キッズウェアに見る
モードの美学

Marni、Collina Strada、Bobo Chosesの、大人が嫉妬する小さな服

    昨今、モード界では、多くのブランドがキッズウェアを手がけるようになっている。それも、メインラインのデザインをそのまま使用した子どもサイズにした、安易な服ではない。時に、パリやロンドンのランウェイを歩くルックを凌駕するような、ブランドのDNAを体現した、創造性溢れる子供服が登場している。そんな服を見て、大人の自分は思わずにはいられない。「そのレザージャケットを着させてくれ」。世界から賞賛を浴びるブランドが、アイデアを惜しまないキッズウェアを紹介しよう。

    モデル着用アイテム:ジャケット(Marni)

    フランチェスコ・リッソは、フェミニンな色彩とプリントが魅力のマルニに、アヴァンギャルドな精神を注入して、ブランドを変革した。だが、大胆で若々しいデザインのなかで、時折、以前のレトロワールドを懐かしむ。そんな時は、このレザージャケットに注目して欲しい。手描きのフラワーグラフィックはノスタルジックで、ささやかに存在を主張するブランドロゴが微笑ましい。マルニ伝統の美意識は、キッズウェアで健在だ。

    モデル着用アイテム:トラウザーズ(Charles Jeffrey Loverboy)

    ロンドン ファッションウィークで、想像力を限界突破したチャールズ ジェフリー ラバーボーイを見慣れた人々にとって、このキッズウェアのボトムは意外な印象を受けるだろう。直下するワイドシルエット、有機的モチーフのグリーンプリントは、静謐で美しい。近づいて見ると、九尾の狐や悪魔のグラフィックが不気味に踊る。ロンドンの異能は、ランウェイよりもシック成分を高めて、奇想な世界を描く。

    モデル着用アイテム:Tシャツ(Collina Strada)

    風船で作ったプードル、あどけない瞳の小動物、バナナやオレンジ、ブロッコリーなどヘルシーなおやつ。劇場的なメインラインに比べ、キッズウェアのシルエットはシンプルでスポーティだ。ポリエステルメッシュに現代っ子の世界を正確に写し出すことで、逆にシュールなイメージになるのが、反骨精神を持つニューヨークブランドらしい。独自の美学で作り出された、子どものためのトップスだ。

    画像のアイテム:クロッグ(Crocs)

    パープルを基盤にしたマーブルカラーが、カジュアルなスリッポンを妖しく見せる。アートなグラフィックから、大人が履いても良さそうだが、これは正真正銘のキッズシューズ。オランダ伝統の靴であるクロッグを発展させたクロックスは、年齢の境界にはとらわれない。

    モデル着用アイテム:ラウンジパンツ(Bobo Choses)

    陽気なプリントと色使いが楽しげな、バルセロナ発のボボ ジョーズ。パンツ全体にに広がるネイビーとグリーンの花模様は、絵本に描かれた植物のようで微笑ましい。また、ガーメントダイの風合いが、ラウンジパンツにいっそうリラックス感を与えている。ユーモアにフォーカスした服がブランドのアダルトラインなら、そのユーモアに都会的エッセンスを溶け込ませたのが、ボボ ジョーズの柱となるキッズラインだ。

    モデル着用アイテム:Tシャツ(Undercover)

    1990年に高橋盾が設立したアンダーカバーは、2002年からパリでの発表を始めると、徐々にスマートなエレガンスが加わり始めた。21世紀に誕生したブランドの個性を、より洗練された形で楽しめるのがキッズウェアだろう。静かなトーンのグリーンと、ほどよい量感のシルエットは端正で、劇画タッチのキャットプリントがユニークだ。ダークファンタジーを特徴とする東京ブランドは、エスプリの効いた子供服を披露する。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: May 12, 2023