世界に広がる混沌も、この空間には届かない
注目すべき11の新鋭ブランドがアンダーグラウンドで新たな力を充電する
- 文: Chris Gayomali
- 写真: Moni Haworth

2025年を取り巻く情勢は、予測不能である。権威者の気まぐれに翻弄されながらも、我々はなお、その先にある何かを感じ取ろうとしてきた。だが、歴史が示すように、時代がとりわけ重く沈むときこそ、「良きバイブス」は姿を変え、生き延びる術を見出してきたのだ。多くの場合、それは地上から姿を消し、地下で再び脈打ち始める。
だからこそ、最も刺激的で革新的な新鋭デザイナーたちの放つエネルギーに共鳴することこそが、今の最善の選択ではないだろうか。これは退却ではない。充電である。
パンツは、単なるパンツにあらず

モデル着用アイテム: ALL-IN

バギーパンツ全盛の波が頂点に達しつつある今、次に来るシルエットは何か。そんな問いが、業界の関心を集めている。フレアの本格的なカムバックはあるのか? オゼンピックによる細身信仰によって、世の中が再び“スキニーパンツ志向”に向かうのか?
可能性はある。だが少し想像力を広げてみてほしい。シルエットという枠組みだけで語ること自体が、むしろ発想の萎縮を示してはいないだろうか。たとえば、ALL-IN(同ブランドはもともと雑誌として始まったというユニークな背景を持つ)のようなブランドは、「パンツとは何か」という根本からの再定義に取り組んでいる。古着のスカート、ジーンズ、ベルト、あるいは別のパンツ同士を縫い合わせ、カテゴライズ不能な“フランケン・ガーメント”へと変貌させる。そこには、パンツをパンツ以上の存在にする美学がある。創設者ベンジャミン・バロンは、かつてこう語っている。「何でもないものが、たやすく別の何かへと生まれ変わる。その過程に、抗いがたい美しさがあるんです」
あるいは、「パンツすら不要」かもしれない

モデル着用アイテム:Laura Andraschko

モデル着用アイテム:FLORE FLORE

ボーイレッグブリーフを日常のものとして受け入れ始めたのが、いつからだったのかは定かでない。(起点がレディー・ガガである可能性は高い)。だが定かなのは、そこには確かな反骨精神が流れているということだ。ローラ・アンドラシュコ(Laura Andraschko)のようなデザイナーたちは、マイスペース時代のエモや、どこか色気を帯びたアルプス的イメージといった、意外な着想源を取り込んだファッション実験を通じて、温もりを感じさせる心地よさを現実世界のステートメントへと昇華させている。ベルリンで育ったアンドラシュコは、パーティーの空気を肌で知っている。「本当に若すぎたくらいだった!」彼女はそう語る。「KitKat、Berghain、Renate、あとはもっと小さなゴス系のアンダーグラウンドクラブにも通ってた。とにかく、すごかった」
一方で、FLORE FLOREのようにラグジュアリーなベーシックウェアを追求するブランドたちは、洗練の新境地へと踏み出しつつある。

モデル着用アイテム:Julie Kegels

モデル着用アイテム:Julie Kegels
アントワープ生まれのジュリー・ケーゲル(Julie Kegels)は、アンダーウェアをアウターウェアとしてとして再構築し、新たな領域へと進化させている。彼女の鮮烈な色使いと大胆なパターンワークは、ベビーブーマー世代の懐古的なモチーフと、Z世代の何にも縛られない奔放さとを、軽やかに並置してみせる。
シアーは力である

モデル着用アイテム:ALAINPAUL
ダンサーとしてのバックグラウンドをもつアラン・ポール(Alain Paul)は、自身の名を冠したブランド ALAINPAUL において、身体の動きが美しく浮かび上がるようなカッティングをデザインの中心に据えてきた。だが今季におけるシアーの扱いは、センシュアルな演出ではなく、むしろ芯のある身体性の表明へと転化している。身体は、ただ見せるためのものではない。主体性が宿る場所なのだ。
ノーシャツ、ノーパンツ、ノープロブレム

モデル着用アイテム:Commission


モデル着用アイテム:Commission
ニューヨークを拠点とする若手ブランド Commission は、いま最も注目を集める存在のひとつである。彼らが扱うのは、未来的なアイデアだ。ただし、過去へのノスタルジーを弄ぶものであっても、決してその懐に甘んじるものではない。たとえばこのジャケット、フーディ、ショートパンツの組み合わせ。どこか懐かしい体操着を彷彿とさせながらも、実のところ、その構造は驚くほど先進的である。

モデル着用アイテム:AURALEE
話題性という点では、AURALEE も外せない。洗練されたテーラリングと、時流を先取りする色彩設計で知られる日本発のブランドである。今季は、トップスのように仕立てられたモノクロームのパファーベストと、それに呼応するパンツのスタイリングが印象的だ。季節感を軽やかに裏切りつつも、意表を突くような一手として鮮やかに機能している。

モデル着用アイテム:Raimundo Langlois

一方、ニューヨークを拠点とするデザイナー、ライムント・ラングロワ(Raimundo Langlois)は、ユースカルチャーのエネルギーを軸に置いた作品づくりで知られる。そんな彼が示すのは、一着のパンツにこそ、ルック全体を牽引する力があるという事実である。
ジェントルだって楽じゃない

モデル着用アイテム:Edward Cuming

モデル着用アイテム:ABRA

モデル着用アイテム:ABRA
Edward Cuming のパンツに施された、さりげないレースバンドに注目したい。クラシカルなピンストライプに、ウィットを感じさせるセンシュアリティが添えられている。一方、ABRAのバギーショーツは、ほのかに艶めく素材感が印象的だ。ブランドのブーツやバレエシューズとの組み合わせにより、硬質なシルエットの中に柔らかな品格が共鳴する。
新しいオフィスは、どこにでも存在する

モデル着用アイテム:Commission

モデル着用アイテム:mfpen
「オフィスコア」という言葉は、TikTokで流行している一種の心理作戦かもしれないが、伝統的なメンズウェアに関連するルックから、新たなデザインが続々と登場している。たとえば、コペンハーゲンを拠点にするメンズウェアブランドmfpen。彼らは、だらしなくならず、むしろ洗練された雰囲気を保ちながら、アートのような「ゆるっとした」要素を取り入れている。このような柔軟性は、今や必要不可欠なものとなりつつある。
Chris GayomaliはSSENSEのデピュティエディター
- 文: Chris Gayomali
- 写真: Moni Haworth
- クリエイティブ ディレクション: Sasha Wells
- モデル: Maverick Mathews, Ann-Océane Galietta, Kira Sneed, Josephine Chumley, Ellen Vu, Jack Lumsden at Wilhelmina Models Beverly Hills, Dillan Page at Storm LA, Leif Johnson at Vision Los Angeles, Aushad Tiyon, Shamhad Kiyon, Dax Reedy, Juls Horne, Gabriel Lafontaine
- スタイル: Malcolm Mammone
- ヘア: Gregg Lennon Jr. using Unite Hair at The Only Agency
- メイクアップ: Nick Lennon using MAC Cosmetics at The Only Agency
- キャスティング ディレクション: Nafisa Kaptownwala at In Search Of Agency, Malcolm Mammone
- 動画: Thomas Woodward
- 音楽: Griffin James
- 撮影アシスタント: Clyde Munroe
- 照明アシスタント: Gerry Green
- スタイリング アシスタント: Mark Saldaña & Katie McMonigle
- ヘア アシスタント: Kyle Heinen & Ilaina Espinaco
- メイクアップ アシスタント: Abby Smith
- キャスティング アシスタント: Mimi Hong, Cameron Carter, JS Garcia, & Chandler Kennedy
- プロダクション: The Morrison Group
- プロダクション マネージャー: ecilia Alvarez Blackwell
- プロダクション アシスタント: Ernie Torres
- ポスト プロダクション: Clyde Munroe
- ロケーション: Loft & Bear Distillery
- Date: April 21, 2025


