偏愛が傾くマルチフェイス シューズ
Marni、Burberry、Salomonが、ポップもシックもすべてを1足に凝縮する
- 写真: Nick Barr

今日はダルカラーのハイテクスニーカー、明日はブラックレザーが艶やかなローファーを履く。好きなデザインは1つに絞れない。でも、スタイルに統一感がないのではない。自在にカテゴリーを横断するのが自分流。いくつものテイストが多面的に表現された、ボリューミーな8足が、シューズに対する偏愛を受け止めてくれる。スタイルを決めるのは、いつだって足元なのだ。

画像のアイテム:ブーツ(Dries Van Noten)
オーソドックスな形のプラットフォーム ブーツであっても、ドリス ヴァン ノッテンは自身の世界観を厳かに作り出す。枯れ落ちる木の葉や動物のシルエットを思わせる、ブラウンをベースカラーにしたグラフィック模様。普遍的な靴の形が際立たせる、プリントの魔術師の絵画性。寒々しい冬のアスファルトに、アントワープで咲いた創造性が華を添える。

画像のアイテム:モンクストラップ(Stefan Cooke)
ステファン クックは、クラシカルな靴の表情にスパイスを加える。ヒールのバックル、アッパーを走る複数のステッチも注目だが、最も目を引くのはスタッド使いだ。銀色に輝く鋲を、片面のサイドのみに打ち込む。この抑制したアプローチで、アヴァンギャルドには踏み入らず、シックな趣を保つことに成功した。15世紀に起源を持つ革靴は、伝統と革新を共存させ、新たな地平を進む。

画像のアイテム:ブーツ(Proenza Schouler)
ニューヨークを代表するモダンブランド、プロエンザ スクーラーの手にかかれば、ベーシックなアンクルブーツは近未来のシューズに変貌する。クリンクル加工を施したメタリックなラムスキンにより、色気のあるシルエットがいっそう眩しく輝く。アッパーからトゥ、トゥからヒール、ヒールからトップにつながるラインは滑らかなカーブを描き、どこまでも澱みがない。この靴を履いて進む未来には、きっと一点の曇りもないだろう。

画像のアイテム:スニーカー(Marni)
現在のマルニには、不可思議な個性が育っている。Bigfoot 2.0 スニーカーは、厚いソール、丸みのあるフォルム、太幅のシューレースが、愛らしい表情を見せる。しかし、どこか奇妙な感覚に襲われるのはなぜか。それは、シューズの外観にデフォルメされた印象を覚えるからだろう。純白のスニーカーは、コメディのように足元を誇張する。現実を愉快にする渾身の一足である。

画像のアイテム:ブーツ(R13)
グランジスタイルが特徴のR13は、大胆であることを恐れない。アメリカンスタイルの王様ジーンズと一体化したカウボーイブーツにほとばしる、靴の概念を破壊するパワー。糸のほつれが覗くブルーデニムに、パンキッシュな魂が宿る。常識は従うものではなく、超えていくものだ。ニューヨークブランドは、挑戦を喜びとする。

画像のアイテム:ブーツ(sacai)
サカイといえば、思い浮かぶのは複雑なパターンワークだ。だが、このチェルシーブーツのように、シンプルデザインにおいてはイメージが重ね合わされ、絡まっていく。アッパーはベーシックに作り込み、トラディショナルな印象を形成する。一方、断層的に作り込んだソールはスポーティであり、ワークテイストであり、アウトドア的でもある。一足の靴で交錯する複数のイメージ。この重層性が、サカイの醍醐味だ。

画像のアイテム:ブーツ(Burberry)
このポップなブーツがバーバリーだと知れば、驚く人もいるのではないか。中綿入りタフタを用いたイエローのチェックは、ブランドの象徴であるバーバリーチェックよりも随分とカジュアルなムードだ。ドローストリングで履き脱ぎも簡単。ひたすら便利な日常の靴である。伝統を受け継ぐだけではない。変化を恐れないからこそ、1856年創設の英国ブランドは世紀を超えて愛される。

画像のアイテム:スニーカー(Salomon)
スニーカーにもっと色を求めるなら、サラモンのACS Pro スニーカーだ。イエロー、レッド、ブルーのカラーリングで足元は色彩に富んだ表情へ。ただし、マルチカラーでも、コミカルな空気は皆無。黒いメッシュ素材、連続する側面のカットアウト、Contagrip®によるラバーソールが、流線型のフォルムを完成させる。フランス発のフットウェアが約束するのは、クールなカラー体験だ。
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新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している
- 写真: Nick Barr
- 文: Shigeaki Arai
- Date: January 22, 2023

