ファレル・
ウィリアムスが
見出した均衡と
Humanrace
体・心・魂の
ウェルネス ケア
- インタビュー: Recho Omondi
- 写真: Awol Erizku

ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)ほどキャリアが多岐にわたるアーティストはいない。音楽、デザイン、ファッションの世界で、過去20年、時代に先駆けてきた。Chanelやadidasといった有名ブランドのほか、カウズ(KAWS)、村上隆、ニゴー(NIGO)などのアーティストとコラボレーションした。多数の映画では、カメラの前と後だけでなく、サウンドトラックにもカメオ出演した。今あなたが手にしているものを含め、ファッションやライフスタイルの主だった雑誌のほぼすべてで表紙を飾った。ファレルが目を向けるすべてに、彼独自のスタイルが広がっていく。
そんなウィリアムスが、グローバルに商品展開するHumanraceを立ち上げた。製品第1号は、3分で終わる3ステップのスキンケア。ウェルネスを実現する儀式をコンセプトに、外面から内面と同じように、内面から外面への作用を目指す。SSENSEはウィリアムスとタッグを組み、モントリオールにあるSSENSEの旗艦店における展示でHumanraceの理念に形を与えた。人を大切にするには、まず自分を大切にしなくてはならない。そのためにそのための商品を使い、習慣をつけ、ありのままの自分であることに充足する。ファレルの作り上げた世界が、私たちの進むべき道を示してくれる。
SSENSEマガジン 2021秋冬号では、ファッション デザイナー、批評家のほか、ポッドキャスト『On The Cutting Room Floor』のホストとして、洞察とその下にある誠実さの絶妙な混ざり具合で熱烈なリスナーを持つレーチョ・オモンディ(Recho Omondi)がウィリアムスと語り合った。ふたりの話題は、信仰、不信からの脱却、認識と視点、実践としてのウェルネスと贈り物としてのデザインへと広がっていく。ウィリアムスは言う。今という瞬間に敏感であることは、私たちの信ずることが未来で私たちを待ち受けるのを理解すること。言い替えるなら、何があろうと、お肌の角質除去を忘れてはいけないのだ。

Pharrell 着用アイテム:シャツ(Alexander McQueen)。冒頭の画像 Pharrell 着用アイテム:セーター(Jacquemus)、トラウザーズ(Jacquemus)、スニーカー(Humanrace Sičhona x adidas)
ファレル・ウィリアムスはあるがままの自分に満足している。自信を持ってゆったり構えているところに、私たちは引き寄せられる。わかると思うが、安らぎに満ちた輝きを放散しているのだ。それは彼と彼自身が上手くいっている証拠だ。彼と彼自身は友達になって、互いを大切にしている。ファレルは自分にとって良いものを理解しているし、尋ねる勇気さえあれば、あなたの疑問にも答えを与えてくれるかもしれない。
私はつい、会見に押し寄せた大勢の記者に混じって、メモ用紙とペンを手に「ファレル!! あなたの秘密を教えてください!」と叫んでいるジャーナリストになった気がして、ゾッとした。だけど、彼の秘密を知りたかったのは本当だ。
習慣と儀式の違いは、おそらく意識の状態だと思う。習慣は、反復によって実証された自動的なプログラムであり、変化はないが信頼できる。儀式は、意図の質が意味を持つ領域で、心構えを持って行なう行為だ。ファレルは両者の間に均衡を見つけたらしい。
ファレル・ウィリアムスが人々の意識に上ったのは、もう20年以上も前になる。最初は、チャド・ヒューゴ(Chad Hugo)と組んだザ・ネプチューンズ(The Neptunes)で、数々のヒット曲をプロデュースした。後にN.E.R.Dのメンバー、そしてソロのレコーディング アーティストになった。さらに最近では、新たに設立したHumanraceの商品を通じて、スタイリッシュな知性をさらに拡大した。2020年の秋の終わりにHumanraceから初めて発売された商品は、シンプルなスキン ケア ラインだ。3分で終わる3ステップのセルフケアは、明快な理念に基づいている。つまり、自分を大切にしよう。そうすれば、人も大切にできる。
7月のある日の夜、私はファレル・ウィリアムスに電話して、心と体と魂のウェルネス、デザインの感性、彼自身が実践している最善のスキンケアについて話を聞いた。だが、上述したようなファレルから放散される輝きの中で時間を過ごした後、ふと思った。彼は体を追い越してもっと先へ行くことを習得したのではないだろうか。彼の存在はピュアな風になったのだ。そして残された私たちは、彼に追いつくときを待っているだけなのだ。

Pharrell 着用アイテム:ブレザー(Maison Margiela)、ショーツ(Hood by Air)、スニーカー(Humanrace Sičhona x adidas)、ソックス(Bottega Veneta)
レーチョ・オモンディ(Recho Omondi)
ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)
レーチョ・オモンディ:あなたはずっと、物質の世界と目に見えない霊的な世界の違いをはっきり理解していたの? それともそういう理解に行き着いたの?
ファレル・ウィリアムス:育った環境で…、信仰の存在が大きかったから。要は、人生をどうとらえるか、ってことだね。信仰というのは目に見えないものの証だし、僕は常にそう考えながら生きてきた。風だって決して目には見えないだろ? そういう見えない力のすべてが一緒になって働いているけど、もっとも偉大なのは神の力、創造の力だ。今あるすべて、かつてあったすべて、これからあるすべてだよ。
魂の健康について話す人は滅多にいないけど、あなたは魂のウェルネスをどう説明する?
僕たちは今、水瓶座の時代にいる。ぶっ飛んで聞こえるかもしれないけど、ちょっと聞いて。
ええ…。
インターネットが生まれたとき、すべてが変わることになった。オフラインでは不可能でも、インターネットの世界では、人は自分が本当になりたいものになれる。ルールなんかなくて、誰でも好きな人格になれる。だからみんな、自分の魂の本当のアイデンティティ、本来自分が心の底から感じていることを見せる。それが本当にその人の魂の在り方だし、魂が在る場所なんだ。
おかしいんだけど、何年か前にあなたの「ハッピー」が出てきたときは、大嫌いだったの。耳に入るたびになんだか猛烈に腹が立って。ところがこの前ジムで流れてきたとき、私、泣き出しちゃったの。初めてあの歌がわかったんだと思う。結局、なにもかも私自身のことであって、歌そのものは全然関係なかったんだわ。多分、ある意味、初めて私と歌のバイブレーションが一致したんだね。
そのとおりだよ。僕たちは魂と戦争している、って僕が言うのは、真実が蔑ろにされてるということ。オンラインでは、世界の見方が完全に変わってしまうようなあらゆる種類のネガティブなことが起きてるけど、それがその人たちが考え、感じ、信じてることなんだ。

Pharrell 着用アイテム:ポロ(Jacquemus)
お金をかけないで、ウェルネスを実践するにはどうすればいい?
お金がなくても始められるよ。まず、自分を認識する習慣から始める。自分が大きな意識の一部であり、創造の一端を担っていて、自分が目にしたい変化は自分の中で始まることを理解する。Humanraceというブランドは世界の解決策じゃない。人類という種の解決策ですらない。ただ、習慣が大切なこと、基礎を持つのが大切なことを理解している人たちに便利な方法を差し出しているだけ。Humanraceが提供するあらゆる製品や製品ラインのために、最善の原料を探し出してくるやり方で。
体だけじゃなくて、広い意味での健康…。
そう。それから、感謝の気持ちを持って、他の人に配慮する共感を持つこと。そして謙虚であること。この3つが全部あったら愛に行き着ける。君が最初は「ハッピー」が大嫌いで、違って聞こえたときには涙が出たという話はおもしろいね。あの歌のメッセージが君に届いて、光栄だよ。あれは、聞く準備が整ってないと意味のわからない歌だから。イライラするだけだろうね。
[笑]
自分という存在の奥底に触れて、プライドを捨てて、抵抗するのを止めよう、と誘う歌。
そう。一行目の歌詞が「これから言うことは、クレージーに聞こえるかもしれない」。本当にその通りだよね。正直なところ、本当に過激な内容だもの。
うん。
心と体と魂、それぞれのために心掛けてる3つの習慣は? 毎日でなくても、毎月とか?
体にはクレンジング。一部分だけじゃなくて、内側も。
ジュース クレンズとか?
そうそう。今は水しか飲まないけど。
まぁ、ミネラルもレモンもなし?
まったくなし。水だけ。何だかそうしたくなって。今4か月目かな。
どんな感じ?
めちゃくちゃ、嘘みたいにキレイな感じ。
じゃ、心のための習慣は?
心のためには、スピリチュアル関係の本をたくさん読んで、感性を鋭敏にしておく。スポンジみたいにできるだけたくさん吸収したいから、僕にとっても僕の魂にとっても、読書はとても大切だ。親友には司祭もいるけど、未来を予言する才能があるんだよ。親しい友達とはよく話すし、色々な宗教に関する本を読んで、信仰の歴史の特徴を見つけるのがとても楽しい。色んなことを理解したいと思ってるし、人と話そうと思ったら、時には、その人たちの言葉を話す必要があるからね。その人たちの考え方や世界観を知っておかないと、対話が成り立たない。

Pharrell 着用アイテム:セーター(Jacquemus)、トラウザーズ(Jacquemus)、スニーカー(Humanrace Sičhona x adidas)
一日のうちで、いちばん平穏を感じるのは?
起きるとき。20分か30分くらい目を閉じたままで横になってるから、正確には起きる前だな。このときに、よく問題の解決を思いつくよ。書くこともあるし、閃きがあったり、突破口が見つかることもある。すごく熱い風呂にEpsomのバス ソルトを入れて、30分くらい浸かりながら内省すると、色んなことが解き放たれる。それから10分くらい冷たいシャワーを浴びて、1日を始める。
長年生活に取り入れてるアイデアで、いちばんの癒し、いちばんの糧になってるのは?
実はフェイシャル。角質除去ね。クレンジングの部分も楽しい。さあ一日が始まるぞ、とひしひし感じる。
Humanraceは、パッケージのデザインにも、とても気を配ってるのね。
ずっと日本にインスピレーションを受けてきたし、ただ見た目が美しいだけじゃなくて、持ったときの感触が良くて、動くときの特性も持たせたかった。グリーンは、言うまでもなく、生命力を促進するために意図して選んだ色。それから、人類が前進するためには、目にしたとき、手にしたとき、何を心地よく感じるかを考えた。僕にとっては、商品を手にする人ひとりひとりの反応のすべてが大切だから。
五感すべてで感じる…、サラウンド サウンドと同じ考え方みたい。あなたほど、視覚、聴覚から触覚や色まで、あらゆる面で私たちが気持ちよくなるように配慮してくれる人は、滅多にいないわ。
自分の意図を実現しようと思ったら、平面的な視点だけではダメ。君はサラウンド サウンドに喩えたけど、まさにそのとおりなんだ。考えてみてよ。ディズニー ワールドへ行くと、到着したときから、あらゆる側面を考慮して整えてある。ビジターの体験のすべてが意図されていて、あらゆる場所であらゆる角度からプロデュースされている。あの水準を目指さなきゃ。
なるほどね。ちょっとズレるけど、聞いてくれる?
うん、何?
もし世界の人全部に同時に向かい合えたら、何て言う?
神は最高に偉大だ。
あなたの言いたいことが理解されなかったら? 何を伝えたいの?
宇宙はとても壮大で、命そのものより大きいことを理解するのは難しいよね。だけど、仮に世界中の人にひとつのことを伝えるチャンスが僕に与えられたら、その光栄は宇宙に捧げるな。
そういうレベルで考えると、自分がすごく小さな存在に思えるし、小さな存在であることが心地いい。
なるほど。じゃあ、君にひとつプレゼントしよう。チャールズ・イームズ(Charles Eames)、知ってる?
イームズ チェアをデザインしたイームズ?
そうそう! あのチャールズ・イームズ。彼と奥さんのレイ・イームズ(Ray Eames)が制作した映像作品は、君が知る必要のあるすべてを教えてくれるよ。タイトルは『Powers of Ten』。10分の短編だから、このインタビューが終わったら、是非観てごらん。素晴らしくて、人生が変わるから。僕たちには大きな意味があると同時に、とるに足らない存在であることを理解するには、あの映画を観るのがいちばんの早道だ。

Pharrell 着用アイテム:シャツ(Jacquemus)、ショーツ(Comme des Garçons Homme Plus)

Pharrell 着用アイテム:シャツ(Alexander McQueen)、ジーンズ(Raf Simons)、スニーカー(Humanrace Sičhona x adidas)
エゴを手放すことは、何歳の頃に学んだの?
何かとても大事なことをするときに、雑音に煩わされる必要はないじゃない? 自分を誇張して集中力を削ぐ必要がある? 本当のところ、正しいことのために立ち上がる方がエネルギーは要らないんだよ。自慢したり自画自賛するするほうが、よほどエネルギーを使う。大言壮語とかさ。言葉は少なくていいんだ。
バージニア ビーチで生まれて、今は贅沢な生活だよね。黒人の大半と違ってすごく成功したことに、サバイバーズ ギルトというか、罪悪感を感じたことはある?
もちろんあるし、そのせいで僕は変わった。昔はしょっちゅう大口を叩いてた。そうしなきゃいけないように感じてた。
ところがBAPEことA Bathing Apeのニゴー(NIGO)に会ったら、彼、全然喋らないんだよ。喋らないで、すべてをやっつけてしまう。それからは僕もだんだん自慢話を止めて、手を合わせるようになった。仲間内の挨拶だけじゃなくて、人間同士の敬意の印として。
あなたは、力じゃなくて、パワーで動いてる。私があなたからいちばん強く感じるのは、多分そのことだわ。大勢の人前でもこのインタビューでも、そう。前は力とパワーは同じだと思ってたけど、違うのね。
君の言うとおり。僕は力なんか欲しくない。だけど君が言うパワーは、僕じゃない、宇宙だよ。僕は、どこかで宇宙と合意したんだ。僕がすべてを起こしてるわけじゃない。
混乱してる人は、物事の風向きが変わったときに、何が起こったのか理解できない。前は思い通りに事が運んでたのに、うまくいかなくなったと思う。でもそれは、もともと自分の力で思い通りにしてたわけじゃないからさ。ただ人との合意があって、それを当たり前に思ってたら、相手は合意なんかどうでもよくなった。そしたら、どうしていいかわからなくて、何も考えられなくて、人生の終わり。だけどそうやって自分の価値がなくなるのは、ずっと間違った物差しで自分の価値を測ってきたからだ。僕は違う。何が自分の物差しか、はっきりわかってる。
このエディトリアルは、SSENSEマガジン 2021秋冬号に掲載されるふたつの特集記事のひとつです。
Recho Omondiはニューヨーク在住のデザイナー。ファッション業界で10年を過ごした後、「ファッション学校が教えなかったすべてを明らかにする」ためにポッドキャスト「The Cutting Room Floor」をスタートし、ファッション業界に関わる人々へのインタビューによって事実を究明し、それぞれの専門知識に迫る。以来「The Cutting Room Floor」は「ファッション界の唯一のファッション ショー」と呼ばれている
- インタビュー: Recho Omondi
- 写真: Awol Erizku
- スタイリング: Zara Mirkin
- ヘア & メイク: Johnny (Cake) Castellanos
- 照明技師: Alexandre Jaras
- 写真アシスタント: Ido Eyo, Juan Hernandez
- デジタル技術: James Goethals
- スタイリング アシスタント: Zoey Radford Scott
- 制作: Select Services
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: September 13, 2021


