Ahluwalia &PaulSmithに結実した
友情と共有の理念
プリヤ・アルワリアと
サー・ポール・スミスが語る
世代を超えたパートナーシップと
クリエイターへのアドバイス
- インタビュー: Wilson Oryema
- 写真: Lucie Rox

長年の業績を称えてナイトの称号を授与されたサー・ポール・スミス(Sir Paul Smith)と英国デザインでエリザベス2世女王賞を受賞したプリヤ・アルワリア(Priya Ahluwalia)は、ロンドンで最大の敬意を表されるファッション デザイナーだ。共通の知人を介して知り合い、すぐさま意気投合し、生い立ちや経歴の違いにもかかわらず、非常に多くの共通点があることに驚いたというふたりのコラボレーションは、まさにベテランと新人の対話に他ならない。
今回のパートナーシップは、&PaulSmithと名付けられた新プロジェクトの一環として実現した。AhluwaliaとPaul Smithがそれぞれに歴史を反映した活力溢れるスタイルを持ち寄ったカプセル コレクションAhluwalia &PaulSmithには、洗練とカジュアルが共存している。鮮やかな色使い、カルチャーとの広範な関連性、テキスタイルに対する深い理解を融合させたスウェットパンツ、Tシャツ、トラウザーズ、フーディはどれも、美しく、着やすい。Tシャツに書かれた「a brand new day」のとおり、まっさらな1日に目を向けるクラシックなシルエットだ。ふたりの対話は、作り出す作品と同じく、快活なエネルギーに満ちている。

モデル(左)着用アイテム:Tシャツ(Ahluwalia &PaulSmith) t-shirt、シャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、ショーツ(Ahluwalia &PaulSmith)。モデル(右)着用アイテム:Tシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、トラック ジャケット(Ahluwalia &PaulSmith)。冒頭の画像のアイテム:バケットハット(Ahluwalia &PaulSmith)。
ウィルソン・オリエマ(Wilson Oryema)
プリヤ・アルワリア(Priya Ahluwalia)&サー・ポール・スミス(Sir Paul Smith)
ウィルソン・オリエマ:プリヤ、君が初めてサー・ポールのデザインと出会ったのは?
プリヤ・アルワリア(以下、PA):ポール・スミスというブランドとデザイナーはあまりにも有名な揺るぎない存在だから、最初の出会いを正確に抜き出すのはむずかしいわ。子供の頃からずっと知ってた感じ。コカ・コーラみたいに、初めての体験は覚えてなくてもブランドはよく知ってる、ってあるでしょう? 私の家族は、記憶にある限りずっと前からPaul Smithを着てたし、私が働いてたデパートにもPaul Smithの売場があったし、とにかくいつも身近に存在してた。
サー・ポール、あなたがプリヤと知り合ったきっかけは?
サー・ポール・スミス(以下、SPS):写真家のジュリアン・ブロード(Julian Broad)が共通の友人でね、彼に紹介されたんだ。初めて会ったときからとても共通点が多いことがはっきりしてたから、コラボレーションの話はあっという間に進んだよ。
クリエイティブの分野でコラボレーションが大切な理由は、何でしょう?
SPS:コラボレーションが大きな意味を持つのは、両方が経験とエネルギーと情熱を得られることを十分に見極めた場合だけだと思う。

モデル(左)着用アイテム:Tシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、シャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、ラウンジパンツ(Ahluwalia &PaulSmith)、スウェットシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)。モデル(右)着用アイテム:フーディ(Ahluwalia &PaulSmith)、トラウザーズ(Ahluwalia &PaulSmith)。
プリヤ、今回のコラボレーションはどんな体験だった?
PA:すごく自然に進んだわ。初対面のときからずっと古い知り合いみたいな気がして、すごく気軽に話せるの。私は好奇心旺盛だから色んなことを質問できたし、好奇心ということならポールも同じ。彼の素晴らしいオフィスで一緒に作業したんだけど、50年以上にわたるコレクションの驚異的なアーカイブが揃ってて、その全部に目を通せるのがとても嬉しかった。本当、これまででいちばんやりやすいプロジェクトだったわ。
サー・ポール、長年にかけて、コラボレーションに対する取組みは変わりましたか? 現在は、どういう姿勢でコラボレーションに向かいますか?
SPS:コラボレーションを持ちかけられることは非常に多いので、落ち着いて、よく考えてから進める必要がある。付随する作業がやたらと多い割りに、終わってみたらさほど満足感がないこともあるからね。だから話を進める前に、まず深呼吸して、じっくり考える。
特に、世代を超えたコラボレーションの魅力は?
SPS:非常に年齢の離れた人たちと仕事をする楽しみは、「自由」と出会えることだな。若者は、経験やそれまで目にしてきたことに視点が乱されていない。そういう新鮮な考え方が役に立つんだ。そこへ僕が系統だった知識を持ち寄って、バランスさせる。
PA:ポールと私は、ふたりとも遠慮がないし、似てるところがとても多いの。ポールは全く違う環境でデザイナーになったから、当然違いもあるわよ。2022年の世界では、ソーシャル メディア、デジタル、メディア、その他諸々のすべてを考慮しなきゃいけない。ポールがキャリアをスタートした頃は製品と販売を考えればよかったけど、今はあらゆる面を構築する必要がある。だけど、とても素晴らしいのは、それぞれの違う視点を持ち寄れることよ。半世紀にわたって押しも押されもしない独自のブランドを築いたポールから、私はアドバイスを貰えるの。私たちの背景はすごく違ってるのに、ポールみたいなベテランに意見を求めてフィードバックを貰えるなんて、驚き以外の何ものでもないわ。
今回のプロジェクトでは、君自身の撮った写真がデザインの重要な源泉になってるね。コレクションを作るときは、あえて資料を準備したり手持ちの資料を参考にするの?
PA:リサーチの一環として、よく写真を撮るわ。それが情報を収集して分析する私なりの方法なの。逆立ちしてもプロの写真家じゃないけど、自分が見たものを分類して並べてみるにはとても便利よ。必ず使うとは限らないけど、私個人の感触を加味するのはすごくいいと思う。コレクションに値する服やいつまでも大事にできる服を作ってるブランド、と思われるようになりたいわ。

(左の画像) モデル(左)着用アイテム:Tシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、トラウザーズ(Ahluwalia &PaulSmith)。モデル(右)着用アイテム:Tシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)、トラウザーズ(Ahluwalia &PaulSmith)。(右の画像) モデル着用アイテム:オーバーシャツ(Ahluwalia &PaulSmith)。
サー・ポール、今回は音楽が大きな刺激になったそうですが、作業しながら流していた音楽は?
SPS:妙なことに、必ずしも今の音楽じゃなくて、昔のジャズが多かったな。ジョン・コルトレーン(John Coltrane)とかハービー・ハンコック(Herbie Hancock)とか。ソウルもたくさん聴いた。今回のコレクションを作るうえで、ソウルは重要な要素だった。
Ahluwalia &PaulSmithは、サステナビリティが基本的なコンセプトのひとつですね。個人的には、サステナビリティをどのように考えていますか? コラボ全般を通じて、サステナビリティをどのようにデザインに反映しましたか?
SPS:私がプリヤに魅力を感じたのは、大胆な手法や才能だけではなくて、サステナビリティに注ぐ情熱のせいでもあるんだ。サステナビリティに熱心な若者は多いが、具体的な行動を見つけている者は非常に少ない。プリヤとのコラボレーションでは、最初から本気でサステナビリティに取り組んだ。
PA:サステナビリティというのは、多くの物事に関連するとても広がりのある言葉だわ。でも私にとってのサステナビリティは、人と地球のために、可能な限りもっともポジティブな方法を選ぶこと。つまり、利潤だけを考えてビジネスの決断を下すんじゃなくて、その決断が人や環境に及ぼす影響を考える。意識してそういう選択をしていけば、おのずとサステナブルなビジネスを形作れると思う。
サー・ポール、20年、30年前と今を比べると、衣服に対する消費者の態度にはどんな違いが見られますか? そういう変化は、デザイン面で何らかの影響をもたらしましたか?
SPS:私のコレクションでは、現在、オーガニック コットン、リサイクル素材、リサイクル可能素材、トレーサブル素材といったものを非常に多く使っている。これは近年の顕著な違いだし、僕たちが正面から取り組む分野でもある。それから、言うまでもないが、2年間のコロナ禍のせいで、快適さと着やすさを重視している。

(左) モデル着用アイテム:ブレザー(Ahluwalia &PaulSmith)、トラウザーズ(Ahluwalia &PaulSmith)、バケットハット(Ahluwalia &PaulSmith)。(右) モデル着用アイテム:クルーネック(Ahluwalia &PaulSmith)、トラウザーズ(Ahluwalia &PaulSmith)。
プリヤ、君は瞬く間にファッション最前線へ飛び出した。もちろん才能があったからだけど、ここ数年で、ファッション業界に関する考え方は変わった?
PA:確かに短期間でブランドを立ち上げるかなり強烈な体験だったし、すごく楽しかった。ファション業界については肯定的よ。自分のブランドを持たないで、フリーランスやデザイナーとしての仕事を請けてる頃のファッション業界は、もっと近寄りがたい印象だった。どういう集団に表現のチャンスが与えられるかという点で、今は業界の境界線が打破されつつあると思う。そういう過程に参加できるのは、とても嬉しいわ。ファッションの世界には才能のある人がとても沢山いるし、そういう人たち全員の才能とイノベーションが建設的な方法で前進していくんじゃないかしら。期待してる。
サー・ポール、あなたが創設したポール・スミス財団は、ファッションにとどまらず多数の分野に大きく貢献していますが、今後、どのような分野や領域との繋がりを期待していますか?
SPS:ポール・スミス財団を作ったのは、若きクリエイターたちに役立つアドバイスを提供するためだ。シェフ、グラフィック デザイナー、映像作家…、分野は問わない。何を目指すのであれ、スタート地点では多くの指針が共通しているんだよ。つまり、自分にしかないものは何か、どうスタートを切るか、どこから情報を入手するか、どうやって経験を積むか、自分はどんな視点に立っているか。財団を設立した当初から、そういう助言を目指している。
今現在クリエイターとして出発しようとしている人にアドバイスを。
PA:私からのアドバイスは、真剣に技能を磨くこと、目標に関連するさまざまな領域を十分理解できるように努力すること。デザイナーになりたいなら、生地の裁断と縫製を十分に習熟する。そうやって得た知識がひとつにまとまって、しっかりした技能が作られて、前進するうえでの助けになるの。土台の技能を培うほかに、デザイナーとして語りたいことを整理分析するのも、すごく大事だと思う。自分独自の視点は何か? 数えきれないほどのデザイナーがいる世界で、どういう個性を打ち出せるか?
SPS:今からスタートしようとしているクリエイターは、とにかく、自分の視点を自問してみる勇気が大切だと思う。たとえ小さな部分でもその答が見つけ始めたときに、デザイナーへの道のりを踏み出せる。
Wilson Oryemaは、ライターであり、多分野で活動するアーティストである。作品の主たるテーマは、人的消費および人的消費が人間行動と環境に及ぼす影響
- インタビュー: Wilson Oryema
- 写真: Lucie Rox
- スタイリング: Nell Kalonji
- ヘア: Mikey Jackson
- グルーミング: Laila Zakaria
- モデル: Lenny // Supa Model MGMT、Amadou // Select
- 制作: CEBE Studio
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: April 6, 2022

