアのバリエーションで足元を固めよう。間違っても靴箱の中で眠らせてはいけない。

#gentleminions メンズウェア

言うまでもなく、朝起きたとき頭に浮かんでいるのが上出来のミームだ。『ミニオンズ』シリーズの最新作「ミニオンズ フィーバー」が公開されると、怪盗グルーに引っ掛けて、「街で軽蔑されても、俺たちの金はグルー」というナンセンスなフレーズが作られたが、これが頭から離れない。どうしようもなく頭の中でリピートされる歌のサビと同じだ。そして、TikTokやTwitterには、#gentleminionsのハッシュタグ付きで、「ミニオンズ フィーバー」を観に映画館へ向かうの少年たちの画像が溢れた。普段なら誕生日のどんちゃん騒ぎのために誰かの家へ集まるようなティーンエイジャーたちが、揃いも揃ってスーツと革靴というメンズウェアを着用し、大挙して映画館へ押し寄せたのである。

スニーカーとストリートウェアの後には何が来るのか? 出番を待っているのは、かつて富と上品さを象徴したアイテムだ。2022年秋冬シーズンのメンズウェア コレクションは、洗練されたテーラリングが目を引く。なかでも胸をときめかせるのはBottega VenetaBalenciagaY/Projectなど。シャーベットカラーの変わり種もあるが、スーツはあくまでエレガントだ。さて、ズボンの裾幅はどれくらい広くなるのか? ジャケットの肩幅は? 心配無用。怪盗グルーならぬ、ファッション グルが知っているに違いない。

ルビー レッド

ネオン、パステル、タイダイが前シーズンを席巻したごとく、2022年秋冬に選ばれるのはジュエリー カラーだ。アクセントというより主張や表現として使われ、特に、私たちの心をとらえる魅力を放ちながらもカジュアルな雰囲気のある、古典的なルビー レッドの鮮烈な色合いが新たな「ニュートラル カラー」として際立つ。

全米宝石学会によると、「感情面を支える」のがルビーの最大のパワーらしい。であれば、デザイナーたちがルビーの効力を思い起こし、頭の天辺から足の爪先までレッドのルックをデザインしているのも頷ける。かつて『魔法の国のオズ』では、魔力を持つ赤いルビーの靴がドロシーをカンザスの灰色の世界へ連れ戻した。今シーズンは、ルビー レッドが彼方の地の魅力を連れてくる。インテリアを越えて、さらに広く押し寄せる。なんせ、ミラノ デザイン ウィークでVersace Homeが教えてくれた最新のアドバイスは、「ペイント イット レッド」なのだから。

古来から存在するカラーであればこそ、ルビー レッドは新しい「ニュートラル」と呼ぶにふさわしい。ルビー レッドは、その日その日で、魅惑やロマンス、激しい怒りや赤信号を表す。Bottega Venetaのランウェイでは、さまざまにデザインされた光沢のある真紅のトラウザーズが登場した。ステージを下りたロックスターを思わせるが、マッチしたブレザーを合わせると、たちまちステージ衣装に変身だ。根強い人気を誇るM. A. Cの「Ruby Woo」は、個性を主張するマットなリップスティックだが、真紅の唇を誇示することには否定しようのない効果がある。The Rowのレッドのバッグとバレエシューズは、もうひとつの永遠のニュートラル カラー「デニム ブルー」を一層素敵に見せる。Craig Greenは、スクエアなカットと丸みを帯びたカットを組合せるクッションカットを書き換えて、大胆なレッドのジャケット、パンツ、フットウェアをデザインしている。これらから引き出せる結論は? 自分が自分の宝石になる。この一言に尽きる。

スノーボーダー

トレンドがアマチュア スポーツの領域へ足を踏み入れたら、「かっこいい」から「ダサい」へ転落するのに時間はかからない。スケートもサーフィンもまったくできないくせに、あたかもスケーターやサーファーのごとく装うほど情けないものはない。それでもなお、SSENSEエディトリアル チームはスノーボーダーのトレンドを後押しする。なぜか? スケーターやサーファーのフリをするのではなく、特殊なスタイリングのヒントを活かすためだ。価値観や様式を拝借すると言えばいいだろうか。自然界の現象に負けずに自由な体の動きを保つためには、普通は考えないレイヤードが必要とされる。例えば、フーディの上に長袖のTシャツ、パンツの上にショートパンツ、ビーニーとベースボールキャップの合体。そんな自由なエネルギーが、MarniDries Van NotenCollina StradaStory mfg.などのデザインに注入されている。過去数年凍てつく寒さに私たちは活動を制限されたが、大切なのは、これ以上寒さに邪魔をさせないことだ。必要とあれば、SSENSEではスノーボードも販売している。ご参考まで。

グランジ— 1990年代— 2000年代、そしてオバマコア時代の幕開け

過去2シーズンのファッションは、21世紀を迎えた頃の楽観主義を反映して、スマイリーフェイス、短い裾、キャンディカラーに支配された。ブランドは総出で、パリス・ヒルトン(Paris Hilton)とニコール・リッチー(Nicole Richie)の『シンプルライフ』、Depopでの掘り出し物、Cobra Snakeの写真、タガの外れた2000年代のポップな波に乗った。だが、まだ古いとも言えないものへのノスタルジーは、一体何なのだろう?

2000年代へのノスタルジーでいちばん驚くのは、その直前の1990年代に対する愛着と非常に似通っていることだ。ほぼ20年前への憧れが、そもそも当時の記憶すらないであろう若い世代の美学に押し寄せている。そこで、ひとつの数式に思い至る。

現在の年ー成長期を経てハイスクールを卒業するまでの年数=ノスタルジーが優勢になる年

転換するはずだ。新たな対象は2010年代。2000年代と同じように楽観的でありつつも、経済に暗雲が立ち込め、質実を旨としたスタイルのオバマ政権時代は、どんな形で復活するのだろう? 『Vogue』のページに、セルビッジ デニムや実用本位で丈夫な「一生もの」のメンズウェアが復活するのだろうか? TikTok愛好者はニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)がクリエイティブ ディレクターだった頃のBalenciagaを掲げ始めるのだろうか? いちばん恐ろしいのはスキニー ジーンズが復活する可能性だ。オバマコアの幕開けが何をもたらすか、様子を見ようではないか。

グレン・マーティンス

2018年のエディトリアルでY/Projectのデザイナー、グレン・マーティンス(Glenn Martens)はファッションとの繋がりを次のように説明した。「人が服を所有して、それを着て幸せなら、その服と人は繋がっている。僕の祖母は、僕がクリスマスにプレゼントしたY/Projectのコートを気に入って、愛用してくれてる。僕の友人も似たようなコートを持ってる。そういうふうに、ジェンダーや年齢に関係なく上手く機能する服なら、そのファッションには関連性が備わってるんだ」。あれから5年。以前にもまして人とファッションの繋がりを作り出すマーティンスは、新任クリエイティブ ディレクターとして、1990年代から2000年代初頭にかけてカルト的な人気を誇ったデニム ブランドDieselを復活させると同時に、Y/Projectでも常に待望されるコレクションのデザインを続けている。もともと規則に従うことが嫌いだから、今も昔も、直感こそ最善のガイドであることを証明している。デザインで何よりも重要視する構築の過程は、デニムに当てはめられると、ひねりのあるスタイルとなって立ち現れる。上述した「グランジ— 2000年代」に完璧に当てはまるではないか。今年もっとも優秀なクリエイティブ ディレクターとして出現したマーティンスの今後が、大いに期待される。

  • 文: SSENSE Editors
  • アートワーク: Tobin Reid
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: September 9, 2022