夏休みに変身してみせる!

少女たちを熱くした人気コスメを
ティーン雑誌のアーキビストが振り返る

  • 文: Casey Lewis

時は2001年の8月。近所のプールで友だちとたむろしてるあなたは、流れてくるデスティニーズ・チャイルド(Destiny’s Child)の「ブーティリシャス」を口ずさみ、大量のダイエット コークを飲みながら、『Seventeen』の新学期号を熟読中。ただのティーン雑誌ではない。登校日初日のメイクアップ、ヘア スタイル、洋服から、憧れの彼と顔を合わせたときの振る舞いまで、すべてが事細かに書き記されたバイブルだ。

どの月よりも宣伝ページ数が増える新学期号はティーン雑誌の出版社にとって1年でいちばん重要な号だが、読者にはさらに多くを意味した。8月ほど14歳の少女の命運を左右する月はない。長い夏休みのあいだクラスメイトに会っていないから、学校へ戻るのは別人みたいな気がするし、見た目もまるっきり別人になってみたい。その「別人みたいなあなた!」になる方法を教えてくれるのが、ティーン雑誌だった。

新学期号の表紙はいつだって大層なキャッチ コピーに溢れていたものだが、時代と共にますます盛大の度が増していった。例えばケイティ・ホームズ(Katie Holmes)が表紙になった1999年の『Seventeen』は「お洒落に新学期を迎える」250のアイデアを謳っているが、ブレイク・ライブリー(Blake Lively)が表紙の2008年は、「究極の新学期プレビュー」と銘打って、なんと「かわいく見せる838の方法」を宣言している。同年の『CosmoGIRL!』はびっくり仰天、「あなたを作り変える959のスタイリング アドバイス」といった具合。

さて、2000年代前後のティーン雑誌にも時が流れたが、少しも変わらない存在感を今も持ち続けている表紙モデル、見出し、見開き、宣伝、そして商品がある。社会全体がノスタルジアに駆られていることも理由のひとつだが、紛れもなく当時が復活している現在、往時の「マスト」な美容製品がかつてなく懐かしく蘇るのではないだろうか。

Maybelline「グレイト ラッシュ」

1995年から2005年にかけてのティーン雑誌をパラパラめくってみると、新学期号に限らず、ほぼ全部に「グレイト ラッシュ」が登場する。Z世代がGlossierの「ラッシュ スリック」に夢中なように、ミレニアル世代は「グレイト ラッシュ」に夢中だった。鮮やかなピンクとグリーンの容器が印象的なマスカラは、多くの美容エディターにベストな商品と誉めそやされ、少女たちの大群が人生で初めてメイクアップと出会う新学期前のシーズンには、必ず、宣伝とエディトリアルの両面で販促が強化された。ミレニアル世代の女性なら絶対使ったことがあるはずだ。そして実際に使ってみたら、絶賛されたこのマスカラが実は「まあまあ」で、2000年代初頭の人気は夜を徹して働いたMaybelline宣伝チームの成果だったこともわかったに違いない。

Sally Hansen 「エアブラシ レッグス」

2004年9月号の『CosmoGIRL!』は、「缶入りの日焼け」という見出しでSally Hansenの「エアブラシ レッグス」を紹介している。今となっては、有害な太陽光の代替手段ではなく、お財布に優しい製品として推薦しているのが笑える。「日焼けサロンに夢中? 私たちも同じ。だけど1回につき25ドルにお財布が悲鳴」のような宣伝が、この記事を書くために分析した新学期号の大多数に見受けられた。多くの場合、「夏の輝きを秋まで」とさらにひと押しすることも忘れていない。 well into the fall.

John Frieda 「シア ブロンド スパン ゴールドシェイピング&ハイライト バーム」

2002年のイット ガールのヘア スタイルは、ざっくり切りっ放した感じのボブと相場が決まっていた。リース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)、マンディ・ムーア(Mandy Moore)、そしてもちろん「シア ブロンド」シリーズの顔だったジョン・フリーダ(John Frieda)ツイン。関係ない話だけど、2000年秋の『Teen Vogue』によると、John Friedaの広告塔となった金髪双子の母は同社の幹部だったらしい。それはさておき、「シア ブロンド」シリーズの中でもいちばん記憶に残っているのは、ゴールドの陰影で立体感を出すポマードだろう。2002年10月号の『Seventeen』は「チョップ ショップ」と題した美容記事で、新学期までにマスターしたい不揃いでラフなボブのスタイリングを指導し、ゴールドの輝きを演出するこのポマードをイチ推ししている。

CoverGirl 「アウトラスト オールデイ リップカラー」

CoverGirlは2001年頃に新作リップカラーを発売し、「キスしても大丈夫」を謳い文句に、ディーンエージャーの少女たちに猛攻撃をかけた。ベースカラーは34種類、トップコートは6種類。真珠のような光沢のトップコートをベースカラーの上に塗ることで色を閉じ込め、2002年の『Seventeen』9月号によると、「キスしてもフライドチキンを食べても、塗り直し不要!」。『CosmoGIRL!』の編集者たちが実際に「キス実験」をしたところ、ひとりは「彼の顔に擦りつけても色がつかなかった」ので、「彼があなたのものという印をつけられない」と報告している。当時は大旋風を巻き起こし、同じく当時人気絶頂だったブランディ(Brandy)が CMソングを歌った。

Hard Candy 「ネイル ポリッシュ」

ディネ・モハジェール(Dineh Mohajer)は、まだカレッジの学生だった1995年にHard Candyを立ち上げた。いちばんよく知られている製品はキャンディみたいなパステル カラーのネイル ポリッシュで、同色の指輪がボトルについてきた。年若き創設者は同年代への売り込みかたを知っていたし、最初の登校日に新しいマニキュアで颯爽と現れるのはどうしても譲れない一線だから、新学期前は宣伝に最適の時期だった。1990年代後半から2000年代初めの女学生がつけたネイル ポリッシュは、ほぼ間違いなくHard Candyだったはず。1997年に出版された『Seventeen』の表紙には、男性用「Candy Man」の広告文も見受けられるが、こちらは短命に終わった。

Clean & Clear 「オイル コントロール シート」

しっとりと濡れたような肌がトレンドになる前は、マット肌の時代だった。汗っかきでオイリー肌のティーンには、いささかハードルが高い。1999年7月号の『Seventeen』には、「リップグロスがツヤツヤなのはいいけれど、Tゾーンがテカテカなのは嫌でしょう」の一文がある。そこで登場したのがClean & Clearの「オイル コントロール シート」だ。いつでもどこでも使えるように、学校のロッカーにも鉛筆ケースにも常備しておくべき必需品としてマーケティングされた。「顔のあぶらとテカリを一瞬で消す革新的な方法」を試せるように、1999年10月号の『Seventeen』にはサンプルが付録についてきた。

Ralph Lauren「ラルフ」

ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)が自分の娘からインスピレーションを受けて作った「ラルフ」は、2000年代秋のマストな香水になった。同年秋に創刊された『Teen Vogue』は、最初の3ページをこの新作香水の宣伝に費やしている。鮮やかなターコイズ ブルーのボトルは同年9月号の『Teen』にも姿を現し、秋は「青リンゴの葉のトップ ノートが友情のような温かい気持ちを呼び起こす」この香水が欠かせないと宣言された。翌年の『ELLEGirl』創刊号は、タトゥーお絵描きツール、ラインストーン マニキュアセットと並んで、「エディターたちがいちばん欲しがる」商品のひとつに挙げている。

Bioré「ディープ クレンジング 毛穴パック」

ティーン雑誌が植えつけたもうひとつの絶え間ない恐怖に、恥ずかしい毛穴の問題がある。少女たちは大き過ぎる毛穴、オイリー過ぎる毛穴、汚すぎる毛穴を気に病んだ。それを当て込んで、Neutrogenaの「クリア ポア スージング ジェル アストリンゼント」、Clean & Clearの「デイリー ポア クレンザー」、Cliniqueの「ポア リファイニング ソリューション インスタント パーフェクター」など、完璧な毛穴を約束する商品が無数に存在したが、Bioréの「ディープ クレンジング 毛穴パック」の説得力は追随を許さなかった。2001年9月号の『Teen』は、実験した3人の読者の大絶賛レビューを紹介している。「本当に効果あり。剥がしたパックを見たら、汚れとあぶらとブラックヘッドがくっついてるのが目に見えて、ゲってなった!」(イリノイ州、15歳)。皮膚専門家によると有効性は疑わしいそうだが、そんなことはお構いなしに、Bioréの毛穴パックは何百万枚も飛ぶように売れたのだった。

M.A.C. 「リップガラス」

2000年代初頭、ポケットに「リップガラス」を入れてないティーンエージャーがいただろうか? 2003年8月号の『ELLEGirl』が「市販されているリップ グロスの中でダントツ」と評したM.A.C.の「リップガラス」は、さまざまな色がティーン雑誌でもてはやされた。ところが、メイクアップ アーティスト、若々しいセレブたち、10代の少女たちがこぞって熱愛したのは、透明の「リップガラス」。ねっとりと甘いグロスは鏡のように煌めいて、実際、顔が映るほどだった。2001年の『Teen Vogue』に掲載されたデスティニーズ チャイルドのインタビュー記事で、当時20代前半だったケリー・ローランド(Kelly Rowland)とミシェル・ウィリアムズ(Michelle Williams)は、お気に入りのメイクアップ コスメに「リップガラス」を名指ししている。常にプロ精神を忘れないビヨンセ(Beyoncé)は「マスカラ」とだけ答えた。

Alberto VO5 「ホット オイル トリートメント」

X世代とミレニアル世代前半ならヘア オイルはOlaplexと答えるだろうが、1980年代から1990年代を通じてティーン雑誌編集者の絶大な支持を得たのは、Alberto VO5の「ホット オイル トリートメント」だった。特に新学期号では、太陽と塩素にダメージを受けたヘアを生き返らせるトリートメントとして、絶大な存在感を示した。1996年9月号の『Seventeen』は、「ヘアを修復するエッセンシャル オイルの働きだけでなく、ストレスを解消するアロマセラピーの効果」も兼ね備えているから、「リラックスしたいとき」にも使うように薦めている。1999年8月号の『Seventeen』に掲載されたアドバトリアルは、「ツヤのある健康なヘアを取り戻すために、新学期が始まる少なくとも4週間前から使い始める」ことを奨励し、その結果「ヘアが60%強くなる」と請け合っている。蛇足ながら、インターネットが普及する前は、エディトリアルならぬアドバトリアルと呼ばれるスポンサー付き宣伝記事がマーケティングに利用された。

Pond’s「キューカンバー アイ トリートメント」

本物の目の下のクマがどんなものかも知らないうちから、ティーン雑誌は早々と目の下のクマに気を揉むことを私たちに教えた。恐怖を利用した戦略が成功するのは世の常だ。1990年代後半には、何百万人という少女たちが、ティーン雑誌のつやつやのページで奨励されたPond’sの「キューカンバー アイ トリートメント」を買った。1998年9月号の『Seventeen』は、キュウリ エッセンスで目の下の欠点を修正する「キューカンバー アイ トリートメント」は、「本物のキュウリの輪切りみたいで、すごく可愛い」と紹介している。試験勉強で徹夜が続いても、疲れた目元を見せてはいけないとのこと。

Casey Lewisはニューヨークを拠点とするライター、エディター。若者カルチャーに関する日刊ニュースレター『After School 』を発行している。Instagramアカウントは@thankyouatoosa

  • 文: Casey Lewis
  • アートワーク: Michael Rinaldi
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: September 6, 2022