ファッションコラボの真髄

Levi’s × sacaiの最新コラボを手がけたレオ・ガンボアが語る、ブランドをつなぐ共作の哲学

  • 文: Chris Danforth
  • 写真: Julian Edward

ファッション業界において、「コラボレーション」という言葉は、ときに無意味な混成として片付けられることがある。相容れぬビジョンを抱えた二者が無理に手を結び、結局は何の深みも生まれない――そんな例が後を絶たない。しかし、Levi’sでコラボレーションを率いるレオ・ガンボアは、その落とし穴を誰よりもよく知っている。ReebokやPackerでのキャリアを経たスニーカー業界のベテランにとって、両者の個性を絶妙に交差させることこそが、真の創造的パートナーシップに命を吹き込む鍵だ。その手腕でスタジオジブリ、UNDERCOVER、Kiko Kostadinovとのプロジェクトを成功に導いてきたのも、至極当然のことだろう。

現在、彼はLevi’sと日本のアヴァンギャルドブランドsacaiとのコラボレーションを牽引している。ラグジュアリーの再解釈と解体を武器とするsacaiと、アメリカンデニムの代名詞であるLevi’s。その対照的な遺伝子がいかに交差し、ひとつの物語を紡いでいくのか。サンフランシスコ・ベイエリアに移り住んだ彼は、自身の創造的プロセス、人との対話がもたらすひらめき、そしてLevi’sの記憶に残るプロジェクトの舞台裏について語ってくれた。

クリス・ダンフォース(Chris Danforth)

レオ・ガンボア(Leo Gamboa)

多くの人は、あなたをReebok時代から知っていると思います。スニーカー業界を離れることに迷いはありませんでしたか? Levi’sに惹かれた理由は?

デニムと聞いて、まず思い浮かべるのはLevi’sだよね? 世界最高峰のデニムブランドで、これほどの歴史と伝統を持つアイコニックなブランドで働けることに魅力を感じたんだ。可能性が無限に広がっていると。

スニーカーはこれまでの人生において大きな存在だったけど、デニムやアパレルの仕事には新鮮な刺激があった。まったく別のものに触れることができる、そこに興味をひかれたね。それに、Crocsとのコラボのように、今でもフットウェアに関われる機会はあるから、その世界との接点は完全には失っていないんだ。

Levi’sに来てから意識しているのは、ただ数をこなすのではなく、意味のあるコラボレーションをつくること。市場には無数のコラボがあふれているからこそ、ひとつひとつの選択に意図と誠実さが必要になる。遠くから見ていても、Levi’sは興味深いブランドだったし、ここで築けるものの可能性が見えていたから、飛び込む価値があると思ったんだ。

フットウェアからアパレルに移ることで、デニムについてゼロから学べたのも、挑戦であると同時にクリエイティブな喜びになった。

コラボレーションを企画する際、主観的な“好み”はどのくらい影響しますか? それとも、できるだけ客観的であろうと心がけていますか?

個人的な趣味嗜好は確実に影響しているよ。ある種の“創造的なレンズ”として機能しているというか。でも同時に、常に意識しているのは、広い視野を持つこと。そのコラボに何が求められているのか。ブランド、パートナー、そして消費者、それぞれの視点を考えるようにしている。

つまり、大切なのはバランス。個人的な直感と、コラボとして成立させるための現実的な要素。それがうまくかみ合ったとき、本当に意味のあるコラボレーションが生まれると思う。

そのバランスを見出す方法というのは、すでに確立されていますか? Levi’sとパートナーをつなぐ“糸”を見つける秘訣があれば教えてください。

まずやるのは、相手の世界にどっぷり浸かること。アーカイブを見に行ったり、デザインの視点を深く理解したり。最初に必ず聞く質問があるんだ。「なぜLevi’sとやりたいのか? このブランドに、どんな意味を見出しているのか?」と。そこからすべてが始まる。

そして何より、対面での対話が欠かせない。実際に会って話し、関係性を築く。リアルな瞬間から生まれるチャンスというのは、本当に多いんだよ。たとえばレストランやイベント、バーや山の上、どこであれ、何気ない会話が、ひとつのコラボレーションへと発展することもあるから。

Bodegaとのプロジェクトなんかは、スノボー旅行が実質的なキックオフだった。“打ち合わせ”と呼ぶにはあまりに自然な、ただ一緒に滑っていた時間。でも、それがきっかけになった。ゴルフ場で契約を結ぶビジネスマンと、そう変わらないかもね。

コラボレーションを成功に導く鍵とは? また、Levi’sでのこれまでのハイライトを教えてください。

2023年のスタジオジブリとの『もののけ姫』コラボは特に印象に残っている。反響も大きく、即完売だったよ。

それから、Kiko Kostadinovとのコラボレーションも。彼のパターンメイキングを通してLevi’sを再解釈することで、複雑でありながら美しいシンプルさが生まれた。Levi’sらしさはしっかりと残しつつも、洗練され、新鮮で意表をつく作品が出来上がったんだ。

そして、これから発売されるsacaiとのコレクションも外せない。トラッカージャケットやボンバージャケットといったLevi’sの定番アイテムを、sacaiが独自の視点で解体し再構築すことで、まったく新しい表情が誕生した。特に印象的なのは、クラシックなシルエットに阿部千登勢さんならではの解体的なエレガンスを融合させたリバーシブルのボンバージャケットさ。

成功の鍵は「すでに素晴らしいものを、どうやってさらに良くするか」に尽きると思う。Levi’sの象徴的な魅力を損なわず、そこに新しい複雑さや価値をどう加えるか。そこにコラボレーションの面白さがあるんだ。

Levi’sは、現存するアメリカ最古のブランドのひとつとして長い歴史を持っています。その歴史と新しさをどう両立させていますか?

やはり鍵となるのはパートナーの存在かな。僕たちは常に、既存のシルエットに新しい解釈を与えられるようなパートナーを探している。予想もしないアプローチで、見慣れたものを再構築してくれるような人たちを。視点の違うコラボレーターと出会うことで、ブランドとしての新たな可能性が広がるからね。この先にも、いくつかワクワクするようなコラボレーションが控えているよ。

Levi’sには膨大なプロダクトアーカイブや社内のヒストリアンがいると聞きました。コラボレーションにおいて、そのアーカイブはどのように活用されていますか?

新しいコレクションを開発するときは、よく過去のアーカイブを見返す。語りたいストーリーやコラボレーターによっては、過去に立ち返ることが非常に有効で、プロジェクトに良い影響を与えてくれるんだ。たとえばウォッシュ加工の手法や、初期のピースに込められたストーリーテリングからインスピレーションを得ることも多く、歴史とのつながりを感じさせながらも、前進するための足がかりにもなってくれる。

sacaiとのコラボレーションは、どのように実現したのですか?

「クリーンでクラシック、それでいて革新性がある」というsacaiのアプローチは、Levi’sと非常に相性が良いと思ったんだ。

コレクションのキーアイテムは、リバーシブルのボンバージャケット、解体的なType 2 トラッカージャケット、そして「Yジーンズ」と呼ばれる新型モデルなど。

ウィメンズラインも非常に充実していて、ブレザー、スカート、ドレスなどが登場するよ。両ブランドの美学が絶妙に融合した、特別なコレクションになった。

古着をよく買うそうですね?

そのとおり。カリフォルニアのスリフティング(古着巡り)は本当にレベルが高いんだよ。アラメダやローズボウル、オークランドのフリーマーケットでは、10ドルで素晴らしいデニムが手に入ることもある。

僕が持っているお気に入りの1本も、実は15ドルで見つけたものなんだ。

デニムの魅力って、値段に関係ないところにあると思う。10ドルでも1000ドルでも、自分にフィットするならそれが最高の1本。フィットがすべてさ。

僕は毎週のようにスリフティングして、いつも“完璧な1本”を探している。その“宝探し”の過程自体が楽しいんだ。

スニーカーにたとえるなら、現在の“ローテーション”にはどんなデニムがありますか?

主にヴィンテージの501 Made in the USAを履いているかな。最近はブラックジーンズにブラックスニーカーというスタイルがお気に入りで、それが定番なんだ。

デニムトレンドの現在地はどこだと思いますか?Beyoncéはカナディアンタキシード、Kendrick Lamarはフレアのブーツカットを履いていますよね。

正直に言うと、どんなジーンズもクールだと思っているよ。それが一番フェアな答えかな。その日の気分や個人のスタイル、履く靴によって選ぶものは変わる。

501を履く日もあれば、ワイドレッグやバギーフィットの日もある。僕は昔から、トレンドを追うよりも個人のスタイルを信じるタイプなんだ。

とはいえ、超バギーなフィットは少し落ち着いてきたかもね。501が再び脚光を浴びているのは間違いないし、フレアもトレンドの波に乗っている。でもやっぱり、501って時代を超えて存在し続けるタイムレスな一本だよ。

数ヶ月前のSatisfyとのコラボレーション、Dyneema 501も非常に印象的でした。

SatisfyのBrice(Partouche)とDaniel(Groh)は長年の友人で、ブランドが勢いを増し始めた頃から連絡を取り合っていた。

Briceは筋金入りのデニム好きで、彼が最初に持ちかけてきたアイデアは、かつての“ストーンマスターズ(Stonemasters)”、Levi’sを履いていたクライマーやヒッピーたちの精神に根ざしたものだった。

コレクションで使われたジーンズは、すべて一点物のアメリカ製ヴィンテージ。まったく同じペアは存在しない。この“唯一無二”というオーセンティシティが、プロジェクトにさらなる深みを与えてくれた。

もちろん、デニムは歳月とともに味わいが増す素材。Satisfyとのプロジェクトは、機能性、目的、ストーリーがひとつに結実している。
試作品も何度も作り直して、ようやく納得のいく仕上がりになったんだ。つい最近ジョシュアツリー国立公園を訪れたんだけど、「あのジーンズをはいてくれば良かったな」と思ったほどさ。

  • 文: Chris Danforth
  • 写真: Julian Edward
  • モデル: Leo Gamboa
  • Date: May 28, 2025