人気ポルノ女優、アベラ・デンジャーの性と仕事

映画、カニエ、もちろんセックスも

  • インタビュー: Olivia Whittick
  • 写真: Kanya Iwana

「体に良いものを食べるのって、私はすごく気が滅入るのよ」と、アベラ・デンジャー(Abella Danger)は言う。そして、チェーン レストランのJimmy’s Famous American Tavernで、ポテト トッツをクリーミーな白のランチ ドレッシングにディップする彼女。これほどチャーミングな女性に今まで会ったことがない。ロサンゼルスのポルノ映画の一大拠点、ウッドランド ヒルズにあるモールで、私たちはミモザ カクテルを飲みながらランチ中だ。「だからジムに行って、死に物狂いでがんばるの。何でも食べられるようにね」。知り合いではないけれど、その裸体をすでに見たことがある女性と一緒にご飯を食べている。なのに、あまりに違和感がなくて、私は驚いていた。

ブラウザのプライベート モードで、アベラをこっそり観た経験がない人にとっては、ポルノ以外で目にする彼女のイメージの方が強いかもしれない。23歳の人気ポルノ女優は、ファッションの分野にも馴染みが深い。彼女はYeezy Season 6のキャンペーンに、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)のそっくりさんのひとりとして登場し、ジャッキー・ニッカーソン(Jackie Nickerson)撮影のYeezy Season 6の写真集にも登場した。写真家ゾラ・ジッヒャー(Zora Sicher)による『Office Magazine』のカバー写真では、トップレスで両腕の力こぶを披露している。

ポルノ業界での仕事を始める前、彼女はモールで働いていた。そしてずっとダンサーだった。絶えず世間からの偏見と闘わなければならない中で、メインストリームで受容され、ファッション業界から引き抜かれたことに対して、彼女がどう感じているのか、私は興味があった。彼女はスターの座に大きな憧れているようには見えないが、カメラで撮られるのが好きなのは確かだ。「美容のキャンペーンをやってみたいな。私を好きなだけ性的対象として見ていいのよ。でも、顔だけしか出さないのもいいでしょ」。もっと先の将来では、監督になるのが彼女の夢だ。「カメラを使った撮影をずっと学んでる。他の監督がどうやっているのか、ずっと近くで見て学んできた。ポルノは大好きだから、これからもずっとこの業界に関わっていきたい」

映画についてもたくさん話した。「週3回くらいは行くわ。私は自分を非公式の映画評論家だと考えてるの。映画の撮影術をたくさん観てる。この映画はどのくらいリアルに感じさせてくれるかってね」。このインタビューの後は、『ロケットマン』を観に行くと言う。マーベルの映画も欠かさず観ている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』では泣いた。「さすがティム・バートン(Tim Burton)」、『ダンボ』は最高だった。イッサ・レイ(Issa Rae)主演の『リトル』はまあまあ。彼女が映画に求めるレベルはあまりに高い。映画はすべて、観たくないものでも観るのだと言う。

今日のアベラは、グレーのスウェットパンツに黒のボディスーツ、スニーカーといった格好だ。金髪を三つ編みにした彼女は小柄で、声は、そのサイズや年齢にしては驚くほどに低く、しゃがれている。顔は、偶然にも駐車場でちょっとだけ顔を合わした彼女のメイクさんがメイクしたばかりだ。ふたりとも少し緊張して見えたが、それもおかしな話だった。私もかなり緊張していたが、どう考えても、手強いのは私の方ではない。もしかすると、彼女があまりに自由に見えるせいで、私は尻込みしているのかもしれない。そして彼女の方は、他人から意見されることに慣れきっているせいなのかもしれない。アベラには、ソーシャルメディアに合わせて500万人近くのフォロワーがいる。これを見れば、彼女が有名であるのは疑いようもない。それでもなお、彼女は、その名前を知っていると人々が認めようとしない人物でもあるのだ。

オリビア・ウィティック(Olivia Whittick)

アベラ・デンジャー(Abella Danger)

オリビア・ウィティック:成人向け映画産業に関わるようになったきっかけは?

アベラ・デンジャー:大学時代にある男と知り合って、それが有名なポルノ男優だったの。「うわー、強烈」って感じよね。付き合うようになって数ヶ月経ったとき、彼にポルノに興味がないか聞かれたの。「あるわけないじゃない! 女の子たちは、あんなことやってるのに十分なお金をもらえないのよ」って思ったわ。それから彼に連れられてセットに行くようになった。皆とても親切だったし、すごく楽しんでた。私の初シーン…、すごく良かったな。そのうち彼は「君には俺とだけこういうことをしてほしかったのに」なんて言い出したけど、私の方は「あなたと知り合って良かった」って感じだった。

ポルノ業界で働いている人なら「たかがセックス」という考えを理解できるはずなのにね。

私は社会や自分の家族の悲しみを全面に受けることになるんだから、せめて楽しませてほしいわ。今では毎日仕事に打ち込んでいて、すごく楽しんでる。お金を取らずにセットを出たこともあった。この仕事でお金をもらってることを忘れてしまうことがあるのよ。

メインストリームに向けて次はどんなことを?

私、ずっと『ザ・チャレンジ』がやりたかったのよね。出演者が競争し合うMTVの番組よ。

障害物とかを飛び越えるやつ?

そう、それで勝てば最後に大金がもらえる。10歳の頃から観てて、ずっとやりたいと思ってた。でもぶっちゃけ無理なのよ。ポルノをやってるから。この仕事のせいで、私のところにチャンスが巡ってこないことはよくある。

どうしてあなたを出演させないんだろう? あなたには400万人近くのInstagramのフォロワーがいるのに。

もしかすると、ポルノ女優を支持することになるとか思ってるんじゃない?

そう簡単に言うけど、私には、純粋に理解できない。

そう、私は普通の人間よ。ただ面白い仕事をしてるだけ。あの番組にはストリッパーも出てるのに、私はのけ者だなんて、ひどすぎる。

成人向け映画のスターたちは、ものすごく有名なのに、今なおタブーが多いよね。たくさんの人が、あなたが誰か知っている。でも多くの人はそれを認めたがらない…。

私を知ってると認めることは、オナニーしてると認めることになると考えてるんじゃない。

それを認めるのって、大人にとって恥ずかしいこと?

私たちはクレイジーすぎる、セクシーすぎると思われてる。皆、これがどれほどプロフェッショナルな仕事か理解してないのよ。パーティーで騒いでるのとは違う。他の仕事と同じなのに。

この仕事を始めたとき、ある種の機会が閉ざされることになると、わかっていた?

もちろん、当然よ。社会がどういうものか理解してるもの。社会はドラッグと暴力を助長してる。セックスという概念も奨励するでしょう。でも、実際にセックスをしていると、「尻軽女」というレッテルを貼られるの。自分の可能性が閉ざされるのは、わかっていたわ。

Yeezyのために撮影することになったきっかけは?

私が演じた、テヤーナ・テイラー(Teyana Taylor)が出ている「Fade」のミュージック ビデオのパロディを、カニエは見たんだと思う。昔ダンスをやっていたから、私はあれを真似できたのよ。もちろん、テヤーナ・テイラーほどは洗練されてないけど。あれを観て、撮影に私を雇ったんだと思うな。それから、ジンの撮影もやった。別の人がやるはずだったんだけど、写真家がその人を気に入らなかったの。それで、私がテスト撮影したら、彼女が私を気に入ったから。

カニエと仕事をするのはどんな経験だった?

私にとても丁寧に接してくれた。彼は常に笑顔だったわ。彼の会社のほとんどが女性ということもあって、何もかもすごく楽しかった。人から仕事以外のことを見てもらえて、敬意を払ってもらえるのは嬉しい。この仕事のせいで、私と一緒に仕事をしたがらない人が多いから。こそこそ隠れてキモい連中よ。あんたたちがポルノを観てなかったら、こっちもポルノなんて作ってないって言うの!

昨年はカニエがPornHubアワードをやって、プロダクション デザインを手がけたクリエティブ ディレクターのウィロ・ペロン(Willo Perron)も関わって、今度はPornHubがミュージック ビデオもリリースしようとしているように、今や、成人向け映画と一般大衆向けのエンタメの間には、前よりも重なる部分があるような気がする。

これで、今後またこういうことができなくなるような反発が起きないといいけど。誰の仕事であれ、見下すべきじゃないから。

こうしたプロジェクトを通して、差別意識は減ってきていると思う?

それは人によりけりね。ポルノ俳優の多くは個人のInstagramアカウントを削除してる。私自身について言えば、偏見はマシになってると思うけど、それが業界全体のことだとは言えない。MTVはまだ私を雇ってはくれないし!

今現在、中絶の権利は攻撃にさらされているし、Instagramは絶えず女性の体の写真を排除してる。他人が自分自身の身体を使ってやっていることに対して、批判したい人がとても多いみたいね。

どうして、他人が自分の身体で何をすべきか口を出す権利があると思うんだろうね。RBG(ルース・ベイダー・ギンズバーグ)は、どこに行っちゃったの? どの女性にも選ぶ権利がある。女性の多くが、子どもを持てるほど経済的に安定してないのよ。子どものために十分準備を整えてやれないような状況で、子どもを産みたいわけなどないわ。

ポルノに反対する多くのフェミニストたちは、ポルノ業界で働く女性たちは嫌々やっているというか、ある意味、被害者だと考える傾向にあるようだけど、こうした姿勢についてはどう思う?

ポルノの多くは男性主導で、男性視聴者のためのものだから、理解はできるわ。でも、フェミニストたちがわかってないのは、この環境でセクシュアリティを掘り下げることができて、多くの女性が解放されたと感じていることよ。自分で自分の身体をコントロールするの。私たちは何もかも自分でコントロールできる。

自分の映画を観るのはどんな感じ?

すばらしい思い出を追体験する感じ。

自分のことはモデルだと思う? それとも女優? アスリート?

私たちが作っているのはまさにアート。アートの形態のひとつよ。それを見て感じるものがある。絵画を見て、感情が沸き起こってくるのと同じことよ。私たちがやっているのもそれなの。違う点は、最後にオーガズムがあるってことくらい。

アベラのひとこと映画評

『トイ・ストーリー4』:7/10点

めちゃくちゃ良かった。ただしエンディングを除く。私は「彼女より友達」派の女なの。

『クロール -凶暴領域-』:9/10点

『クロール -凶暴領域-』:初めて観た、ワニが悪者の映画。加えて、マイアミ出身の私は、ハリケーンが怖い。冗談じゃなく、上映中ずっと大声で叫んでた。

『イエスタデイ』:5/10点

コンセプトはクリエイティブだけど、3人しかビートルズのことを覚えていない理由が、まったく理解できなかった。エンディングにもイラっとした。

『ロケットマン』:10/10点

あまりにも良くて2回も見た。エルトン・ジョン(Elton John)はそこまで好きじゃなくても、ミュージカル好きは必見。

『メン・イン・ブラック:インターナショナル』:4/10点

どこに出ていてもテッサ・トンプソン(Tessa Thompson)は大好き。彼女はすごくセクシーだから。ただこの映画は…、すごく期待してたのに、心底がっかりした。多分、5回も笑ってない。

『Booksmart』:10/10点

この映画を見て、もう一度最初から高校生活をやり直したくなった。笑いが止まらなくて、すごく共感できて、心が温まるのに、決してシリアスになりすぎない。最高。

Olivia WhittickはSSENSEのエディターであり、Editorial Magazine』のマネージング・エディターも務める

  • インタビュー: Olivia Whittick
  • 写真: Kanya Iwana
  • スタイリング: Mar Peidro
  • 写真アシスタント: Shaina Santos
  • スタイリング: Liberty Padre
  • メイクアップ: Francesca Martin
  • 翻訳: Kanako Noda
  • Date: August 2, 2019