照明に頼る
表情を一新する
色と形の最新トレンド
- 文: Sami Reiss

あまりに無彩色で味気ない照明が君臨した、長く退屈な日々は終わりを告げた。剥き出しの光源が目を刺す頭上の照明、チラチラと明滅するあらゆる照明の下で僕らは頑張ってきたけれど、それらは今闇へ沈もうとしている。LED電球も、色気のないスパイラル電球も、建設現場にいるような気分にさせるオフィスの冷たい白色電球も、みんな去っていく。
ま、理想の世界では、の話。現実の世界で新時代の照明が均等に配分されるのはまだ先の話だが、新時代が到来しつつあるのは確かだ。照明に関心を払う人たちや照明に関わる仕事をしている人たちには、新時代の芽吹きが見えている。
「時代はニュートラルの世界を脱して、アールデコ的な雰囲気を醸し出す色調へ移行しています」と語るのはジェイミー・ペレス・ヘレーラ(Jamie Perez Herrera)、レジデンスや個人の住宅を手掛けるブルックリンのインテリア デザイナーだ。カリフォルニア州ベニスのAirbnbにありがちなグレー、グレー、ひたすらグレーと若干のタン カラーに塗りつぶされたニュートラルの世界は、過去5年で至るところへ浸透した。
念のために言っておくが、古い美学が消滅するわけではない。すべてのホテルがタンやグレーのロビーを取り壊すことはない。だがヘレーラが最近委託される仕事は、それらに代わる「柔らかくて、眩しくない」温かみのある屈折光が特色だ。一方で、モノクロ一辺倒から離れて、色を使う傾向もある。室内照明は新たな方向へ向かい始めているのだ。

協力:Celine Wright。冒頭の画像:カーテンランプ、協力:Analuisa Corrigan
ノグチの次世代
温かみのある照明は、「器具というハードウェア」ではなく、「柔らかな輝き」を意識させるとヘレーラは説明する。例えば、アーティストおよび家具デザイナーとして有名なイサム・ノグチ(Isamu Noguchi)の和紙を使用した照明作品を思い浮かべてほしい。照明の分野におけるノグチの貢献は絶大だ。アーティストのセリーヌ・ライト(Celine Wright)が創作した薄めのペンダント ライトをはじめ、ノグチと類似あるいはまったく同じ素材を使用した類の照明は、ビンテージなオリジナルの陰に霞むこともあるし、堂々と肩を並べることもある。
カラーの入場
照明は原色その他の鮮やかな選択肢を離れ、宵夕を感じさせる落ち着いた色合いの着色ガラスへ向かっている。「形状だけでなく、色と遊ぶ」照明が求められているとヘレーラは言う。「球形からもっと有機的な形状」への移行も目にしているそうだ。ボール電球が暗めの色とさまざまな表情へ道を譲るのは、進化と言えないだろうか。ヘレーラは、濃いめの着色ガラスを駆使するニューヨークの照明スタジオIn Common Withを例にとる。濃紫色のミニマルなアップ&ダウン スコンスは、真紅のカラーリリーが華やかな ペンダント ライトと通じるところはあるものの、やはりまったくの別物だ。

協力:Analuisa Corrigan

カーテン ランプ
照明はさらに自由な表情も見せ始めている。デザイン ライターのヘイリー・ジーン・クラーク(Hayley Jean Clark)は、「丸く膨張したりくねくね捩れたカラフルなランプ」や「1970年代イタリアが陶酔したポストモダンのイミテーション」、要するに暑苦しいランプは少なくなってきたと言う。デザイナーや消費者は「アース カラー、温かみのあるニュートラル、自然素材」を好み始めている。その一例がカーテン ランプだ。ビンテージも新製品も含めて、その名のとおりのデザインは勢いを増しつつある。
新製品のなかでは、ずばり、アナルイサ・コリガン(Analuisa Corrigan)の「Curtain」ランプが優勢だ。ビンテージでは、トビア・スカルパ(Tobia Scarpa)、ヨセフ・フランク(Josef Frank)、ヨセフ・ホフマン(Josef Hoffmann)らの名品がムードボードにも個人宅にも姿を現しつつある。クラークが指摘するとおり、ロサンジェルスのスタジオ22REが手掛けたプロジェクトにはスカルパの「Celestia」が使われているし、「Curtain」ランプは至るところに出現している。スイスのホテルもロンドンのキッチンも例外ではなく、過去5年の特徴だったポストモダンのカラフルな滑らかさとは、まったく雰囲気を異にする。ヨセフ・ホフマンのウィーン工房で制作されたどっしりしたメタル ベースのカーテン ランプは、「ビクトリア朝の過剰とル・コルビュジエ的殺風景のあいだで見事にバランスをとっている」とクラークは評価する。対立するハイとローの二分をひとつのデザインに包含するなんて、さすがの上級技だ。
DIY ランプ
カーテン ランプのDIY バージョンでは、Gohar World ストアのお洒落なドイリー シェードが特に目を引く。DIY バージョンが派生したこと自体は、少しも意外ではない。セット デザインと室内装飾を手掛けるエミリー・クリスト(Emily Crist)に言わせると、照明はDIYにぴったりなのだ。照明は「すごく作りやすい、配線だって難しくない、だからDIYしやすい。そういう事実から照明のトレンドが生まれているんです」。クラークと同じく、照明に「ファブリックを多用する」変化にも気づいている。ヘレーラが言うように、「電球を見たがる人なんて、ひとりもいません」。誰もが、ファブリックの「ドレープで電球を覆い隠したホームメイド風」ランプを求めている。
クリストによると、ホームメイド風ランプは数量や期間を限定して販売されている。「ホームメイド風だけどもっと洗練されていて、市場で見かけない類の商品」だ。例えばTulip Shades × エヴァ・ジョーン(Eva Joan) コラボは「見るからにDIYの外見」だ。実際のところInstagramにはTulip Shadesの商品が溢れているにもかかわらず、ランプだとは思えない。いかにも手作り風で、市販製品には見えない。一方で、本当のDIYを実行しているのはWill it Lamp?。古道具屋から掘り出したものを、リメイクやアップグレードで照明に変えるプロジェクトだ。カラフルなものあり、捩れたものあり、 電球が丸見えのものもある。

「Knuckle」ランプ。協力:Hem
オーバーヘッド照明
vs
複数照明セッティング
インテリア デザイナーが個人住宅の照明を考える場合は、必ずしもオーバーヘッドに限定しない。そして、照明を隠す傾向がある。例えばジョエ・コロンボ(Joe Colombo)の天井照明など、優れたビンテージのオーバーヘッド照明はより恒久的な解決策だが、配線の変更などを考えると、自宅所有者向けのオプションだ。それでも尚、オーバーヘッドには光源を覆い隠して柔らかい光を放つ照明器具を、ヘレーラは推奨する。当然ノグチの作品も候補だが、80cm近い幅をとるノグチ照明でなくてもいい。クリストが薦めるのは複数の照明、あるいは環境に溶け込むフロア照明だ。
複数照明は良いアイデアだと思う。くねくねランプを捨てる必要はない。ちょっと場所を譲らせて、前述のオプションのどれかでアップグレードすればいいのだ。多少和紙の趣があるカスティリオーニ(Castiglioni) デザインのFlos、Hemの「Knuckle」を参加させるのもいいだろう。電球が露出している後者は上述の論旨から外れるが、種類が増えれば、当然、破られる規則もある。
嬉しいことに、どんなトレンドであれ、照明を取り換えるのは室内の雰囲気を一変させる最短の方法だ。賃貸であろうが自宅であろうが、それは変わらない。「陰気なアパートでも、グレーのフローリングを引っぺがすわけにはいきません」とクリストは言う。「ペンキを塗り替えるのは大仕事です。だけど、光源を変えることで室内の色を変える方法なら、リスクも少ないし、何より手軽です」。さて、どれとどれをアップグレードしようか。それを決めるのは君だ。

協力:Celine Wright
Sami Reissはデザイン関連のニュースレター『Snake』 およびウェルネス関連のニュースレター『Super Health』を出版している。ニューヨーク在住
- 文: Sami Reiss
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: March 31, 2025

