スクリーンの内と外:
クロエ・セヴィニーの
ロールプレイング
30年にわたって
独自の立ち位置を貫き、
アカデミー賞の陰で涙し、
さまざまな映画人と関わった
俳優の仕事と人生
- インタビュー: Thora Siemsen
- 写真: Brianna Capozzi / REP

クロエ・セヴィニー(Chloë Sevigny)は30歳までに子供を作りたいと言っていたが、その頃演じていたのは、親が気を揉むようなキャラクターばかりだった。映画デビューを飾った『キッズ』では、HIVに感染したティーンエージャーのジェニー。1996年の『トゥリーズ ラウンジ』では、『ゴースト ワールド』に出演する5年前の怪優スティーヴ・ブシェミ(Steve Buscemi)を家に連れてくる女学生。実話に基づいた『ボーイズ ドント クライ』では、カミングアウトせずに男性として振る舞っていたために殺された主人公のガールフレンド役で、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。25歳で初めて母親を演じたのが『マップ オブ ザ ワールド』(1999年)。不幸な事故から家庭も人生も打ち砕かれた主人公にさらに児童虐待の濡れ衣を着せた少年の母親であり、自分自身も問題を抱えた若い女性の役だった。私生活で、アート ディレクターである夫シニサ・マコヴィッチ(Siniša Mačković)とのあいだに第一子ヴァンジャ(Vanja)が誕生したとき、セヴィニーは45歳になっていた。「今頃になって赤ちゃんが生まれるなんてね」と、長年の親友ナターシャ・リオン(Natasha Lyonne)は昨年ニューヨーク タイムズの『T マガジン』に語っている。「だってクロエはすごく母性的なのよ。多分みんなわかってないだろうけど、彼女の母性の恩恵をこうむってる仲間も多いわ」。ふたりが親しくなったのは、『マップ オブ ザ ワールド』が撮影されている頃だった。リオンが共同制作と出演に名を連ねるテレビ シリーズ『ロシアン ドール』シーズン2では、リオンが突然過去を思い出すフラッシュバックのシーンで、セヴィニーが母親として現れる。

Chloë 着用アイテム:マフラー(Y/Project)、ブーツ(ALAÏA) 冒頭の画像 Chloë 着用アイテム:ボディスーツ(ALAÏA)

Chloë 着用アイテム:フーディ(Nodress)、レギンス(TheOpen Product)
47歳になったセヴィニーが現実で演じるのは、「自分自身」という、生まれながらの役でしかありえない。1990年代初頭に時代の象徴として一躍名を馳せて以来、セヴィニーはいつも大スターになることを警戒してきたように思える。今もハリウッドのゲームには参加しないし、『マザー!』の主演女優ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)を「鬱陶しい」と形容してニュース種になる。30年近く俳優業を続けて、今なお、インディー映画の寵児的オーラを失っていないのだ。ひとつには選択するプロジェクトのせいだし、もうひとつには、ロサンゼルスに対する曖昧な態度のせいでもある。『アメリカン ホラー ストーリー』や『ビッグ ラブ』など、テレビ シリーズの撮影中は断続的にロサンゼルスに滞在したけれど、コネチカット州ダリエン出身のセヴィニーはニューヨークでの生活を選んだ。そして、大袈裟に芝居がかった大作に出演せず、ニューヨークのダウンタウンで存在感を発揮してきたことは周知の事実だ。
セヴィニーの仕事のやり方は寛容で、自分以外の俳優を引きたてる特別な才能がある。オリヴィエ・アサイヤス(Olivier Assayas)、ヴェルナー・ヘルツォーク(Werner Herzog)、ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)、ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier)、ホイット・スティルマン(Whit Stillman)など、世界でもっとも愛されるアート シアター系映像作家の多くと仕事をしてきたが、誠意あるパートナーとしての協同作業を何よりも優先し、大切だと思うプロジェクトのためには、虚栄心も含め、私的な犠牲を厭わない。先頃発表されたガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)監督のテレビ シリーズ『Feud: Capote’s Women』では、ナオミ・ワッツ(Naomi Watts)と共演して、トルーマン・カポーティ(Truman Capote)が「スワン」と呼んだ知性と教養の女性を演じる。だがその前に、カミーユ・デアンジェリス(Camille DeAngelis)の小説を元にした、ルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)監督作『Bones and All』での「非常に重要な脇役」が待っている。グァダニーノ作品に出演するのは、HBO局シリーズ『僕らのままで』以来だ。このときは、米軍の司令官であり、パートナーは同性、父親が誰かを息子に教えない、という複雑な母親役を演じた。公開が迫る『Bones and All』での役について、セヴィニーはプロビンスタウンからの電話でこう語った。「最高の母親とは言えないけど、息子を守る唯一の方法は、母である自分が決断することだと思ってる」
イタリアからZoomに応じたグァダニーノは、以前からずっとセヴィニーの大ファンだと言う。「クロエとはできるだけ多くの仕事をしたいね。彼女は素晴らしいユーモアのセンスがあるし、周囲の空気を読み取れる。俳優として立派な仕事をしてきただけじゃなく、独自のキャリアを築いてると思うよ。非常に知性的で、世慣れた人生観の持ち主だ」。『僕らのままで』では、「色んな矛盾を抱えたキャラクターを作り上げたと同時に、そういう矛盾からセンセーショナルな方向へ進む代わりに、キャラクターの人間性の深部を描き出してみせた」とも付け加える。
実際の事件に基づいて制作され、今年放映されたHulu局ミニシリーズ『The Girl From Plainville』では、セヴィニーの演技を通してより大きな物語が語られ、微妙なニュアンスがさまざまに浮かび上がってくる。演じたのは、18歳の少年コンラッド・ロイ(Conrad Roy)の母親リン・ロイ(Lynn Roy)だ。コンラッドは2014年夏にマサチューセッツ州で自らの命を絶ったが、スマートフォンでの会話やメッセージを通じて自殺を唆したとして、ミシェル・カーター(Michelle Carter)という女性が過失致死罪に問われた。セヴィニーがリン・ロイ役をやらずにはいられない気持ちになったのは、2019年のHBO局ドキュメンタリー『 I Love You, Now Die: The Commonwealth v. Michelle Carter』で実在のリン・ロイを観たからだ。そのときの印象をこう語っている。「彼女はとてもしっかりした感じであの悲劇を語ってたの。自分と自分の家族に起こったことを話す口調にユーモアやスピリチュアリティがあったし、ミシェルに対する赦しもあった。リン・ロイのような女性の本質を捉えることができたら、今メンタルヘルスや喪失やパンデミックのトラウマに直面しているたくさんの人にとって、繋がりと慰めを見つける手掛かりになるんじゃないかと思った」

Chloë 着用アイテム:チューブトップ(Nodress)、レギンス(Vaquera)

Chloë 着用アイテム:Tシャツ(MM6 Maison Margiela)、ドレス(ALAÏA)、ブーツ(ALAÏA)

Chloë 着用アイテム:ジャケット(Comme Des Garçons)、スカート(Comme Des Garçons)
優れた俳優というものは、人々の多様な生き方に対して自分の意見を保留できなくてはならないが、それにとどまらず、セヴィニーは生計の手段に関しても判断を控えることができるようだ。プロジェクトの実現に欠かせない裏方のセット スタッフ全員に広く感謝を表明しているし、彼女が引き受けるキャラクターの大半も、仕事を持ち、働く女性たちだ。そして、『ラスト デイズ オブ ディスコ』で演じた出版社のアシスタントであっても、『荒野にて』で演じた騎手であっても、同じように明確な真実味がある。普通の人々の生活に対する日頃の好奇心は、出演する映画にもプラスに作用している。例えば、1990年代ニューヨークの華やかなりしクラブ シーンを描いた『パーティ★モンスター』。クラブに夢中になった若者たちのサブカルチャーはメンバー同士の殺し合いが始まった頃に消滅したが、セヴィニーは現実に、そんなパーティ モンスターたちと一緒にパーティをしていたのだ。そして、成長し続けた。さまざまな時期を経てきたし、その多くは公けの記録として残っている。だから演技に役立てる経験には事欠かない。
セヴィニーはコロナが始まった頃に身ごもり、隔離生活が数か月続いた頃に出産した。周囲から比較的に隔絶された生活と初めて母親になった体験は、今まで以上に自分の生い立ちを振り返るきっかけになった。セヴィニーの、20代初めで亡くなった父はトロンプルイユ画家だった。音楽好きな人物で、子供時代のセヴィニーはよくレコードのジャケットを眺めていた記憶がある。「父はいつも新しい音楽を聴いてたわ。フライング リザーズ(The Flying Lizards)とか、再結成した後のブロンディ(Blondie)、マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)、ジョー・ジャクソン(Joe Jackson)、エルヴィス・コステロ(Elvis Costello)。大きくて広い世界があることを私が知った、最初の経験よ」。母は、幼い娘がすでに見せていた鋭敏な感性を大切にした。セヴィニー自身、1990年代終わりには、都会生活を離れるために当時付き合っていた監督のハーモ二ー・コリン(Harmony Korine)と一緒にダリエンへ戻り、母と一緒に暮らしたほど仲が良い。ちなみにこのとき、コリンはセヴィニーの実家に同居せず、近くに住む場所を見つけたそうだ。
良きにつけ悪しきにつけ、今もついて回るのは両親のどんなところかを尋ねると、最近、不意に母の判断と分別が顔を出すと認める。「身近な人やいちばん愛してる人に対して、例えば『ちゃんとシャンプーしたらもっと綺麗になるのに』と思ったりするのよ。それって、ものすごく母に似てる。母はある種の礼儀作法をしっかり私に植えつけたし、それ自体は、以前思ってたよりはるかに感謝してるの。人間関係をうまくこなしたり、他の人の居場所や境界線を尊重する限りはね。一緒に出かけた人がレストランのウェイターやタクシーの運転手に失礼な態度をとったりすると、よくわかる。息子には絶対そんな態度を取ってほしくない。周囲の人たちを尊重する人間になって欲しいわ」

Chloë 着用アイテム:ボディスーツ(ALAÏA)

Chloë 着用アイテム:ジャケット(Simone Rocha)、ブラ(Agent Provocateur)、ブーツ(Marsèll)

Chloë 着用アイテム:Tシャツ(MM6 Maison Margiela)、ドレス(ALAÏA)、ブーツ(ALAÏA)
セヴィニーは、名声がもたらす危険の中で、地に足の着いた実例であろうとする。「私はいつも体制を少し外れたところにいると自負してる」。だが、体制からの評価に胸が躍るのもまた事実だ。「『The Girl From Plainville』はエミー賞の呼び声が高かったし、私もその気になって、少しばかり興奮してた。そのせいでいつになく色んなことを引き受けたりしたから、それはそれで、とてもよかったけどね」。結局、今年のエミー賞リミテッドシリーズ部門では『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』と『ホワイト・ロータス 諸事情だらけのリゾートホテル』が有力で、『The Girl From Plainville』は候補に挙がらなかった。そのことには落胆していないが、『Variety』はとりわけセヴィニーに対する冷遇だと報じた。
アカデミー賞の授賞式には一度、『ボーイズ ドント クライ』で助演女優賞にノミネートされた2000年に出席した。賞前のキャンペーンではアルベール・エルバス(Alber Elbaz)がデザインしたYves Saint Laurentのドレスを着用していたが、授賞式会場に登場したときのクラシックな赤い口紅、裾をひくブラックのロングドレス、Asprey & Garrardが提供した豪華なダイヤモンドのマルタ十字架で、セヴィニーのファッションは頂点に達した。当夜は、兄、母、コリンを同伴して、家族の一大イベントになった。「1年前は、ハーモニーとふたり、テレビで授賞式を観てたの。何から何まで体制を象徴するアカデミーなのに、次の年には家族総出で会場にいたんだからね。セクシーだと思ってたラッセル・クロウ(Russell Crowe)が素敵だと言ってくれて、胸がときめいたわ。あの年はすごい人たちがたくさんいた。サマンサ・モートン(Samantha Morton)はTシャツにタキシードってスタイルだったし、『アメリカン ビューティ』が5部門を受賞した。 楽しくて、最高で、期待と不安があんまり大きかったもんだから、賞を逃したときは洗面所へ行って泣いたのを覚えてる。兄も涙ぐんで、煙草を吸いに出ていったわ。アカデミーにそれほど感情が左右されるなんて驚きだった」。賞は『17歳のカルテ』のアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)が獲った。
セヴィニーは、『Sassy』マガジンの見習いをしていた1992年、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)がPerry Ellisのためにデザインしたグランジ コレクションを着て、ソニック・ユース(Sonic Youth)のミュージック ビデオ「シュガー ケイン」に出演した。そのときから、ジェイコブスはセヴィニーを知っている。数年後にはセヴィニーのクールな存在が認められ、『キッズ』の撮影中、『New Yorker』でジェイ・マキナニー(Jay McInerney)による人物紹介が掲載された。電話越しにジェイコブスは言う。「クロエが何を着て現れるか、ファッション通はいつも注意してたね。彼女は俳優であるのと同じくらい、ファッション アイコンだ。素晴らしくセンスがあって、しかも常に時代の先を行く。ファッション界は、特にイットガールと呼ばれたり『New Yorker』の記事になる人たちを小馬鹿にするところがあるんだよ。あくまで一般論だが、これから俳優としての成功を目指そうという人を見下す。でもクロエは常に実力を立証してきた」
決して難役から尻込みしないセヴィニーは、断固としたプロ精神で定評がある。近年は、直感でやり抜くしかなかった若い頃に比べ、現場でサポートが与えられるようになった。例えば『ブラウン バニー』(2003年)には、性的暴行を受けるパーティの前のシーンで、監督兼出演者のヴィンセント・ギャロ(Vincent Gallo)に本当にフェラチオを行なう有名な場面がある。「インティマシー コーディネーターがついたのは、ルカの『僕らのままで』が最初だったと思う。それまでは監督が俳優を説得してたし、どこまで体を見せるか、エージェントとスタジオの契約で事細かに撮影条件が決めてあったの。触り方とかじゃなくて、左の乳房、右のお尻、カメラは25度から75度の角度、正面からの全裸はなし、って具合」

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セヴィニーは変化を受け容れる必要性を理解しているから、それほど過去に執着しない。とは言え、セットでのさまざまな体験も一緒に仕事をした人たちへの尊敬も、記憶に残っている。『キッズ』を監督したオクラホマ州タルサ出身の映像作家ラリー・クラーク(Larry Clark)については、「19歳だった私にとても気を遣って、本当に優しく接してくれたのよ。男の子と女の子のお父さんで、私、息子さんが13歳になったときにお祝いのバル ミツバにも行ったわ。『キッズ』を撮り終わった後は、エージェントとマネジャー探しを手伝ってくれて、アート展のオープニングやディナーに欠かさず招待してくれた。そのうち何となく疎遠になったけど、それまでは何年も親しかったの。とっても良い経験。私はそれまで全然演技したことがなかったから、少なくとも私の役柄に関する限り、未体験のことやよく知らないことや、色々と難しいことを求められたし、それを模索する素晴らしい環境も作ってもらえた。彼のことも、撮影スタッフだったエリック・エドワーズ(Eric Edwards)も、ハーモニーも信頼してたわ」
『キッズ』の脚本を書いたハーモニー・コリンを、ハイスクール卒業式の2日後にニューヨークへやって来たセヴィニーは「私の大学」と呼んでいたことがある。1990年代末の『ガンモ』や『Julien Donkey-Boy』など、反逆的なテーマのコリン作品で、セヴィニーはもっとも強く記憶に残る役を演じた。Supreme2022年春夏シーズンのドロップ限定商品では、フットボール ジャージに『ガンモ』中のブリーチしたブロンド ヘアのセヴィニーがプリントされていたほどだ。そのコリンを話題にすると、「やりにくいわね。冷汗が出る」と冗談めかす。「彼はいちばんワイルドな部類の監督だったわ。もちろん、ああいう時代の、ああいう場所の、ああいう時期だった、ってこともあるけどね。彼にとって『ガンモ』は最初の作品だったし、とにかくすごく情熱を燃やして、撮影スタッフやキャストの全員に同じ情熱を求めたの。人生に対しても、映画づくりやアートに対してもアツくて、誰もが自分に挑戦することを求めた。決まり事を打ち壊して、新しいものを試そうとする意欲がすごかった。そういう意味では、唯一無二の監督ね。『ロシアン ドール』のナターシャ(Natasha Lyonne)も、ちょっとそんな感じだったな」

Chloë 着用アイテム:ジャケット(Simone Rocha)、ブラ(Agent Provocateur)、ブーツ(Marsèll)
ラース・フォン・トリアーも同じように果敢だった記憶があるし、彼女自身、そんなエネルギーに応えた。「『ドッグヴィル』の後、彼の作品で別の役を演じたのよ。多分、セリフは一行しかなかったと思う。彼をどう思っているか、それでわかるでしょ? 一緒にやった仕事を観てもらえればわかるわ」
ヴェルナー・ヘルツォークは1999年の『Julien Donkey-Boy』でセヴィニーの父親を演じたが、母親殺しを扱った2009年の監督作『狂気の行方』では、前回ほど指導がなかったと言う。「あの映画はもっと良い出来上がりにしたかった。監督としてのヴェルナーは、あまり指示を与えなかったの。私はどうもロサンゼルスに馴染めないからロサンゼルスの光について話してみたけど、彼自身はロサンゼルスが大好きなせいか、まったく取り合ってもらえなかった。だから、この人と意見を戦わせることはないんだなと思った」
セヴィニーの初期の評価が、話題の監督の話題の作品に出演することで得られたにせよ、現在は、彼女が彼女を起用する映像作家の評価を高める側だ。『キッズ』はセヴィニーがカメラに熱愛される俳優であることを明らかにしたし、オリヴィエ・アサイヤス監督作『デーモン ラヴァー』の眩いクラブの照明から『僕らのままで』の酔い潰れて折り重なったティーンたちまで、後のプロジェクトにも『キッズ』の影響が垣間見られる。駆け出し当時から仕事熱心で、名声にあぐらをかくことを拒絶したセヴィニーの出演作品は、時が経つにつれて評価が高まるばかりだ。昨年は、未来を予見したようなスリラー『デーモン ラヴァー』の復元版カットがJanus Filmsから公開されたので、『レア 魔性の肉体』で共演したジーナ・ガーション(Gina Gershon)と一緒の姿を再度目にすることができた。フランス映画の『デーモン ラヴァー』では、最初セリフの一部をフランス語で覚えた後、改めて企業エグゼクティブのバイリンガルなアシスタントに配役されたと言う。「メキシコで撮影しているときにニューヨーク同時多発テロ事件が起きたの。ちょうど9月11日にヘリコプターに乗ってるところを撮ったから、特に目につく部分がある」と、セヴィニーは回想する。「最後に観たのはもうずいぶん前だけど、あの映画は本当に人気があるみたいね」

Chloë 着用アイテム:ボディスーツ(ALAÏA)、レギンス(The Row)、ブーツ(Marsèll)

Chloë 着用アイテム:ピアス(Y/Project)
セヴィニーが大手スタジオの映画に出演したのは、デヴィッド・フィンチャー(David Fincher)監督の『ゾディアック』が最初だ。1960年代から1970年代にかけて、カリフォルニアの海岸地域を震撼させ「ゾディアック」と名乗った連続殺人犯を独自に調査して、原作の同名小説を書いたノンフィクション作家ロバート・グレイスミス(Robert Graysmith)をジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)が演じた。セヴィニーが演じたのは、夫があまりにゾディアック事件にのめりこむため、子供たちへの危険を恐れて別れることを選んだ妻メラニー・クラッカワー(Melanie Krakower)だ。「初日は何百回も撮り直したの」とセヴィニーは語る。「以前の作品の監督だった友だちに電話して、私、そんなにダメな俳優? 一体どうなってるの? 役を下ろされるの?』ってホテルの部屋で泣いたわ。そしたらデヴィッドから電話があって、『あれが僕のやり方なんだよ。今日の君は素晴らしかった。出演してくれてとても嬉しく思ってる』と言ってくれたの。だから彼のやり方に任せることにした」。『パニック ルーム』に出演したジョディ・フォスター(Jodie Foster)も、『ビッグ ラブ』でセヴィニーと共演し、フィンチャー監督作『マンク』でアカデミー賞候補になったアマンダ・サイフリッド(Amanda Seyfried)も、夥しい回数のテイクを繰り返すフィンチャーの手法を完璧に信頼していると口を揃える。
セヴィニーも同意見だ。「彼は最高の監督よ。どうエネルギーを配分するか、どうやって最後までテイクに応じられるスタミナを温存するか。そういう点では自分を守る術を学習する必要があったし、何回も撮り直すのは必ずしも私が原因じゃないってことも頭に置いとく必要があったわね。フィンチャーのセットでは極限まで追いつめられるけど、何度も何度も撮り直されるのは素晴らしいことでもあるのよ。私自身、そういうプロセスを楽しんで、色々と試せるようになったもの」
セヴィニーの次なる段階では、俳優仲間と彼らの安心感に配慮することが重要になる。来春は長編を監督したいと考えているからだ。短編の監督作品としては、ポール・ボウルズの小説を基にした『Kitty』(2016年)、Miu Miuによるプロジェクト『Carmen』(2017年)、カンヌ国際映画祭の最優秀短編映画部門でパルム ドールを争った『White Echo』(2019年)などがある。長編に関しては、これまでも関心を持った小説はあるものの、映画化の権利を手に入れることができないでいた。だがついに、これぞと思う脚本が飛び込んできたのだ。「以前Gavin BrownやThe HoleでDJをしてた古い友だちが、『実は脚本を書いたんだ。短編を観て、君ならきっと僕の本の魂をわかってくれると思った』って言うの。読んでみたら、本当に感動したわ。だから今は、映画化に向けて売り込み用の文書を作ってるところ。作品の感触を理解してもらわなきゃいけないでしょ」
そして少し口を噤んだ後に続ける。「みんな、細かく説明してもらうのが好きだから」
Thora Siemsenはコロラド州在住のライター
- インタビュー: Thora Siemsen
- 写真: Brianna Capozzi / REP
- 照明技师: Nigel Ho Sang
- 写真アシスタント: Milton Arellano、Mike Broussard
- スタイリング: Emma Wyman / REP
- スタイリング アシスタント: Szalay Miller
- テーラリング: Olga Kim / Carol Ai Studio
- ヘア: Joey George / MA + World
- メイクアップ: Dick Page / Statement Artists
- 写真監督: Michael Quinn
- キャスティング: Greg Krelenstein / gk-ld
- 制作: Chloe Mina / Lolly Would (エグゼクティブ プロデューサー)、Spencer Morgan Taylor / Harbinger Creative (オンセット プロデューサー)
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: October 11, 2022

