Nensi Dojakaが
LVMHプライズの頂点へ

SSENSE限定コレクションで見る
黒く艶やかなモダンウェア

    LVMHプライズ2021で、グランプリを獲得したアルバニア人デザイナーのネンシ・ドジョカ(Nensi Dojaka)。その才能は2年前から輝いていた。2019年、セントラル セント マーチンズ MA (修士) 卒業ショーで発表されたコレクションは、人間の身体が持つ生々しい美を照らしていた。そして今、世界がドジョカのビジョンを本格的に知る日が訪れた。ランジェリー ドレスは、シアな生地でふんわりと最小限に肌を覆うことで身体のラインを露わにし、ビッグシルエットや装飾性で身体を誇張する現代ファッションに新たな文脈を刻む。SSENSE限定コレクションを中心に、Nensi Dojakaが提案する新時代のファッションを紹介しよう。

    モデル着用アイテム:タイツ(Nensi Dojaka)

    タイツがスタイルの主役を担うことは稀だ。通常はボトムの影に隠れ、肌を守る存在として生きている。だが、このブラック タイツは違う。ナイロン メッシュを自在に収縮させるストラップはハードな外観を作り上げ、SM的ムードとも言うべき、確固な存在感を生み出した。ジャケットやドレスだけが、ファッションの主役ではない。ドジョカの才能にかかれば、影のアイテムもスポットライトを浴び、舞台の中央へと躍り出る。

    モデル着用アイテム:ドレス(Nensi Dojaka)

    想像してみる。このキャミ ドレスを着て街に佇む姿を。現実の街を歩くには、あまりにセクシーで非現実的だろうか。バストをアシンメトリーに包むカッティング、色気を増幅させる細く華奢なストラップ、左身頃だけに見られるバックスタイルのギャザー、いずれも本来のキャミソールならば見ることのできないディテール。モードな姿勢はランジェリーをドレスに転換し、街を妖艶に包む。

    モデル着用アイテム:シャツ(Nensi Dojaka)

    黒いオーガンザが描くモアレは、天から舞い降りた羽衣を、シャツという現代のアイテムに仕立て直したかのように幻想的だ。徹底して肌を透けて見せるデザインを追求するNensi Dojakaは、隠してばかりでは伝わらない身体が持つ美を訴えかける。シャツの残像を残した魅惑のトップスは、肌とともに、着る者の心の奥底までをも覗かせる。

    モデル着用アイテム:ショーツ(Nensi Dojaka)

    エクストリームなレングスのミニスカートか? そう思ったとしても不思議ではない。だが、これはショーツである。ウェストベルトからのカッティングを斜めに切り下げ、重なり合った黒い生地は、まるでスカートのヘムラインのようにドレープを描く。短すぎるミニスカートを穿くことは、下着が垣間見えてしまう不安が伴う。だが、安心して欲しい。リスク伴う願望を、デザインの力によって叶える。それもDojakaの才能である。

    モデル着用アイテム:ドレス(Nensi Dojaka)

    1990年代を席巻したミニマリズムの面影が、Nensi Dojakaのドレスには漂う。とはいえ、当時のミニマリズムに感じられた、コンクリートのような冷たさと硬さを再現しているわけではない。都会的空気はそのままに、肌を隠しつつ見せるカッティングの妙と、細いストラップを交差させた構造で、硬質のミニマリズムを軟化させる。このグレーのドレスは、ファッション史の文脈を更新する強さを秘めている。

    モデル着用アイテム:T シャツ(Nensi Dojaka)

    Nensi DojakaはTシャツの概念にも楔を打ち込む。半透明のビスコース ジャージを使用し、黒い生地の下から肌を透かすデザインには、これがカジュアルウェアの王様なのかと疑問を抱かせるほど、艶な色気が滲む。しかし、Tシャツは下着としての歴史を持つアイテムでもある。下着ならば、よりセクシーなデザインが選択肢の一つにあってもいい。Nensi Dojakaは原点に回帰し、現代のTシャツを再構築する。

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: September 20, 2021