スカートがボトムの主役になる日

Chopova Lowena、Simone Roch、Shushu/Tongをジャケットに合わせて穿く

    服飾専門学校に入学した学生の多くが、最初に取り組むのがスカート制作だ。長方形の布1枚でも完成する服は、初めての課題に適したアイテムと言えよう。シンプルな構造のボトムだが、ファッションのジェンダーレス化が進むなか、性別の枠を超えた挑戦的デザインを志向するブランドも増えてきた。アート作品のように人々の目を楽しませる大胆なカラーやグラフィックのプリントスカートや、素材とパターンの工夫によって脚の動きが自由になり、パンツに勝るとも劣らない機能性を持つタイトスカートなど、進化はまだまだ止まらない。今こそ、スカートをボトムの主役に。

    モデル着用アイテム:スカート(Chopova Lowena)

    セントラル セント マーチンズ卒のデザイナーデュオが、異端なメンズスカートを作る。正面は、整然と並ぶスナップボタンがレザーウェアに打ち込まれた鋲のようにパンクで、背面は、折り畳まれたプリーツと膝下まで伸びるレングスがコンサバティブ。好きなファッションに境界はない。チョポヴァ ロウェナのスカートなら、1枚で二つのスタイルが自由自在に着用可能だ。

    モデル着用アイテム:ショートパンツ(Shushu/Tong)

    2014年に上海で設立されたシュシュ/トングは、少女の感性を大人の女性のモードウェアへと変身させるブランドだ。超ミニ丈のショートパンツとスカートが一体化したボトムがガーリーな印象を与える一方、グレーのフローラル柄でシックに仕上げ、シティウェアとしての完成度も高い。ノスタルジーとモダンが同時に体験できるレイヤードアイテムである。

    モデル着用アイテム:スカート(Praying)

    アイロニカルなメッセージを服に仕立てるPrayingは、ロングのフレアスカートにもブランドのDNAを表現する。テキスタイルにプリントされた風景は、世界が荒廃した後の樹木を写したものなのか、枯れた枝葉がもの寂しそうで、わずかに残る緑葉が余計に悲しさを募らせる。世界を風刺するブランドは、メンズスカートをキャンバスにして、社会に潜む不穏な空気を描く。

    モデル着用アイテム:スカート(Elena Velez)

    アーティストでもあるデザイナーが2021年に立ち上げたエレナ ヴェレスは、スカートの概念をダイナミックに書き換える。ソングと一体化した布地は、ドローストリングによって伸縮するかと思えば、垂れ下がってドレープを描きながら交差して、脚にまとわりつく。ランジェリーのようでドレスのようでもあり、完成しているようで未完成にも見える。白黒はっきりさせる必要はない。曖昧さが美しい服もこの世にはある。

    モデル着用アイテム:スカート(Simone Rocha)

    ダークロマンチックをファッションへ昇華させるシモーネ ロシャの精神は、メンズスカートにおいても変わらない。ギャザーが波立たせる黒いナイロンチュールは、力強く大胆なフォルムがふくらはぎの筋肉とコントラストを描き、ミディアムスカートの持つ繊細な美しさをより際立たせる。

    モデル着用アイテム:スカート(Jacquemus)

    ジャックムスは、初期のアヴァンギャルドな作風から変化し、近年は日常着として着られる服としての造形を探求している。ピンクカラーのマキシスカートは右脚を流麗になぞり、左脚では大胆に肌を覗かせるアシンメトリーを形作る。ジャージ素材のストレッチ性と脚を締め付けないドレープフォルムによって、パンツに負けない可動性を脚が確保できる。ロマンチックなボトムで、春の街を闊歩しよう

    新井茂晃は神奈川のテキスト デザイナー。2016年より「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みる『AFFECTUS』を主宰し、『TOKION』、『装苑』でも記事を執筆している

    • 文: Shigeaki Arai
    • Date: March 28, 2023