モーリス・ハリスの花物語

ロサンゼルスの人気店Bloom & Plumeオーナーとフラワー デザイン

  • インタビュー: Collier Meyerson
  • 写真: Sam Muller

エコーパークの裏手、新しくできたモーリス・ハリス(Maurice Harris)のBloom & Plumeコーヒー ショップは、昔からある同名の彼の花屋の横にある。その色はいかにもモーリス・ハリスなパープルだ。クリーミーで、凛々しく、ゴージャスで、きらびやか。プリンス(Prince)や、純粋な王たる気品を思わせるが、どこか温もりも感じさせるパープル。ハリスの店のようなコミュニティ スペースにはぴったりのパープルだ。ここに行けば、ほとんどの日は彼に会える。トレードマークのパープルのフレンチ ワーク ジャケットにオレンジのスニーカー姿の彼はまばゆいばかりで、店の前に立って通りがかりの人や近所の人、同僚や友人に熱心に話しかけている。

37歳、カリフォルニア生まれ。ハリスは兄弟でこのコーヒーショップを経営しており、彼自らこの静かで手間暇のかかったスペースのデザインを行なった。表に出されたテーブルと椅子のあちこちに、ハリスの作ったミニチュア サイズのフラワー アレンジメントが置かれている。店内には、カラ・ウォーカー(Kara Walker)風の黒人の少年のシルエットをあしらった彼のロゴが吊るされ、その下には、モロカン スタイルのカラフルなマルシェ バッグや、黒人の体をハリスの豪華な花のリースで飾った、カルト的人気を集めるポートレートのポストカード集が並んでいる。ボリュームたっぷりのトーストやワッフル、ドリンクといった店のメニューはシンプルでありながら、すばらしく秘密めいている。アボカド トーストにいたっては、その名も「ベッキー」だ。

エイヴァ・デュヴァーネイ(Ava DuVernay)やフローレンス・アンド・ザ・マシーン(Florence and the Machine)、今年になってからは、話題のモデル、アルトン・メイソン(Alton Mason)を起用し、花をテーマにした『Vogue Ukraine』のエディトリアルのために花のインスタレーションをデザインした。ハリス自身がどれほど忙しいかを考えると、彼がどうやって2つ目のビジネス立ち上げのための時間を作ったのか、不思議に思う人もいるだろう。しかもその間に、無理をしたり、ごましたりすることなく、ソーシャルメディアでの存在感も高めているのだ。ハリスのInstagramのフォロワーは現在12万6000人だが、その数は増える一方だ。色彩と植物を巧みに扱うアーティスティックな才能をあますところなく表現したコンポジションを定期的に投稿しては、フォロワーたちの目を楽しませている。どの作品も祭壇のようで、鮮やかで強烈な色彩が調和しており、それはまるで刺激的になったアンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantin-Latour)の絵画のようだ。

実際に会ってみると、ダンサーでもあるハリスは絶えず動き回っている。彼は皮肉屋でありながらひたむきで、楽しげでありながら大真面目だ。友人としてのモーリスは、自分のルーツが黒人であること、ゲイであること、そして「女性としての側面」と、男性としての側面にあると話してくれた。彼の多様なアイデンティティと才能が違いに影響し合い、それがアレンジメントひとつひとつに、彼の芸術性となって表れている。

コリアー・メイヤーソン(Collier Meyerson)

モーリス・ハリス(Maurice Harris)

コリアー・メイヤーソン:初めて作ったフラワー アレンジメントはどんなのだったの?

モーリス・ハリス:小学校卒業の日のためだったと思う。僕はレモン グローブ中学校に行くことになっていて、家の周りにある花を摘んで、先生のためにアレンジメントを作った。僕はその先生にすっかり感化されていてね。母さんは「いい考えだと思う、でもお金はあげないわよ」って感じだったから、そういえば裏庭にレモンの木とゼラニウムあったな、と思いついた。その辺にあったイースターで使った飾りも使った。めちゃくちゃだったけどね。

自分の仕事についてどう表現を?

最近は、僕はアーティストで、花は自分の考えを伝えるための表現手段だと言ってる。人は自分の知っていることや、普段から触れていることをやるもんだ。僕はすごく小さい頃から祖母がアレンジメントや帽子を作るのを見てた。彼女からはすごく影響を受けてる。彼女が色々、特に花を作るのを見ていて、「これは僕にもわかるかも」って思った。母さんもすっごくクリエイティブな人で、彼女がいろんなクラフトを作るのを見てた。

作品で、どんなことを表現したいと考えてる?

本当にやりたいのは、人のために環境や体験を作り出すこと。僕の尊敬する人のひとり、ニック・ケイヴ(Nick Cave)が、先日ニューヨークで体験型のダンスとインスタレーションをやったんだけど、それを友人が観に行ってね。彼はそこに座っているとき、「これはまさにお前だな。お前なりのやり方でこういうことをやるのが見てみたい」と思ったと言ってくれた。クリエイティブなことをして、クリエイティブな表現をすることで、お金が稼げるようになりたいと思ってる。僕のアイデアは、ときどき壮大すぎることもあって、実現するのは必ずしも簡単じゃない。そういうことができたらって考えるとうっとりするね。

以前はJuicy Coutureのウインドウ ディスプレイのデザインをやってたけど、どういう経緯でウィンドウから花へ?

僕が資材を調達していたのが花市場の近くだったんだ。それで、そこに行くときに、いろいろ見て質問するようになった。それがOJT、オン ザ ジョブ トレーニングになってたと言えるかな。当時、会社の人が何かで花が必要になると、そこに行くついでに何か適当に買ってきて、と頼まれたものだ。僕はコンポジションを見る目があるから、アレンジメントに対する皆の反応は良かったよ。

自分が何者かにしっかり取り組めば取り組むほど、自由になる気がするし、自分の仕事に対しても誠実でいられる

転機となったのは? どうやってJuicy Coutureから実際に従業員もいる店をオープンするに至ったの?

解雇されたんだ。景気が低迷しているとき、会社がクリエイティブ部門の見直しを行い、僕はチームに残れなかった。追い払われたんだよ! 僕は…、それで構わないと思った。解雇手当を受け取って、片手間仕事をいくつかやった。シルク・ドゥ・ソレイユでピエロの小道具の調達係をやったり、行き当たりばったりにコマーシャル用のダンスの仕事をやったり、この街の他の皆と同じで、僕もそうやって何とかやりくりしようと精一杯頑張った。でも、ちょっとした花の仕事がちょくちょくあって、それをやっていくうちに、花関連が着実に増えていった。いつしか、僕の時間のほとんどがその仕事で占められるようになって、それならこれで行こう、と。

あなたの作品における黒人のテーマについて聞かせて。

自分が何者かということを、しっかり見つめれば見つめるほど、自由になる気がするし、自分の仕事に対しても誠実でいられる。僕は長い間、目前のシステムに適応しようとしていたんだけど、あるとき、自分らしくあるために最大限の努力をする必要があると気づいた。僕自身の中で、愛情深い、大きな黒人の男であるという点は無視できない。僕は黒人のゲイなんだ。そして、その部分が、自分で振り付けしていないパフォーマンス作品のように思え始めた。だから、僕にはそれに自分で手を加えて、僕自身のナラティブに作り変える必要があると思ったんだ。

あなたの花を見ていると、架空のラグジュアリーを想像してしまうわ。巨大で、実際の花より大きい。こうした花のアレンジメントに黒人の身体を盛り込むことで、何を表現しようとしているの?

警察の手にかかって黒人の男たちが命を落としていくのを見て、僕は自分自身の人生について詳しく調べるようになった。僕の民族性や、僕がゲイであることは、特定の場所にいるとかき消される。そして、僕自身の家族においては無視されていた。皆が僕の作るものを気に入ってくれるけど、作品の大部分は、僕がゲイであることや、僕の抱える男性と女性のエネルギーの両方を表現しているいうことを認めたがらない。[同様に、]白人ばかりが集まった場所やエリートばかりが集まる場所では、僕がその場にいる唯一の黒人だということが多々ある。いつも、僕自身のことは誰も見てくれないと感じる。だから、僕自身のそういう部分を作品の中心に置きたいと思った。黒人の身体は、やたらと崇拝の対象になるか、あるいは、ごく限られた文脈の中でしか捉えられていない。人種問題にまつわる不安や緊張が高まっている今の時代、僕は、美がより大きな問題について論じるためのツールになると考えてる。黒人を中心に据えた美しいイメージを作り出すことは、間違いなく、美しいことだよ。

新しくコーヒーショップもできたわね。この2年間ずっと発展を続けてきた。あなたは黒人の人々を雇い、黒人のクィアな人々を雇ってる。このスペースを作ることを思い描いたとき、どんなものにしたいと考えてたの?

僕がやりたかったのは、こういうクールでクレイジーなインスタレーションだね。大抵、そういうのは限られたエリートのものだから。自分たちがやっていることを、ここの地域に留めておく方法を考えたかった。僕たちが作るフラワー アレンジメントのほとんどはウェストサイドに行ってしまうし、もっと地元の人たちが僕たちの作品に関われるスペースを考えたかった。結局のところ、僕のビジネスはラグジュアリーだ。それはどうすることもできない。ラグジュアリーはずっと好きだった。高校生の頃、Versaceのキーホルダーが本当に欲しかったのを思い出すよ。でもそんなものばっかり買ってたら、生活が立ち行かない。僕は金持ちじゃないし。どうすれば、とても芸術的で美しいと人々が考えるものを作りつつ、それを手頃な価格にできる? コーヒーは許容範囲のラグジュアリーだ。誰もが支持できる。僕自身、5ドルのラグジュアリーは買えるだろうけど、200ドルのラグジュアリーは難しい。それでも素晴らしい経験にはありつける! それってすごく意味のあることだと思った。それを僕たちのコミュニティにも還元できるしね。誰もがスペースに足を運べて、そこでリラックスできて、仲間として受け入れられたと感じられるべきだ。この場所が目指すのは、そういう体験。

Collier MeyersonはType Media Centerのフェロー。WIREDやNew York Magazineに寄稿している

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