師弟の絆:ルル・ケネディ×スープリヤ・レレ

ロンドン発ファッション イーストより、デザイナーとメンターが支援やイノベーションを語る

  • 写真: Yumna Al-Arashi (Portrait & Studio)

イギリスで最も将来有望な新進デザイナーを開花させるために設立されたインキュベーターを動かすもの、それは一体何なのか。インド系イギリス人で、自らの名を冠したブランドを創設し、ロンドン発の試みとして広く知られるファッション イースト出身のスープリヤ・レレ(Supriya Lele)によれば、それはコミュニティーに尽きる。レレは、ロイヤル カレッジ オブ アートの卒業ショーで、ディレクターであるルル・ケネディ(Lulu Kennedy)の目に留まり、そのピンクと赤のPVCのアンサンブルは「実に小気味よい」と評された。そしてファッション イーストの指導と支援の下、ここ3シーズンのコレクションを発表した。それ以来、2度のソロ コレクションで一躍表舞台に躍り出ると、レレは英国ファッション協議会が若手デザイナー支援のために設立したNEWGENで、自らの地位を確立した。

サリーから着想を得たメッシュのドレスやオーガンザのユーティリティ パンツなど、手の込んだ蛍光色の生地と、伝統文化により培われた感性を組み合わせたレレのデザインは、『Purple』や『M Le Magazine du Monde』といった雑誌の表紙を飾り、さらに『Vogue』のレビューで、彼女の才能は「真に現代的なものを生み出す」ものだと称賛された。こうした勢いは、ケネディのもとで学んださまざまな経験がきっかけだとレレは考える。ケネディの鋭い視点と業界の専門家を揃えたチームは、Simone RochaMarques AlmeidaAshley WilliamsCraig GreenMartine RoseWales BonnerJW Andersonなど、数多くの才能溢れるデザイナーを生み出してきた。ルーツであるファッション イーストを振り返りながら、「今でも彼女にメッセージを送ったり、電話したりするわ」とレレは言う。ケネディも同意し、「ごく当然のことよ」と言う。今回、この師弟関係にあるふたりが、コラボレーションを続ける上でのイノベーションとインスピレーション、そしてデザインの未来に対する展望について対談する。

クリエーションの過程について

スープリヤ・レレ(SL):インスピレーションという点では、私が常に目を向けているのは、自分の生い立ちよ。掘り下げることがすごくたくさんあるし、シーズンごとに変化もつけられる。最近発表したコレクションは、医者やナースの制服など、私の家庭環境の中でも医療の側面に着想を得たものだった。私の家族の多くが医療に携わっているから、このふたつのリファレンスを結びつけると面白いと思ったの。インスピレーションが自然と湧いてきて、そこから何が飛び出してくるか考えるようにしてるわ。いずれにせよ、それは常に自分に返ってくるものだし、いつでも自分らしい作品になる。

イノベーションについて

ルル・ケネディ(LK):私が興味を持っているのは、何か言うべきことがあって、ファッションという手段を通して、多かれ少なかれ、それを表現できるようになった人たち。本当にたくさんの作品を見ているから、ちゃんとした目を持ち、スタイルとして十分に洗練されている人は、すぐにわかる。それは業界のコードに対する感受性ね。業界のコードを転覆させることができていて、自分の作品に十分に自信を持っているなら、それは確かなスキルを持っているという良い兆しよ。ファッション イーストに応募してくる人の中には、送られてきた50ページにも及ぶ資料を見ても作品のことが伝わってこないこともあるし、才能がある人だと、4枚のポラロイド写真だけで理解できることもある。作品をどのように見せるかは、作品そのものと同じくらい重要なの。

テクスチャーについて

SL:私はいつも、ハイテク生地や変わった生地に、シルクのようにもっと上品な生地が混ざったものや、メッシュやナイロンなどスポーツ系の素材に自分が惹かれることに気づいたの。そういうところでのバランスを考えてる。

LK:ツルツルで、すべすべで、フワフワで、モコモコなのが好き。こういう手触りのものは、肌に触れたときに、「ゲッ」ていう感じがしないから。

教育について

LK:優れた教育と教師は、何にも勝るものよ。独学の人と素晴らしい教育を受けた人の違いは、はっきりとわかる。でも、あらゆる独学の人にも平等に機会は与えられるべき。今は大学にお金がかかりすぎる。ロンドンだと、その後20年間借金を負うことになって、人生が台無しになる。

SL:デザインの訓練は必要。でも学士や修士を取る必要はないと思う。パターンの裁断や縫製のようなスキルを学べる、とても優れた短期コースがいくつもあるわ。とにかくスキルを手にいれるため、そういった勉強は重要よ。ファッションを学ぶにはお金がかかる。あらゆる素材を買って、コレクションを制作しなければならないし、安くできるものじゃない。だから、学ぶのは独学でいい。独学で成功したスゴイ人たちもいるしね。

最先端のデザイナーたちについて

SL:私の仲間の中で、面白いことをやっていると思うのは、ASAICharlotte KnowlesMowalolaね。

LK:このデザイナーたちは、自分自身を売り込むだけでなく、自分たちのカルチャーも促進していて、そのカルチャーがデザインにまったく異なる類の領域と深みを与えている。あなたたち全員が、自分の受け継いだ文化を引き合いに出している点は、興味深い重要なファクターね。全員に、現代性と向こう見ずなところがある。物怖じせずにどんどん進んで、実験をして、ちっとも気にしない。こういうパンクな姿勢はとても大切よ。

美について

SL:美とは何かについては、特に考えはないわ。多分に文脈に依存するものだから。でも、客観的な美というのはありえると思う。自分の仕事でいえば、私はすごくすっきりした、ミニマルで、センシュアルなカットが好き。機能的でありながら、なおも凝ったデザインの服には、破壊的なセクシーさがある。私はそれをとても知的だと考えてるの。

LK:あなたの服は、常に女性的なフォルムが透けて見えるようになっているけれど、とても繊細で、決して挑発的になりすぎることがない。それでいて、とてもセクシー。たとえ肩を出したり、ヘソを出したりしていてもね。

スマホの時間について

SL:コンテンツが多すぎるわ。ネット上にはたくさんのものがありすぎる。時々、Instagramなどやらなければ良かったと思う。実際、やっていても退屈なのよね。イメージ作りや、ものごとの寿命という点では、ある意味、何もかもが無意味になっている。即座に消費して、そのことは忘れてしまうから。自分の作品も見てもらえるし、すばらしいものでもあるんだろうけど、私はむしろ、ネットに繋がるのはやめたい。

LK:私は本当に、人に実際に会ってみるタイプの人間なの。これに限るわ。

メンターについて

SL:自力で始めるのは大変だから、ファッション イーストはとても重要だった。というのも、あらゆるものがどのように機能しているのか、私は気づいていなかったから。誰にもプレッシャーをかけられることなく、ただ援助とサポートがある。これは何かを自分でやり遂げようとしているときには、とても良いことよ。この分野は、自分のファミリーを見つけて、協力していくものだと思う。業界でできた友だちや、数シーズン自分の先を行く他のデザイナーたちからも、いろいろと聞くことができる。あそこで学んで、先へ進むのに役に立ったことは山ほどあるわ。

LK:私は自分がズケズケと言いすぎるんじゃないかと心配になることがある。あまりお世辞がうまくないから。でもあなたたちに対して、デタラメなことはやりたくない。デザイナーから難しい質問をされたときはいつでも、最善の答えができるよう努めてる。私たちは皆、繋がりを維持し、お互いのことを気にかけているし、全員の生活や仕事がちゃんとうまくいっているかも確認し合ってる。

トレンドについて

SL:私は古いリファレンスや、とても伝統的な視点を参考にしているから、現代的に感じられるものにする必要があるの。そうでないと、リファレンスや伝統ばかりが目立ってしまう。私がトレンドに共感しないのは間違いないけど、そこで何が起きているかはわかっているわ。自分が身を置く業界のことは知っている必要があるから。でも私は、すごく特異な視点から見ているの。

LK:誰か面白い人から「これがトレンドだよ」と言われるまで、私はトレンドのことは無視しがちね。娘のレインボー(Rainbow)が学校から帰ってきて、スライムの話をしているから、「子どもたちは皆、スライムにハマっている。スライムがトレンドなのね!」って感じよ。

  • 写真: Yumna Al-Arashi (Portrait & Studio)
  • 翻訳: Kanako Noda